■登封、塔めぐり
登封は、不思議なところだ。登封という地名を聞いたことがなくても、「少林寺のあるところ」と説明すれば、たいがいの日本人は(西洋人も)納得するだろ う。街には、西洋人の姿が多い。しかも、静かに東洋趣味を楽しむ学究派や、落ち着いた老夫婦などではなくて、「少林寺」のロゴ入りTシャツを着た、マッ チョな青年が、やたらとウロウロしている。こういう中国の都市は他にないだろうと思われる。
この日は、さらに登封のローカルガイドさんが加わった。男性である。小柄だが、ひきしまった体つき、喋る日本語も、なんとなく武闘派の匂いがする。頭髪が薄いので、年齢がよく分からない(あとで、意外に若いことが判明した)。
午前中は、観星台、中岳廟を見学。昼食は、団体客用のレストランに連れていかれたが、量が多くて、半分以上、残してしまった。
午後は、中岳嵩山の中腹に点在する寺を訪ね、塔を見て歩いた。登封=少林寺=武術というのは、短絡的な連想で、この一帯には、古い仏教遺跡がたくさん 残っている。嵩岳寺塔は、中国最古(北魏時代)の巨大な磚塔である。中は吹き抜けの広いホールになっていて、子供たちがゴザを引いて、気持ちよさそうに寝そべっていた。塔の背景は、嵩山の稜線が、大きくうねる波のようで、美しい。
法王寺は、裏山のだらだら坂を登っていくと、形や時代の違ういくつもの塔が、次々に現れる。息のあがってしまった于さんは、ローカルガイドさんに後を任 せて、途中でギブアップ(それでもこのツアーの終了時には、体重が105キロ→102キロに減ったとか)。永泰寺でも、しばらく坂を登ったが、トウモロコ シ畑に阻まれて、塔のそばには寄れなかった。しかし、今日は文句のない青空。乾いた風が気持ちいい。口笛の似合う遠足気分である。
■少林寺
それから、電気自動車に乗って(中国の”世界遺産”では、これが大流行)少林寺に到着。混雑する境内を歩いたあと、歴代の高僧の墓地である塔林を見学し た。『天龍八部』では、少林寺も重要な舞台として登場するのだが、どこがどう、舞台になっていたかは、定かでない。今度、じっくりビデオを観賞してみよ う。
さて、少林寺の西北1キロに位置する初祖庵という庵室は、河南省に現存する最古の木造建築である。ガイドさんが「乗りものを頼みました」というので、何 が待っているのかと思ったら、ディーゼル・エンジンでのろのろ走る、耕運機みたいなトラック。荷台に乗せられ、木の枝に背中を擦られるようにして、細い山 道を走り抜ける。なかなかスリリング。初祖庵では、まだ若い尼さんが門を開けてくれた。なお、達磨大師が面壁九年の修行を行った洞窟は、この初祖庵に向か い合う峰の山頂にある。
■夕食、買いもの
観光を終えてホテルに戻る。この頃になると、我々が、無理をしているわけでも、意地を張っているわけでもなく、「安くて少ない食事で満足する貧乏人」だ と、ようやく分かってきた于さん、「夕食なら、ホテルの前を左にいくと、小吃(シャオチー)やラーメンのお店があるよ」と教えてくれた。”好消息(耳寄り 情報)”に従い、蘭州ラーメンの店を見つけて入る。ちょっと甘いものが欲しかったので、抜絲香蕉、つまり、バナナの大学イモ仕立てを注文。美味しい!!
満腹はしたものの、思い残しが1つだけある。お土産に「少林寺」のロゴ入りTシャツがほしい。昼間、少林寺の周辺で買い逃してしまったら、ホテルの売店にはない。もしやと思って、別のホテルの売店まで遠征してみたが、やっぱりなかった。
あきらめ切れない帰り道、「念のため」街のスーパーでも探してみることに。男性2人を入口に待たせて、2階に上がると、広い衣料品売り場である。さて、 どうやって探そうか、と思っていると、店員のおじさんが、まさに少林寺Tシャツを持って近づいてくるではないか。菅野さんの「吉祥如意」のおかげ? 大喜びで呼び止め、あれこれ選んで、商品をGET。待たせた男性陣に報いようと、階下の食品売場でビールを買って戻ると、既に池浦さんは自主的に缶ビール を買って、立ち飲みしながら待っていた。
(2020/5月 旧geocitiesから移設)