「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

苗字のない国

2023年07月15日 | ウマさん便り

南スコットランド在住の「ウマさん」からのお便りです。

「苗字のない国」 

お役所や病院などの公的書類にニックネームを書く欄がある。それを書かないと誰のことか分からないぐらいこの国ではニックネームが多用されている。

僕はいつもその欄に「UMA(ウマ)」と記入する。僕のまわりで、僕の本名、ウチマヤスノリを知る人間は家族以外まずいない。すべての人が僕のことを「ウマ!」と呼ぶ。僕も彼らのことをニックネームで呼び、苗字はほとんど知らない。

ヨーロッパ諸国もそうだけど英国も苗字のない国と言える。しかも、そのファーストネームも、ほとんどの場合、ニックネームとなる。

キャサリン → キャシー(ケイト)、ジャクリーン → ジャッキー

マーガレット → マギー(ペギー)、エリザベス → ベス(リズ)

ロバート → ボブ、リチャード → ディック(リッチー、リッキー)

アンドリュー → アンディー、ウィリアム → ビル…などなど。

敗戦後、まだまだ貧しかった日本に、戦勝国アメリカの文化がどっと押し寄せてきた時代のこと…

進駐軍のキャンプ(駐留地)でハワイアンを歌ってた佐竹さんにつけられたニックネームはボブだった。ところがアメリカ人の発音の「ボブ」は、日本人の耳に「バァブ」と聞こえた。

で、佐竹さんは「バーブ佐竹」となった。正式に云うと「ロバート佐竹」ですね。なんでロバートがボブになるの?もっとも佐竹さん御本人は、竹の英訳バンブーからバーブ佐竹にしたとおっしゃってるけど…

やはり進駐軍キャンプでジャズを唄ってた峰(みね)さんは、ある時、シャワールームでアメリカの将校に云われた。「君、ナニがでかいな!」つまりペニスが大きいと云われたんです。ペニスのことをスラングでディックと云う。

で、彼のステージ・ネームは「ディック・ミネ」となった。正式には「リチャード・ミネ」ですね。リチャードがなんでディックになるのかなあ? ついでに、ウィリアムがなんでビルになるの? 誰か知ってます?

当時、青山学院高校生だった葉山繁子さんは、大学でクラシックの声楽を学ぶつもりだったけど、アメリカのFEN(Far East Network)ラジオ放送でジャズの虜になり、若くして進駐軍のキャンプで歌うようになった。

誰かが、君はペギーやと云ったのがきっかけでペギー葉山となった。もちろん僕も大好きなペギー・リーからきたステージネームです。このペギー・葉山、正式に云うと「マーガレット葉山」だけど、マーガレットがなんでペギーになるんやろか?

余談だけど、NHK高知放送の開局記念に作られた歌が「南国土佐をあとにして」です。

これを歌ってくれと依頼されたペギー葉山さん、なんで私が歌謡曲を歌わなならんのと嫌で嫌で仕方がなかった。ところが、投げやりで歌ったこの歌が大ヒットして、ペギー葉山の名前は、一躍、誰もが知ることとなったんですね。

さて、この日本スコットランド協会のニュースレター108号で、僕の人生初の入院・手術体験を書いたけど、その至れり尽くせりの医療制度は退院後も続き、CT−スキャンや血液検査の案内が定期的にくる。もちろんすべて無料です。

退院後、初めての血液検査の時、担当の女医さんが、カルテのニックネーム欄にある僕の名前「UMA」を見て驚いておられた。

「これ、ウマと読むんですか? 私の孫娘もウマなんですよ。娘夫婦がハリウッド女優のUma Thurmanの大ファンで、産まれた娘にUMAと名付けたんです。でも、皆、ユマと呼ぶだろうと考え、発音はウマとしたんです。いやあ驚いた。スコットランドにウマは一人だけと思ってたのに…」とニコニコしておられる。

そして「血液検査の結果を病院まで取りに来られませんか? 孫娘を連れて来ますから是非会ってやってください」

もちろん、大喜びでUMAちゃんと御対面しました。大阪のおっさんと違い、めっちゃ可愛い娘で、挨拶もしっかりしている。

「How do you do. My name is Uma. Nice to meet you.」

スコットランドに「ウマ」が二人いるというお話でした。



この内容に共感された方は積極的にクリック →



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする