この胸のあたりにつっかえている切なさはなんだろう
あの人のマイペンラーイな笑顔に中毒してしまったんだろうか
あの人の料理に恋してしまったんだろうか
それもこれも全部ひっくるめて
あの国に
雑踏に聞こえる匂いに、言(こと)の音(ね)に
熱帯の生々しさに
まいってしまったんだろうか
これらすべてのそばにいたい
そう願うのはやっぱり恋なのかもしれない
タイ、バンコクのベジタリアン料理レストラン、May Kaidee'sのオーナー、メイカイディーが現在来日中。
アリサンオーガニックセンターで料理教室やカフェの特別ゲストシェフとして腕を振るっています。
私もメイのお店には思い出が深く、バンコク滞在中には度々足を運んだものです。
にもかかわらず、タイ料理の主要な調味料であるナンプラー(魚醤)やカピ(海老味噌)を排除したタイ料理はどうなのかな、という半信半疑から、メイのお店では無難なものばかり頼んでいました。
今回彼女の料理教室でナンプラーもカピも使わないタイ料理をあらためて口にしたとき、私はまったくの誤りを犯していたことがわかり、目からうろこというよりも、恋心さえも芽生えるくらい打ちのめされてしまいました。
(大げさかなあ、だけどそのくらい私のショックは今熱いんです、それともチリの入れ過ぎのせいかもしれません)
それは、本当にタイ料理でした。
普通、タイのスープはチキンなどお肉で濃厚なだしをとっていて、私にはtoo muchだし、タイ料理の真髄にかかわるナンプラーやカピやオイスターソースの風味は素晴らしいものの、正直なところ、そのメッセージの重さゆえに、たくさんは食べられないのが残念なところでした。
だけど、メイの完全ベジタイ料理は、いつまでも食べていたい。
もっと食べてみたい。
辛さは中毒性をもたらす心地のいい麻薬になっている。
味は完全に調和している。
そして、食べたあとの体がラク!
そして、タイに、あの雑踏に、また思いを馳せてしまう。
料理はちから、料理はエネルギー。
料理はチャネリング。
あの人がつくるからあの日のあの料理があり。
一期一会の悲しさと美しさ。
新しい日の、あの人の料理に、何度も出会いたい。
そして私がつくる料理にも
あの人から受けたエッセンスが恋心とともにしみ込んで
そしてまた人から人へと伝播していくんだろう。
シナモンスープ
イサーン野菜
8月に計画しているヨシベジごはんの会「トロピカルアジアンサマーパーティ」ではもちろんタイ料理も多く登場しますが、ナンプラー等を一部のメニューに含める、としています。
今となっては、これがさらにごく一部になることは間違いありません!
それがおいしいから、そういう理由から。