見もの・読みもの日記

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いまどきの新聞漫画/まんが政治vs.政治まんが(佐藤正明)

2016-09-28 21:29:03 | 読んだもの(書籍)
○佐藤正明『まんが政治vs.政治まんが:七人のソーリの10年』 岩波書店 2016.8

 2005年9月から2016年7月までの間に、中日新聞・東京新聞・西日本新聞に掲載された政治風刺まんがから約170点を収録。登場する「七人の総理」は、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦。安倍晋三(第二次&第三次)に関する作品の量が圧倒的に多いのは、単純に在任期間の長さに比例しているのだろう。

 作品は1コマだったり4コマだったり、もっとコマ割りをしてストーリー漫画の1ページみたいだったり、形式はいろいろであるが、1コマまんがのほうが、メッセージが単純で面白い感じがする。個人的には、オバマの核軍縮演説を諷刺した「空念仏か」みたいな、セリフもない1コマものが好き。

 しかし、期待したほどには面白くなかった。「あとがき」に中日新聞・東京新聞政治部長の金井辰明氏が「中日新聞(東京新聞)の政治まんがはとても面白い」と言われる、という話を書いているが、なんだか内輪褒めだなあ、とげんなりした。年齢層の高い新聞読者には面白いのかもしれないが、私は、諷刺の毒が弱い気がして物足りなかった。SNSなどに流れる、毒の強い諷刺マンガや写真コラに慣れ過ぎてしまっているのかもしれない。いや、本書でカリカチュアライズされている政治家のキャラクターも、現実のほうがずっと強烈な気がする。

 それから、日本の政治の劣化が、もはや笑っていられない状態に突入しているためでもある。この10年の政治状況を振り返っていると、ああ、このときが「ポイント・オブ・ノー・リターン」だったかもしれない、という記憶がよみがえって、どんどん辛くなってくるのだ。政治まんが家にも、読者にも辛い時代である。
コメント
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