長いか短いかは別にして、これまで50年近い我がオーディオライフを振り返ってみると、やはりキーポイントはスピーカーとアンプの選択に尽きるように思う。
まず好みの音を出すスピーカーを選び、次に相性のいいアンプと組み合わせる。これだけでオーディオは8割がた完成すると思っているが、スピーカー選びの方は比較的単純だ。有名無名を含めて実力のあるスピーカーはもうあまねく出回っていて本人の熱意と懐具合でいかようにも手に入るので「取りこぼし」はまず考えられない。
問題はアンプである。特に響きがプアなデジタルオーディオにおいて重宝するのが真空管アンプだが、この世界は実に奥が深い。
電圧増幅管、出力管、整流管といった違った役割を持つ膨大な真空管の中からどういう球を選択し、組み合わせるかはもうノウハウの極致だろう。
たとえば、有名どころの真空管といえば「WE300Bオールド」(アメリカ)「PP5/400」(イギリス)、「V503 or PL40」(イギリス)あたりとおおよそ相場が決まっているが、実はこれらは氷山の一角に過ぎず、未だ世に知られていない「隠れた名管」がほかにも実存するのを、このほど身をもって体験したので述べてみよう。
まず、そもそものきっかけは「71Aプッシュプル」アンプだった。
プッシュプル方式なので出力管が左右両チャンネルで2本づつ要るが、先日のブログで述べたように特性の揃わないペアを使ったばかりに高音域が歪んでたいへんな目にあった。
そこで、例によって「北国の真空管博士」のご厚意により手持ちの71系真空管をすべて送ってペア取りをしてもらうことになった。10日ほど経って戻ってきたのがこれ。
ご覧のとおりすべて縦置きだが、真空管の「送迎」はすべてかくあるべし(笑)。
博士からチューブテスター「ヒコック533」で測定してもらった結果、劣化した真空管が3割ほどもあったのにはがっかりした。まあ、オークションでの選択眼が無かったのだからこれは自己責任。
ペア取りは辛うじて2ペアだけが生き残り、あとは特性がまちまちですべてシングルアンプ用として使うしかなかった。
今回はついでに以前故障した「PX25」(イギリス)も同梱しておいたところ、博士によると「管内に空気が入っていて回復不可能です。運が悪いとしか言いようがありません。この球は急にこういうケースになることがときどきあります。」
まあ、そういうわけでダメな真空管が出てきたせいで戻りの荷物のスペースに余裕が生じてしまった。
すると、博士から「多分あなたのWE300Bアンプと相性がいいと思いますので「6A3」という出力管を3本同梱しておきます。新品でシルヴァニアの全盛時代のものです。刻印物ですが、気に入らないときはもちろん返却OKです。」
正直言うと「6A3」なんてこれまで聞いたことが無い球なので、あまり期待しなかったがせっかくの博士のご好意なので無にしては悪いという程度だった(笑)。
到着後に、さっそく「WE300B」(1951年製)と差し替えて聴いてみたところ、これがまあ信じられないような音を出してくれた!
以下、続く。