「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽は楽譜で読むものなのか?

2023年07月08日 | 音楽談義

音楽好きの作家「村上春樹」さんのエッセイには、興味のあるエピソードが満載だが「インタビュー集」~夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです~」の185頁に次のような問答が収録されている。

質問:「20世紀の偉大な文学作品の後にまだ書くべきテーマがあるでしょうか?文学にはもはや書くべきテーマも、言うべきものごともない、という意見に同意されますか?」と、一人の外国の愛読者が発する問いに対して村上はこう答えている。

回答:「バッハとモーツァルトとベートーヴェンを持ったあとで、我々がそれ以上音楽を作曲する意味があったのか?彼らの時代以降、彼らの創り出した音楽を超えた音楽があっただろうか?それは大いなる疑問であり、ある意味では正当な疑問です。そこにはいろんな解答があることでしょう。」

とあり、以下長くなるので要約すると「音楽を作曲したり物語を書いたりするのは”意味があるからやる、ないからしない”という種類のことではありません。選択の余地がなく、何があろうと人がやむにやまれずやってしまうことなのです。」とある。

文学的には、村上さんが理想とする書いてみたい小説の筆頭は「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー)で、小説に必要なすべての要素が詰まっているそうで、そのことを念頭に置いて解答しているわけだが、興味を引かれるのは音楽的な話。

「バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの3人組に対して、はたして他の作曲家の存在意義とは?」

これはクラシック音楽における永遠のテーマではないだろうか。

「ブラームス、ワーグナー、マーラー、ブルックナーなどが居るぞ」と声高に叫んでみても前述の三人組の重量感にはまったく抗しようがないのも、なんだか虚しくなる事実である。

たとえば、このところマーラーの「4番」(クレンペラー指揮)をよく聴いているが、聴き心地はとてもいいのだが、聴き終わってから心に響いてくるもの、いわば「美」についての深い意識や「人生の感慨」を巻き起こすほどの訴える力がないのはいささか残念・・。


本書には、もうひとつ音楽に関して興味あることがあった。(312頁)

村上さんは映画が好きで青春時代に台本(シナリオ)を読み耽ったそうだが、それが嵩じてそのうち自分なりの映画を空想の中で組み立てていくクセがついてしまった。

それは、近代音楽の雄であるアーノルド・シェーンベルクが「音楽というのは楽譜で観念として読むものだ。実際の音は邪魔だ。」と、言っていることと、ちょっと似ているとのこと。「実際の音は邪魔だ」とは実にユニークな言葉。

「楽譜を読みながら音楽を頭の中で想像する」ことが出来れば実にいいことに違いない。第一、それほど広くもない部屋の中で我が物顔で大きなスペースを占めているオーディオ・システムを駆逐できるのが何よりもいい(笑)。

文学は文字という記号で行間の意味を伝える仕組みになっているが、音楽だって音符という記号で情感を伝える仕組みだから同じようなものかもしれない。

もしかして、楽譜が読める音楽家がオーディオ・システムにとかく無関心なのもその辺に理由があるのかもしれない。人間が勝手に描くイマジネーションほど華麗なものはないので、頭の中で鳴り響く音楽はきっと素晴らしいものに違いない。

これからはオーディオに投資することを止めて、できるだけ頭の中で想像しながら聴くことにしよう、といっても残された時間はもうそれほどないのだが・・(笑)。

最後に「チャットGPT」に訊ねてみた。「音楽は楽譜で読むものなのか?」

「音楽というのは楽譜で観念として読むものだ。実際の音は邪魔だ。」という文言は、一部の人々が持つ音楽に対する特定の視点を表現しています。しかしながら、この主張は音楽に対する普遍的な見方ではなく、個人の主観的な意見に過ぎません。

音楽は、楽譜によって表現される一方で、その本質的な要素は音そのものにあります。楽譜は、音楽の構成や演奏方法を示すための手段として重要ですが、音楽はそれを聴くことによって魅力を持つものです。実際の音は、感情や表現を伝えるための重要な要素であり、楽曲の魅力や感動を体験するためには不可欠です。

さらに、音楽は文化や伝統、個人の創造性と密接に結びついています。演奏者や歌手は楽譜を基にしながらも、その音楽を自身の解釈や感性で表現します。音楽は生き生きとした表現であり、単なる観念や抽象的な概念を超えたものです。

したがって、音楽を楽譜だけで理解しようとするのではなく、実際の音に耳を傾けることが重要です。音楽を聴くことで、感情的なつながりや個人的な響きを体験し、より豊かな音楽の世界を探求することができます。」


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