「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

隠れた名管~その2~

2018年06月14日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

「北国の真空管博士」からご提供があった出力管「6A3」を「WE300B」(1951年製)と挿し換えて聴いてみたところ想像以上に「いい音」が出た。

          

周知のとおり、音を言葉で形容するのにもいろんな要素があり個人ごとの好みも様々だが、自分の場合の尺度はなんといっても
「鮮度」、「色気」そして「琴線に触れる」とでもいうのか「胸にきゅんとくる哀愁感」
に尽きる、この三者を見事に兼ね備えているのが何ともうれしくなる!

出力管を換えるだけでこれほど「音の表情」が一変するのか、と真空管の選択の奥深さに深~い感銘を受けつつ、さっそく博士にご注進。

「いやあ、いい音ですねえ。新品ということもあるのでしょうがWE300Bに優るとも劣らない凄い真空管ですよ。お値段もビンボー人向きなので助かります。スペアをあと2,3本欲しいのでぜひ確保をお願いします。それから、この真空管はブログで型番を公開しても構いませんかね。」

すると「ああ、構いませんよ。良質の6A3ともなるとオークションで購入するのはなかなか難しいでしょうし、アンプの製作にもノウハウが必要ですから競り合いとはおよそ無縁の代物でしょう。」

博士については真空管の「生きた知識」に関して日本有数の方だと思っているが、いつもオープンの姿勢でいたずらに「もったいぶる」ことがないのはとてもありがたい

この世界ではどうでもいいようなノウハウを秘密にしたがる「変人奇人」が多いのだが(笑)。


追って、博士から次のようなメールが届いた。

6A3は1935年にシルバニアが発表したと思われます。フィラメントの形状を見るとヨーロッパ管の影響が見て取れます。 

10往復フィラメントのRCA2A3(一枚プレート)に4往復のフィラメントで対抗するにはヨーロッパに学ぶ必要があったのかもしれません。 

(当時真空管の製造技術はヨーロッパのほうが優れていました) 

その甲斐あってかチューブテスタでGmを実測すると6A3の方が2A3より高く、規格表に近い数値が出ます。 

6A3は良く出来た球なのですが日本では知名度が低いためか製作例は意外と少なく、その実力は正しく評価されていません。 

2A3の2枚プレートと6A3の音を比べてみると6A3の方が音のヌケが良く2A3にありがちな中域の音の濁りをあまり感じません。 

更には、私の開発した裏技回路を組み合わせればWE300Bや一枚プレートの2A3にも引けをとらない音が実現できます。  

(フィラメント電圧が6V規格の)6A3の程度の良い球であれば(フィラメント電圧を)5Vに下げても十分なエミッションを発生します。 

それゆえWE300Bアンプの動作がEp325V以下、プレート損失15W以下であれば差し替え可能です。 

もちろん私が改造したあなたのWE300Bアンプの動作はその範囲に収まっていますので6A3が使えます。 

 なお、71Aシングルアンプでも6A3は使えると思いますが、アンプのフィラメント電流供給能力がギリギリなので長時間の使用はお勧めできません。」

以上のとおり、微に入り細にわたる博士のご解説だが、結局有名な「2A3」真空管に比べてフィラメント電圧が6Vなので「6A3」というわけ。

我が家のケースでは、アンプの回路やインターステージトランスなどとの相性がよほど良かったに違いない。

いずれにしても、我が家ではこれから由緒ある「WE300Bシングル」から「6A3シングル」へとアンプの呼称を変更することにしたが「名を捨てて実をとる」のがポリシーなので、まったく抵抗感はなし(笑)。

そして改めて「6A3」の実力に慄きながら手持ちの3系統のスピーカーに次から次に繋いで本格的に試聴してみた。

「これがAXIOM80本来の色気のある音なのか!」「ワーフェデールからこんなに鮮度の高い音が出るのか!」と驚きの連続、そして一番イメージが変わったのがJBLの「LE8T」だった。

          

イギリス勢に押されてやや影の薄かったスピーカーだがまさに名誉挽回で力強くて歯切れのいい低音域と、音のスピード感に舌を巻いた。もちろんサブウーファーの必要性は微塵も感じさせない。

口径20センチのメリットをフルに発揮した「JBLサウンド」に欣喜雀躍したが、この「6A3シングル」で聴くとほかのアンプが「普通の音」になってしまうのがちょっと怖い(笑)。

いずれにしても、これはほんの一例でほかにもまだ世に知られていない「隠れた名管」がきっとあるに違いない。たとえば博士によるとドイツ製の真空管の中にも第二次世界大戦による爆撃を辛うじて免れた知られざる名管が残されているそうだ。

したがって現在高名な真空管を使っているからといって、ゆめゆめ油断してはいけないのがこの奥深い真空管の世界ではないかと思う今日この頃~。




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