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「ねじまき鳥クロニクル 第2部 予言する鳥編」

「ねじまき鳥クロニクル」 第2部 予言する鳥編 を読み終わった。

 私はこの小説を30年間なぜ読まなかったのか、心から後悔した。
 確かに読まずにきた30年間何も自由はなかったし、何も不足を感じることもなかった。妻とはまあまあうまくやってきたし、子供たちもそれなりに成長して孫の顔も見せてくれた。これ以上何を望むものがあろう、と大袈裟にいえばいえなくもない。でも、この小説を読み終わって、何で読まずにきたんだろう、こんな手元にあったのに、と後悔ばかりが募った。うーん、本当に大きな損失をしてきた。
 かと言って、30年前に読んでいたら今の私がそれほど大して変わっていなかっただろうとも思う。だが、読んでいたら、家の庭にある古井戸は一度は覗いたであろうし、かつて随分なまされた妻が突然いなくなって途方に暮れながらあちこち探し回るという破滅的な夢にも少しは耐性ができていたのかもしれない。
読んでいたとしても、ちっぽけな違いしか生じなかったかもしれないけれど、その違いが毎日の生活の大きな部分を占めているのが現実なのだろうから、私は今の私ではなかったかもしれない

 まあ、何にしても、読まずにきてしまった事実はこの本の上に残った汚れが物語っているから、仕方ないものと諦めて、今は読み終えることができた幸運を喜ぶべきなのかもしれない。
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