つい先日のこと、オーディオ仲間のYさんから「このほど新しくWE300B真空管が発売されるのを知ってますか?」「いいえ、初耳ですが・・」
「それなら本を持ってきてあげましょう」。
たしかに「至高の銘球300Bが遂に蘇った」とあって、ペアで「23万1千円」とある。
とはいえ過去(1995年以降)に再生産された300Bは故障が多くて、今でもペアのうちの片割れがオークションによく出品されているが、手を出さない方が無難だとされている。
しかるに今回は「5年保証」であり、そして改良部分についても以下のように述べられている。
「プレートのコーティング素材が従来はカーボンを用いていたが、今回はグラフェンを取り入れている。
またプレート、・フィラメント間の熱放射率や電気伝導率を改善するとともにプレート自体の素材である純ニッケル合金とグラフェンの第一原子層が結びつくことで高い真空を維持しつつ寿命に結び付くガスの発生を抑える」という。
まあ、平たく言えば素人を前に「言いたい放題」という気もするが(笑)、我が家のアンプで実際に試してみたい気もするものの過去の例もあるのでしばらく様子見といこう。
お値段の方はSTCの「4300B」や「WE300B」(1980年代)と、どっこいどっこいなので悩むところだが、この度の新発売で古典管が値下がりしてくれるとありがたい・・・。
最後に、過去のブログで「WE300B」にまつわるお話を再掲しておこう。
「先日、オーディオ仲間のU君(福岡)から次のようなメールが届いた。
「年末年始の読み物として図書館で借りた“MJ無線と実験”のバックナンバーに、同好の志が集まり、300Bを各メーカーの8種類集めて聴き比べした上で順位を出すという記事がありましたが、ご存知でしょうか。」
「音がいい」ことと「ツクリ」の確かさで名管の誉れが高い「300B」のテスト記事は、これまでオーディオ専門誌で数えきれないほど読んできたので結論はおよそ見当がつく。すぐに次のようなメールを送った。
「まだ読んでませんが、結果はおそらくオリジナルのWE300Bが1番で、その他は似たり寄ったりだと推測できます。」
すかさずU君から次のようなメールが届いた。
「残念でした!実は投票順位はこうなっていました。
1.プスバン 300B (中国) 2.JJ 300B (チェコ) 3.ゴールドライオン DX 300B (ロシア) 4.CCI 300B-98 (中国) 5.WE300B '97 (米国) 6.WE300B '87 (米国) 7.高槻電器工業 TA-300B (白ベース/日本) 8.EH 300B GOLD (ロシア)
意外に思われるかも知れませんね。試聴条件が気になるかも知れないので、「MJ無線と実験」に掲載の当該記事を添付します。」
その記事によると、2013年3月30日、ジャズ喫茶「MEG」で30人のオーディオマニアによる投票結果によるもので、先入観を排するために「ブラインドテスト」だったそうで、たいへんな念の入れよう。
いやあ、実に面白い結果ですねえ。「WE300B’97」と「WE300B’87」がそれぞれ5位と6位の中程とは、これいかに?
ちなみに、1990年代半ば以降に製作されたWE300Bは非常に故障が多いと聞いている。1980年代以前のものとはまったく似て非なるものでこればかりは声を大にして叫んでおこう。よくオークションに故障の片割れとして1本だけ出品されているケースが多いが、くれぐれも相場以上の高値で買い物をされませんように~。
我が家にはWE300Bの1951年製(2本)、1967年製(1本)、1988年製(2本)、そして中国製が2本あってそれぞれの音質は熟知している。「ちょっと聞き」では中国製などの近代管が華やかな音を出していかにも「いい音」のように聴こえるが、時間が経つにつれて何だか表面的で薄っぺらな音に変貌していくのを何度も体験している。
一方、オリジナル製は一聴すると中高音域の派手さが無くいかにも地味な音だが時間が経てばたつほど、まるで「いぶし銀」のような光沢を放ってくる。喩えて言えば朴訥で飾り気のない逞しいアメリカ西部のカウボーイみたいな印象かな。
そういう地味な面が前述のような短時間の試聴テストでは大きなハンディになったような気がしてならない。
いずれにしても真空管の持ち味は周辺環境によって変わるので一概に決めつけられないし、まがい物の300Bだってご本人が気に入ってさえいれば傍からあれこれ言うこともなし!
それから、先日真空管マニアの方からメールが届いて「実は私が刻印付きのWE300Bを落札しました」とのことだった。てっきり〇〇系の成金ルートの仕業と思っていたのでビックリ。
この件については昨年(2014年)の12月11日付の記事「高値を呼ぶ真空管」で紹介している。ペアで「911000円」という破格の落札価格に驚いたが、この方によると「購入動機は投資目的の人に落札されるのがイヤだった、そして出品者が長年の取引を通じて信頼が置けたこと」を挙げておられた。
とまあ、以上のような内容だった。
最後に、「お値段は別にして300B真空管の選択肢が増えることは大歓迎ですよ~」と、結んでおくとしよう。
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