goo blog サービス終了のお知らせ 

見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

国宝燕子花図屏風(根津美術館)+絵画の美(五島美術館)ほか

2010-05-08 19:17:04 | 行ったもの(美術館・見仏)
※連休前に行った展覧会から、記憶をたどりつつ。

根津美術館 新創記念特別展 第5部『国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開』(2010年4月24日~5月23日)

 数ある根津美術館の優品の中でも、多分いちばん人気が高いのはこれだと思う(直感で)。個人的にはそれほど好みでないが、ほかの作品に期待して見に行った。展示室1は、金地に繊細な草花を描いた、琳派らしい屏風から始まり、奥に進むと、真打ち『燕子花図屏風』の登場。うーん、きれいだ。暗い室内に浮かび上がる展示窓の幅と高さが、舞台装置としてぴったり。もしや新しい根津美術館って、この『燕子花図屏風』をいちばん美しく見せるために設計されたんじゃない?と思った。

 でも私の好みは、大胆な空間構成の『桜下蹴鞠図屏風』。右隻は、直立する4本の桜木がリズミカルな躍動感を作り出す。左隻は、斜めの塀が画面を分断し、左端の大部分を池の青色が占める。完全な左右非対称のようで、不思議な安定感がある。着物の柄みたいだ。解説によれば、宗達工房の制作。光琳は『白楽天図屏風』が好きだな。

 仁清の『色絵山寺図茶壷』は初見だろうか。『吉野山図茶壺』や『芥子文茶壺』に比べると、やや小ぶり。金色で表現されているのは霞なのかもしれないが、ちょうど照明が当たって、燃え立つ夕映えのように見えた。

五島美術館 開館50周年記念名品展I『絵画の美-絵巻・水墨画・琳派』(2010年4月3日~5月9日)

 「絵巻・水墨画・琳派」とは、ずいぶん欲張った展示だが、私がいちばん惹かれたのは歌仙絵だった。最も古い13世紀の作、上畳本「紀貫之像」と佐竹本「清原元輔像」は、理想化された歌仙像で、あまり面白くない(貫之、こんなに威風堂々としているか?)。よかったのは後鳥羽院本三十六歌仙絵の「平兼盛像」と「平仲文像」。

 前者は、沈倫を嘆く歌の多い兼盛にふさわしく、肩を丸めてうつむき加減。後者は、完全に尻をこちらに向けて横顔を見せ、つんとした鼻筋が、やや癇の強そうな美形である(※これ、五島美術館のサイトで画像を確認すると、確かに「平仲文像」と原本に書かれているが、一般に「三十六歌仙」に入るのは藤原仲文らしいのだが…好きな作品なので、疑問を呈しておく)。

 源氏物語絵巻「鈴虫一」「鈴虫二」は、加藤純子氏による復元模写と比較できるのが面白かった。この場面では、男性貴族の装束は黒ではなくて、むしろ青なのね。ちょっと意外。

東京国立博物館 特集陳列『平成22年度新指定国宝・重要文化財』(2010年4月27日~2010年5月9日)

 『細川家の至宝』を見に行ったついでに、そうだ、これも見なければ、と思って寄った。展示室に入って最初に目に飛び込んできたのは、浅黄色の空にピンク色の山容がそびえ立つ『浅間山図』。おお、亜欧堂田善の!と嬉しくなる。

 いちばん面白かったのは『伊能忠敬関係資料』(重要文化財→国宝へ)。大きな地図2枚が目を引くが、「自深川黒江町至浅草司天台実測図」は、自宅から職場までを測量し、横長に綴じた方眼紙に記録したもの。「測量日記」はB6版くらいの小さなノートで板心に「楽天楼」とある。「ラランデ暦書管見」は高橋至時が抄訳したものだというが、誰の字なんだろう?

 文書だけでなく、測量器具も一括指定を受けていて、ちょうど読んでいた『天地明察』にも出てきた「彎窠羅鍼(わんからしん)」(杖先に装着する方位磁石)や、作図に使用するらしい、小さな星形のハンコには嬉しくなった。

 このほか、日明貿易の資料、八瀬童子関係資料など、今回は歴史資料が多い。大正時代の映画フィルム「史劇楠公訣別」は、ドラマとともに製作の様子が記録されている珍しいものだった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする