「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「オーディオ風土記」を読んで

2015年05月19日 | オーディオ談義

「オーディオは自分が気に入った音さえ出ていれば、他人から何と言われようとそれでいい」というのが通説である。だが、しかし、他人のシステムがまったく気にならないと言えばウソになるなあ~(笑)。

「オーディオを語るとは、人生を語ることだ。人生の達人がオーディオの達人になれる」という宣伝文句に惹かれてつい手に取ったのが「オーディオ風土記」という本。

先日、1か月分のテレビ番組を紹介した雑誌を購入するためにぶらりと立ち寄った本屋さんでのことだった。

             

今年の1月に出版されたばかりで、ジャズマニアでフリーライターの著者が最高の「音」を求めて、全国の達人「33名」のお宅に訪問しそれぞれの豪華なシステムを紹介するという内容だった。全国津々浦々で熱心なマニアたちの多種多様な個性が百花繚乱の如く「音」として表現されている~。

この種の企画は実を言うと自分が現役時代に秘かに夢見ていたものでまったく同じ構想だったのにいささかビックリ。こうしてブログでの情報発信(一人勝手のガス抜きみたいなものだが・・)をやってなければ、おそらく同じ内容で自費出版を試みたことだろう。当時はブログなんてツールが出来るとは夢想だにしなかったが、誰もが手軽にコメントできる時代がやってきてほんとうにありがたさが身に沁みる。


それはともかく、この種の本は図書館で借りるというわけにもいかないのでゆっくり読ませてもらおうと購入してみた。

若い頃とは違って、今では他家のどんなに豪華なシステムを拝見してもちっとも“うらやましい”という気持ちは湧き起こらないが、少しでも得るところがあれば“めっけ物”という心境だった。

以下、独断と偏見を交えてとりとめのない読後感を述べてみよう。

 ワンパターンの記述が33回も繰り返されて退屈だったので一気読みというわけにもいかず、全体を読破するのに1週間もかかってしまった。

 稀代の名ユニットだと勝手に思っている「AXIOM80」だが(笑)、使用例は33件中皆無だった。この前の試聴会(9日)でもこの件で大いに話題になったが、「上手く鳴らすのがメチャ難しいユニットなので、おそらく駆動するアンプも含めてきちんと調整されたAXIOM80を聴いたことがないのだろう」に落ち着いた。

 軽く、家一軒が立つほどの資金をオーディオに注ぎ込んでいる方が散見されたが、それに見合った音が出ればいいのだろうが、おそらく無理だろう。高級になればなるほどオーディオは難しくなるので随分無鉄砲なことをする人がいると、いささか呆れてしまったが、ま、人それぞれでこれは貧乏人の僻みかもしれない(笑)。

 これまでいろんな試行錯誤をやってきたが、結局、曲りなりにも「いい音」を出す基本は「小出力の真空管アンプで高い能率のスピーカーを駆動する」に、至っている。なぜ「小出力なのか」を解説すると長くなるが、端的に言えば大出力アンプは回路や部品などが大掛かりになってスピードが鈍くなるとだけ言っておこう。

とにかく、本書を読んで上記のような自分の意見がいかに少数派だったかが手に取るように分かった。紹介事例ではことごとく低能率のスピーカーをマッキントッシュなどのハイパワーアンプで駆動するものだった。

 著者がジャズ好きのせいだろうが圧倒的にジャズマニアの訪問先が多かったのも本書の特徴だった。そのせいか真空管アンプを使っている例がごく少数で、おそらくパワーの面で物足りないマニアが多いのだろう。

 真空管アンプに低音域の十全な再生を望むのが無理なのは十分承知している。何といってもダンピングファクターの数値がトランジスターアンプよりも劣る。ここで念のため「ダンピングファクター」について解説しておくと、 

「ダンピングファクター(DF)の数値はアンプのスピーカーに対する制動力の性能をあらわしています。
具体的には、アンプの出力インピーダンスがスピーカーのインピーダンスに対して、どれだけ小さいかを数値にしたもので、例えば8Ω負荷時のダンピングファクターが100のアンプの出力インピーダンスは8Ω÷100=0.08Ωとなります。

ダンピングファクターの値が小さいと、アンプからスピーカーに送り込んだ音楽信号の電流が逆起電圧を発生させ、それによってスピーカーがまた振動してしまうという現象を引き起こしてしまいます。いわゆる「たるんだ低音」という表現がされるとき、この原因による場合があります。

ダンピングファクターの優れたアンプでは、充分に出力インピーダンスが小さいため、スピーカーが再度振動することによるだぶつきが発生せず、本来音楽に含まれていない余計な余韻の無いしまった低音を出すことができるわけです。」

その代わり 真空管アンプは中高音域のスピードと瑞々しさに秀でている。音響空間に漂う、そこはかとない余韻は真空管アンプの独壇場である。それに、ドライバー管や出力管を含めて、コンデンサーやトランスなど弄るところがいっぱいあって、その楽しさは尽きない。

それはともかく、低音域を重視するならトランジスターアンプを、一方、中高音域の質感を重視するなら真空管アンプを選択すべきだと個人的には思っている。

「二兎を追うもの一兎を得ず」、欲張り過ぎて両方を狙うととんでもないことになるが、クラシックは倍音を楽しむ音楽だと秘かに思っているので、トランジスターアンプを使うなんてとんでもない!?(笑)。

以上、皮相的な感想に終始してしまったが本書はジャズ・ファンには大いに参考になるに違いない。

欲を言えば、クラシックと真空管アンプの愛好家の手によって、こういう本が出版されるといいんだがなあ~。

もっと若けりゃチャレンジするんだが(笑)。


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