goo blog サービス終了のお知らせ 

見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

まだまだ名宝あり/細川家の至宝(東京国立博物館)

2010-05-01 18:11:16 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 特別展『細川家の至宝-珠玉の永青文庫コレクション-』(2010年4月20日~6月6日)

 旧肥後熊本藩主・細川家の文化財を伝える永青文庫は、私の好きな美術館のひとつだ。神田川沿いから、急な胸突坂を上がった途中にある。『タモリのTOKYO坂道美学入門』によれば、「タモリ倶楽部」のロケで、この坂道を歩きながら「ここ軽井沢は…」という嘘レポートをしたことがあるそうだ。確かに都心のエアポケットに迷い込んだような坂道である。

 永青文庫には何度も通っているので、「至宝」と言っても驚かないぞ、という気持ちで見に行った。しかし、その自信は、第1室で、あっという間に崩れた。甲冑、陣羽織、大馬印、幟、火縄銃など。勇壮、大胆、ときには繊細なデザインに目が釘付けになる。細川家って戦国武将だったんだ、ということを、いまさらのように再認識。明智光秀、織田信長、徳川家康など戦国のビッグネームの書状も、ずらずらと並んでいる。

 豊前小倉、ついで肥後熊本の藩主となってからの細川家には、やや親しみを覚える。今年の冬の展示『細川サイエンス』で覚えた細川重賢(しげかた)の名前にも再会。しかし、重賢が藩政改革のために設けた役所「機密の間」の記録『機密間日記』は初見。全く読めなかったけれど、きっとすごい内容なのだろうと勝手に思った。66冊が現存。このほか、藩校「時習館」の事務記録や学規など、古文書好きには垂涎の展示だった。これらは、現在、熊本大学附属図書館に寄託されているそうで、東京では、なかなか見る機会のなさそうな資料である。

 今回あらたに名前を覚えた藩主に、細川斉茲(ほそかわなりしげ、1787-1810、熊本藩第8代藩主)がいる。中国絵画の収集につとめるなど「絵画史上注目の藩主」なのだそうだ(Wikiにその記述なし)。斉茲が矢野良勝・衛藤良行に作らせた『領内名勝図巻』は、地政学的興味に発した調査報告で、いわゆる「美術史」には位置を与えられないのかもしれないが、「真」に迫ろうとする画技が魅力的である。全15巻のうち14巻が伝わり、全長は400メートルに及ぶそうだ。杉谷行直の『富士登山図巻』も同様に、伝統や流派にとらわれない新しい絵画の誕生を感じさせる。

 このほか、茶道具、能面、白隠と仙涯の書画、刀剣、近代絵画(日本および泰西→安井曽太郎の『承徳の喇嘛廟』を見ることができた!)、仏像(中国、インド)、三彩磁器と、実にバラエティ豊か。細川護立コレクション中、至上の一品というべき『金銀錯狩猟文鏡(きんぎんさくしゅりょうもんきょう) 』も、もちろん出品されている。眼福、眼福。

 しかし、展示図録に掲載されていた中国絵画は、残念ながら東京会場では割愛されたもよう。重要文化財[5/3訂正]『長谷雄草紙』が出ないのは仕方ないとして、渋川春海作の天球儀をまた見たかった(←『天地明察』本屋大賞記念に)とか、白隠と一緒に東嶺円慈、遂翁元盧も出してほしかったとか、中国家具の『乾隆御座』を最近見てないなあ、とか…いろいろ、切りのない注文をつけたくなってしまう。まあ、根気よく目白に通うことにしよう。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする