〇日本民藝館 特別展『書物工芸-柳宗悦の蒐集と創造』(2018年7月3日~9月2日)
「書物」を工芸品の一分野と位置付けた柳宗悦の蒐集品と、柳が装幀に関わった書物を展示する特別展。玄関を開けると、正面の階段の上の壁には『色紙貼交屏風』。全て文字は書かれていなくて、さまざまな色の四角形・長方形が、インスタレーションのようにおしゃれ。2階に上がって、大展示室へ。雑誌『工藝』をはじめ、柳宗悦が装丁した書物と、その書物にゆかりの工芸品が展示されていた。カラフルで温かみのある装丁が多い。そして、職業病(?)というわけではないが、書物の展示方法が勉強になった。透明のアクリル板を使って、本を立てたり寝かせたり。本が傷まない程度の角度で特定の頁が見えるように固定したり、秩が開きかけで固定されているのも面白かった。
2階はあと2部屋が特集展示。「挿絵本」の部屋は『漁鳥包丁切形』(江戸時代)の隣に魚形の水注が並んでいて微笑む。久しぶりに見る『浦島絵巻』(甲本)! 「箱を開けた浦島に、帯のような煙がとびかかる」図である。でも、これが結末かと思ったら、そのあと、坊主の姿、木の根元に亀、鳥居、館の中の女性と、絵が続いている。物語は、どんな終わり方をしているのだろう。ちなみに2階の廊下には、やや小型の乙本も出ていた。こちらはまあまあ絵が達者でつまらない。大好きな『つきしま(築島物語絵巻)』は、清盛が祇王・祇女を侍らせ、人身御供が籠に入れて沈められるのを見物するところ。『十二段草子絵巻断簡』(室町~江戸時代)は複数出ていた。
「八卦」や「大悲陀羅尼」など、難しい内容を絵で解説したものもある。後者は「解説」ではなく「音を覚える」ためのテキストと考えたほうがよいのかもしれない。たとえば「今世後世大安楽(こんせごせだいあんらく)」の「今」はキツネ、「世」は背中、「後」は碁盤で示すという具合である。明治時代の著色本『神仏図絵』は「寺」「弘法大師」「小屋山(こうやさん)」などの概念を学ぶためのテキストらしい。
『武者陣立図』(江戸時代)は、騎馬武者や徒歩武者を印判(スタンプ)で表し、陣立(行列)を解説する。軍勢の中に「其疾如風」で始まる「風林火山」十六文字の旗が見えたけれど、武田軍の陣立図なのかどうかは不明。室町時代の『調馬図』と類例は、廊下の展示ケースを含め、3点も出ていた。
特集展示のもう1部屋「浄土教聖教と仏書」では、和讃本の文字の闊達さに見とれた。特に右上から左下へ斜めの払いが美しい。2階はほかに「朝鮮時代の陶器」と「民藝運動の作家たち」で、どちらもやきもの中心。
1階へ。中央階段から玄関ホールは特集展示の続き。絵巻『雀の発心』は、サントリー美術館の『雀の小藤太絵巻』よりも鳥の姿がリアルでかわいい。『唐四柱』(占い本?)など朝鮮の挿絵本がたくさん出ていた。他に「日本の陶器」と藍染を中心とした「日本の織物」。
最後にミュージアムショップ隣りの1部屋は、日本民藝館らしからぬポップでカラフルな染布であふれていて、びっくりした。柚木沙弥郎(ゆのきさみろう、1922-)の作品だという。日本民藝館では、先日まで『柚木沙弥郎の染色 もようと色彩』(2018年4月3日~6月24日)という特別展が開催されていて、友人からも「ぜひ行くべき!」と奨められていたのだが、見逃してしまった。残念に思っていたら、今期も1室だけ展示が継続していた。こういう試みはとてもいい。感謝! 柚木さんは、ちくま学芸文庫「柳宗悦コレクション」の装丁を手がけたアーティストでもある。いいなあ、このひとの染布でつくった服が着てみたい。
「書物」を工芸品の一分野と位置付けた柳宗悦の蒐集品と、柳が装幀に関わった書物を展示する特別展。玄関を開けると、正面の階段の上の壁には『色紙貼交屏風』。全て文字は書かれていなくて、さまざまな色の四角形・長方形が、インスタレーションのようにおしゃれ。2階に上がって、大展示室へ。雑誌『工藝』をはじめ、柳宗悦が装丁した書物と、その書物にゆかりの工芸品が展示されていた。カラフルで温かみのある装丁が多い。そして、職業病(?)というわけではないが、書物の展示方法が勉強になった。透明のアクリル板を使って、本を立てたり寝かせたり。本が傷まない程度の角度で特定の頁が見えるように固定したり、秩が開きかけで固定されているのも面白かった。
2階はあと2部屋が特集展示。「挿絵本」の部屋は『漁鳥包丁切形』(江戸時代)の隣に魚形の水注が並んでいて微笑む。久しぶりに見る『浦島絵巻』(甲本)! 「箱を開けた浦島に、帯のような煙がとびかかる」図である。でも、これが結末かと思ったら、そのあと、坊主の姿、木の根元に亀、鳥居、館の中の女性と、絵が続いている。物語は、どんな終わり方をしているのだろう。ちなみに2階の廊下には、やや小型の乙本も出ていた。こちらはまあまあ絵が達者でつまらない。大好きな『つきしま(築島物語絵巻)』は、清盛が祇王・祇女を侍らせ、人身御供が籠に入れて沈められるのを見物するところ。『十二段草子絵巻断簡』(室町~江戸時代)は複数出ていた。
「八卦」や「大悲陀羅尼」など、難しい内容を絵で解説したものもある。後者は「解説」ではなく「音を覚える」ためのテキストと考えたほうがよいのかもしれない。たとえば「今世後世大安楽(こんせごせだいあんらく)」の「今」はキツネ、「世」は背中、「後」は碁盤で示すという具合である。明治時代の著色本『神仏図絵』は「寺」「弘法大師」「小屋山(こうやさん)」などの概念を学ぶためのテキストらしい。
『武者陣立図』(江戸時代)は、騎馬武者や徒歩武者を印判(スタンプ)で表し、陣立(行列)を解説する。軍勢の中に「其疾如風」で始まる「風林火山」十六文字の旗が見えたけれど、武田軍の陣立図なのかどうかは不明。室町時代の『調馬図』と類例は、廊下の展示ケースを含め、3点も出ていた。
特集展示のもう1部屋「浄土教聖教と仏書」では、和讃本の文字の闊達さに見とれた。特に右上から左下へ斜めの払いが美しい。2階はほかに「朝鮮時代の陶器」と「民藝運動の作家たち」で、どちらもやきもの中心。
1階へ。中央階段から玄関ホールは特集展示の続き。絵巻『雀の発心』は、サントリー美術館の『雀の小藤太絵巻』よりも鳥の姿がリアルでかわいい。『唐四柱』(占い本?)など朝鮮の挿絵本がたくさん出ていた。他に「日本の陶器」と藍染を中心とした「日本の織物」。
最後にミュージアムショップ隣りの1部屋は、日本民藝館らしからぬポップでカラフルな染布であふれていて、びっくりした。柚木沙弥郎(ゆのきさみろう、1922-)の作品だという。日本民藝館では、先日まで『柚木沙弥郎の染色 もようと色彩』(2018年4月3日~6月24日)という特別展が開催されていて、友人からも「ぜひ行くべき!」と奨められていたのだが、見逃してしまった。残念に思っていたら、今期も1室だけ展示が継続していた。こういう試みはとてもいい。感謝! 柚木さんは、ちくま学芸文庫「柳宗悦コレクション」の装丁を手がけたアーティストでもある。いいなあ、このひとの染布でつくった服が着てみたい。