「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

人間性の開放とモーツァルトの音楽

2024年05月04日 | 音楽談義

もうはるか15年以上も前のこと・・、

地元の新聞に、とあるオーディオ・マニアの写真がご自宅の高級装置とともに大きく掲載されていて「素晴らしい音です。どうか興味のある方は聴きにいらっしゃい」と、随分自信ありげだったのでいそいそと出かけて行ったことがある。クルマで30分ほどの大分市内の方だった。

お年の頃は当時で70歳前後の方だったが、高価な機器を購入して部屋にポンと置いただけで「いい音が出る」と錯覚しているタイプで、それは、それは「ひどい音」だった(笑)。

したがって、オーディオの方はサッパリだったが、音楽への造詣はなかなかのもので「結局、クラシック音楽はバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの3人に尽きます。」という言葉が強く印象に残った。

まあ極論になるのだろうが、「当たらずといえども遠からず」かな・・。

(以下、音楽論になるが各人の感性に左右される話なので、それぞれ見解の相違があると思う。したがってあくまでも「私見」ということでまずお断り~。)

クラシック音楽を一つの山にたとえるとすると、この3人をマスターすればおよそ7合目までくらいは登攀したことになろう。

個人的にはそのうちバッハについてはイマイチのレベルで、せいぜいグレン・グールド(ピアニスト)を介して、「イギリス組曲」「ゴールドベルク変奏曲」を聴くくらい。代表曲とされる
「マタイ受難曲」「ロ短調ミサ」にはとても程遠い。

しかし、モーツァルトとベートーヴェンは結構、イイ線をいってる積もり。

モーツァルトはピアノ・ソナタ、ヴァイオリンソナタ、ピアノ協奏曲などに珠玉の作品があるが、やはり最後はオペラにトドメをさす。
結局「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」で彼の音楽は完結する。

ベートーヴェンでは交響曲の2~3つ、大公トリオ、ピアノ・ソナタの最後の3曲(30番~32番)と後期の弦楽四重奏曲群があれば充分。

この二人の試聴期間を振り返ってみると好きになった年代がはっきり区分されていて、20代の頃はベートーヴェンだったが、30代後半からモーツァルト一辺倒でそれがず~っと今日まで続いている。

ベートーヴェンの音楽は今でも好きだが、年代が経るにつれて押し付けがましさを感じてやや敬遠している。

その点「モーツァルトの音楽は自由度が高く飛翔ともいうべきもので、ある程度人生経験を積まないとその本当の良さが分からない」、まあこれは自分だけの思いだろうと、ずっと胸に秘めてきた。

ところが、
丸谷才一氏の「星のあひびき」を読んでいたらふとこのことを思い起こす羽目になってしまった。

            

該当箇所を要約してみると・・、

「20世紀は「戦争と革命の世紀」だといわれるほど、むごたらしい殺戮の世紀であった。これに関連する死者数は何と1億8千7百万人にものぼる。こういう血まなぐさい百年間でもほんの少し功績はあった。
ピーター・ゲイという著名な歴史学者はこんなことを言っている。「暗澹たる20世紀が誇りうるほんの僅かの事柄の一つが、モーツァルトの音楽をそれにふさわしい栄光の位置に押し上げたということである」。

モーツァルトの音楽が脚光を浴びることが20世紀の誇りうる事柄の一つとは、彼のファンの一人として素直にうれしくなるが、ちょっと「大げさだなあ~」という気がしないでもない。

そもそも「戦争」や「革命」と同列に論じられるほどクラシック音楽が重要だとは到底思えないけどね~(笑)。

それはさておき、問題はモーツァルトの音楽が20世紀に入って見直されたという事実。

本書によると19世紀は道学的、倫理的な時代であり、モーツァルトのオペラは露骨な好色趣味のせいで軽薄、淫蕩的とされ、ベートーヴェンの方が圧倒的な人気を博していたという。

たしかにモーツァルトの「フィガロの結婚」は召使の結婚に初夜権を行使したがる領主を風刺した内容だし、「ドン・ジョバンニ」は主人公が好色の限りを尽くして次から次に女性に言い寄るストーリー。

モーツァルトも「女性大好き」人間だったので、まるで自分が主人公になったかのように作曲に没頭した。そうじゃないとあれほどの迫真の音楽は完成しない。

つまり、人間の本性を包み隠さずにさらけ出す彼の音楽が露悪趣味のように受け取られてしまったわけだが、20世紀に入ると19世紀への反動が出てきて、人間性の開放という観点から、文学、絵画、音楽への新たな発見、見直しが行われ、その一環としてモーツァルトの音楽も大いに見直された。


モーツァルトは1791年に35歳で亡くなったが、彼の音楽は死後、ずっと現在と同じくらい人気があったものと思ってきたのでこの話はちょっと意外に感じた・・。

モーツァルトの音楽に何を感じるか・・、人それぞれだが「露悪趣味」から「人間讃歌」まで、時代の流れや己の人間的な成長とともに受け止め方が変わっていくのが面白い。

とにかく、一見軽薄そうに見えて実はいろんな「顔」が隠されていて、聴けば聴くほどに とても一筋縄ではいかない音楽 であることはたしかだと思う。

この連休中、旅行に行かずにたっぷりと時間に恵まれた方々・・、「You Tube」でモーツァルトの音楽に耳を傾けて 人間性を開放 しましょうや~(笑)。



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