■香雪美術館 生誕170年・没後100年記念『鈴木松年 今蕭白と呼ばれた男』(2018年7月10日~9月30日)
土曜日、大阪では午後から文楽の第2部と第3部のチケットを取っていた。その前に行っておきたい展覧会が2つ。まず朝から阪急御影の香雪美術館を訪ねる。鈴木松年(すずきしょうねん、1848-1918)は、あまり知られた存在ではないと思うが、私は大徳寺の塔頭・龍源院で、キツネの妖怪・白蔵主(はくぞうす)を描いた屏風を見て以来、気になっている画家だ。今年の正月、京博で『群仙図屏風』(※後期展示)を見て、いよいよ気になり始めていた。本展は、明治期に京都画壇の中心として活躍したが、現在では「忘れられた存在」になっている鈴木松年の画業と作風を紹介する展覧会で、作品と資料など約80点を展示する。
とはいえ、展示替えがあるし、小さな美術館なので、大作が多くないであろうことは分かっていた。前期展示の目立つ作品といえば、個人蔵の『鞍馬僧正谷屏風』6曲1双。右隻にりりしい若武者(牛若丸か?)とそれを取り囲む烏天狗たちが描かれている。左隻は深山の景。荒々しい墨画淡彩の『紅梅図』(京都市立芸術大学)にも見とれた。京都・平等寺(因幡堂)の仁王像も迫力満点だが、本堂の内、本尊の背面に当たる壁面に描かれているもので、その部屋が長らく物置として使用されていたため、忘れられていたらしい。最近、発見されて、2016年秋の非公開文化財特別公開で初公開された。明治の作品でもこんなことがあるのだな。
松年は京都府画学校(現・京都市立芸術大学)の副教員(教授職)をつとめていたので、絵手本とした描いた小品が多数残っている。これらは手堅いが、あまり面白くない。また『春秋風物山水之図屏風』のような穏やかな作品も手掛けている。また、『松図』は、大阪朝日新聞社の社屋新築を記念する扇のデザインに使われた。大津絵の模写や『戦勝萬歳図』のような一種の風俗画も面白かった。鈴木松年という画家を知る入門編としてはとても役に立ったが、もう少し作品の数が見たかった。いつか次の機会があるといいなあ。
■中之島香雪美術館 開館記念展『珠玉の村山コレクション~愛し、守り、伝えた~ III 茶の道にみちびかれ』(2018年7月7日~9月2日)
今年3月に開館した中之島香雪美術館の開館記念展パート3は茶の湯がテーマで、村山龍平(1850-1933)が収集し茶会で用いた茶道具約80点を紹介する。簡素で、男性的な好みだなあと感じた。伊賀とか備前とか信楽とか、青磁とか砂張の大皿とか。色彩や装飾性が極端に少ない。乾山や仁清など色絵のやきものもあるにはあるが目立たない。長次郎の楽茶碗『銘:古狐』は乾いた泥団子みたいな風合いで、これが重要美術品かと呆れてしまう。竹で編んだ『桂籠花入』は漁夫が使っていた魚籠ではないかという。池大雅の『六遠図・試錐図巻』は、漢画の山水の描き方6種(六遠)が例示されており、分かりやすくて面白かった。
土曜日、大阪では午後から文楽の第2部と第3部のチケットを取っていた。その前に行っておきたい展覧会が2つ。まず朝から阪急御影の香雪美術館を訪ねる。鈴木松年(すずきしょうねん、1848-1918)は、あまり知られた存在ではないと思うが、私は大徳寺の塔頭・龍源院で、キツネの妖怪・白蔵主(はくぞうす)を描いた屏風を見て以来、気になっている画家だ。今年の正月、京博で『群仙図屏風』(※後期展示)を見て、いよいよ気になり始めていた。本展は、明治期に京都画壇の中心として活躍したが、現在では「忘れられた存在」になっている鈴木松年の画業と作風を紹介する展覧会で、作品と資料など約80点を展示する。
とはいえ、展示替えがあるし、小さな美術館なので、大作が多くないであろうことは分かっていた。前期展示の目立つ作品といえば、個人蔵の『鞍馬僧正谷屏風』6曲1双。右隻にりりしい若武者(牛若丸か?)とそれを取り囲む烏天狗たちが描かれている。左隻は深山の景。荒々しい墨画淡彩の『紅梅図』(京都市立芸術大学)にも見とれた。京都・平等寺(因幡堂)の仁王像も迫力満点だが、本堂の内、本尊の背面に当たる壁面に描かれているもので、その部屋が長らく物置として使用されていたため、忘れられていたらしい。最近、発見されて、2016年秋の非公開文化財特別公開で初公開された。明治の作品でもこんなことがあるのだな。
松年は京都府画学校(現・京都市立芸術大学)の副教員(教授職)をつとめていたので、絵手本とした描いた小品が多数残っている。これらは手堅いが、あまり面白くない。また『春秋風物山水之図屏風』のような穏やかな作品も手掛けている。また、『松図』は、大阪朝日新聞社の社屋新築を記念する扇のデザインに使われた。大津絵の模写や『戦勝萬歳図』のような一種の風俗画も面白かった。鈴木松年という画家を知る入門編としてはとても役に立ったが、もう少し作品の数が見たかった。いつか次の機会があるといいなあ。
■中之島香雪美術館 開館記念展『珠玉の村山コレクション~愛し、守り、伝えた~ III 茶の道にみちびかれ』(2018年7月7日~9月2日)
今年3月に開館した中之島香雪美術館の開館記念展パート3は茶の湯がテーマで、村山龍平(1850-1933)が収集し茶会で用いた茶道具約80点を紹介する。簡素で、男性的な好みだなあと感じた。伊賀とか備前とか信楽とか、青磁とか砂張の大皿とか。色彩や装飾性が極端に少ない。乾山や仁清など色絵のやきものもあるにはあるが目立たない。長次郎の楽茶碗『銘:古狐』は乾いた泥団子みたいな風合いで、これが重要美術品かと呆れてしまう。竹で編んだ『桂籠花入』は漁夫が使っていた魚籠ではないかという。池大雅の『六遠図・試錐図巻』は、漢画の山水の描き方6種(六遠)が例示されており、分かりやすくて面白かった。