こんなに「文化果つる田舎」に住んでいると(笑)、とかく情報や刺激不足に陥りやすいのでときどき都会の仲間に電話して渇きを癒しているがつい先日もいろいろと話をさせてもらった。
相手は仮にSさんとしておこう。
よくお話を伺ってみると、現在、最高級のパワーアンプの製作をその道の達人に依頼されている真っ最中だった。
一口に真空管アンプといってもいろいろあって、市販品から個人的に作ったものなど様々だ。
そのうち市販品はどんなに高級であろうと「儲け」という要素が必ず入ってくるので所詮はコストに妥協した産物になりがち。そこで、最高級品を目指すとなると必然的に一点物の注文品となる。
Sさんの場合ももちろん後者になるが、その部品集めが凄い。古今東西の有名どころのトランス類やコンデンサー、古典管などめったに手に入らないものばかりを収集中。そのブランド名を聞いただけでため息が出てしまった。
「部品の収集だけで、今のところどのくらいかかりましたか?」と、ぶしつけな質問をしたところ「およそ120万円ほどですかね・・。まだまだかかりそうです。とにかくお金に糸目は付けないので世界で最高級の部品で作ってくださいと言ってあります。これが人生最後のアンプになります。」
「部品も凄いし製作者も達人なのでおそらく世界一のアンプになることでしょうね・・」と自分。イヤ、けっしてヨイショではなく本心からそう思った(笑)。
現在、使っておられるのは「PX25」の親分筋にあたる「PP5/400」(英国マツダ)のシングルアンプだが、今回のアンプは同じ出力管を使ってさらにグレードアップしたアンプを目指しておられる。
その飽くなき探求に「凄い情熱ですねえ!」と感嘆しきりだったが、Sさんが仰るには「いや、ただ好きな音楽を最高の音で聴きたいだけです。ゴルフもやらないし、夜の酒場をうろつくこともないし、そんなことに比べれば安いもんですよ。」
「それもそうですねえ。」
「好きな音楽を最高の音で聴きたい」、この言葉を聞いて久しぶりにオーディオの血が騒いだ(笑)。
「音楽はどんな音でも楽しめるし、別にプアな音で聴いても一向に気にならない。何しろ飢え死にするわけでもないし」という人が圧倒的に多いと思うが、そういう人にとっては永遠にオーディオ愛好家の心理は分からないことだろう。
こんなに美しい音楽を聴けるのならお金をいくら次ぎこんでもいいと思うことが時々ある。
芸術に順番を付けるのは意味がないが、個人的には絵画などとは違って時間芸術としての「クラシック音楽」が最高の位置づけにあると思っているし、それを最高級の音で聴くとなると「鬼に金棒」ですね。
我が家も負けてはおられませんなあ(笑)。
日頃から、まあこのくらいでいいかとつい妥協しがちだが、突っ込むときはドバっと突っ込まないとねえ。とはいえ、闇夜に鉄砲というわけにもいかないし~。
パワーアンプとスピーカーはだいたいこのくらいで「打ち止めだろう」という気がしているので、後の物入りになりそうなのは「プリアンプ」、「DAコンバーター」と「SPの箱」ぐらいですかね。
このうちデジタル系機器は次から次に開発が進んで、高級品がアッという間に陳腐化してしまうのが相場なので、せめて5年間ぐらいは持たせようという観点でこれぞと思う製品を物色中だがなかなか見つからない。
5Gの躍進に伴い中国系のデジタル機器がずいぶん良くなっているという噂をよく聞くが、今回の「新型肺炎」騒動でどうなることやら。ここでも暗い影を落としている。