「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「音像定位」 VS 「周波数レンジ」

2018年06月23日 | オーディオ談義

「出力管6550を使ったプッシュプルアンプが出来上がりました。これまで使ってきたWE300Bシングルとは違った味を出してくれます。聴きにお見えになりませんか。」

と、オーディオ仲間のNさん(大分市)からお呼びがかかったのはつい数日前のことだった。

「6550」といえば、「KT88」(イギリス)と並び称されるアメリカの大出力管である。


「ハイ、もう喜んでお伺いします。」と、一つ返事で、クルマで40分ほどのNさん宅にすぐに駆けつけた。

ジャズ一辺倒のNさんは真空管アンプの製作もお手の物でこれまではずっと自作の「WE300Bシングル」を使っておられた。

     

Nさんは圧倒的なレコード党でフォノイコもプリアンプも自作されている。スピーカーはアルテックの「A5」で、今回の「6550プッシュプル」はラックの下段に収められていた。

     

元からあった2A3のプッシュプルを改造されたとのことで、くりぬきのウッドシャーシとタンゴの大型出力トランスが目を引く。

Nさん宅ではこれまで何度も「WE300Bシングル」(モノ×2台)で聴かせてもらったが、プッシュプルアンプとの違いは歴然だった。

「ジャズは音の勢いで勝負するところがありますので、その点6550はピッタリですね。音を押し出す力が増したせいか音のエッジがくっきり浮き出てきました。低音域の締まり具合も見事なものです。このスピーカーはプッシュプルアンプが向いているような気がしますよ。」

「そうなんです。」とご満悦そうなNさん。

真空管アンプ党を大きく分けると「シングル」派と「プッシュプル」派に大きく分けられそうである。

前者は小出力のもとで音の繊細さを愛でる傾向があるし、後者は大出力のもとで音の力強さを愛でる傾向があるといっても大きな間違いではなかろう。

我が家の場合は圧倒的なシングル党でプッシュプルアンプは1台しか持っていない。

それも小出力の「171Aプッシュプル」だから胸を張って「プッシュプルアンプ」党とはとても言えないが、いつの日かしっかりした「プッシュプルアンプ」で「AXIOM80」から力強い低音を引き出したい願望が無いと言ったらウソになるなあ~。

この質のいい「6550プッシュプルアンプ」にはそう思わせるものがあった。

「お前はつい先日のブログで話題にした071シングルで満足しているはずなのに、いまだに低音にこだわっているのか」と叱られそうだが、なかなか「低音へのこだわり」からすっきり抜け出せそうにないというのがホンネだ。

山頂を目指して、いろんな登り道があるオーディオにはそれぞれに様々な隘路が横たわっているが、「低音をいかに処理するか」に、マニアの個性が集約されているように思う。


ローエンドまでスッキリ伸び切らない低音域の量感をいたずらに増やしても中高音域に被ってきて音全体が濁って聴こえてしまう経験を嫌というほど積み重ねてきたので、それぐらいならいっそのこと低音を諦めて、ひたすら音の彫琢を楽しんだ方がいいとこれまで割り切ってきた。

そういうわけで、ときどき「よそ様」の「仰々しいシステム」をブログなどで拝見すると、低音域用にSPユニットをいくつも使ったり、あるいはスピード感に問題がある大口径のユニットを使っているマニアがいたりして、どうしてそんなものが必要なんだろうかとつい思ってしまう。

スピーカーはフルレンジが基本であって、それではどうしても周波数レンジに物足りなさを覚える人間が2ウェイ、3ウェイへと走っていくが、その代償として音楽鑑賞にとって大切な「音像定位」のいくばくかが失われていく。

したがって、最終的には「周波数レンジ」を優先するか、「音像定位」を優先するかが各自の胸元に鋭く突き付けられてくる。

もちろん両立するに越したことはないし、そもそもそんなことは個々の勝手でいいも悪いもないのだが、音楽好きな人間ほど「音像定位」を優先する傾向があると言ったら手前味噌だろうか(笑)。

以上、Nさん宅の「6550プッシュプルアンプ」のバランスのいい音を聴かせていただきながらつい問題提起させてもらった。

どうせ「独断と偏見」なので悪しからず(笑)~。

 




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