「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「新井 満」さんの訃報

2021年12月05日 | 独り言

3日のネットで「新井 満」氏の訃報に接した。

記事の内容は次のとおり。



「生命の永遠の尊さを歌った音楽作品「千の風になって」の訳詞と作曲などで知られた芥川賞作家の「新井 満」(あらい みつる)さんが3日、誤嚥性肺炎で死去した。75歳だった。告別式は近親者で行う。喪主は妻、紀子さん。

1946年、新潟市生まれ、上智大卒業後、広告会社の電通に入社、作家の森敦さんの出演するCMや森さんの芥川受賞作をテーマに「組曲 月山」を制作。

阿久悠さん作詞の「ワインカラーのときめき」を歌いヒットさせた。音楽、映像プロデューサーとして活躍した。

40歳ごろから小説の執筆を始めた。1987年に「ヴェクサシオン」で野間文芸新人賞、88年に離婚したカメラマンを主人公に都市に生きる現代人の孤独を描いた小説「尋ね人の時間」で芥川賞を受賞した。

1998年の長野五輪のイメージ監督を務めた。「千の風になって」は、妻を亡くした友人を慰めようとしていたときに出会った作者不詳の英語詩を翻訳、作曲した作品で、歌手の秋川雅史さんが歌い、詩集や関連書籍が出るなど大きな反響を呼んだ。

2007年に日本レコード大賞作曲賞を受賞、「般若心経」「老子」「イマジン」の自由訳なども手掛けた。

とある。

「新井 満」さんといえば、つい先日のブログで紹介したばかりだった。お忘れの方も多いと思うので再掲してみよう。

「そして、ふとこの「音楽の押しつけがましさ」で連想したのがつい最近読んだ「生きている。ただそれだけでありがたい。」(新井 満著:1988年芥川賞)の中の一節。

                     

この中でなかなか興味深いことが書いてあった。(61頁)

著者が娘に対して「自分のお葬式の時にはサティのグノシェンヌ第5番をBGMでかけてくれ」と依頼しながらこう続く。

「それにしても、何故私はサティなんかを好きになってしまったのか。サティの作品はどれも似たような曲調だし、盛り上がりにも欠けている。淡々と始まり、淡々と終わり、魂を震わすような感動がない。バッハやマーラーを聴く時とは大違いだ。

だが、心地よい。限りなく心地よい。その心地よさの原因はサティが声高に聴け!と叫ばない音楽表現をしているせいだろう。サティの作品には驚くほど音符が少ない。スカスカだ。音を聴くというよりはむしろ、音と音の間に横たわる沈黙を聴かされているようでもある。

沈黙とは譜面上、空白として表される。つまり白い音楽だ。サティを聴くということは、白い静寂と沈黙の音楽に身をまかせて、時空の海をゆらりゆらりと漂い流れてゆくということ。

毎晩疲れ果てて帰宅し、ステレオの再生ボタンを押す。サティが流れてくる。昼間の喧騒を消しゴムで拭き消すように。静寂の空気があたりに満ちる。この白い壁の中には誰も侵入することができない。白い壁の中でたゆたう白い音楽。」

以上、これこそプロの作家が音楽について語る、まるでお手本のような筆致の文章で、自分のような素人がとても及ぶところではない(苦笑)。

というわけで、まことに惜しい人が亡くなられました。

合掌



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