前回からの続きです。
Kさん宅の試聴が済んで、今度は一路Gさんのお宅へ。予定どおり途中でSさん宅へ寄って無事合流が済んだ。おこがましい言い方を許してもらうと、Gさん宅の音は極めて中庸を得ているのでどんな方にも安心して紹介できるのが非常に心強い。
およそ15分ほどで到着。Gさん宅は福岡市内中心部の老舗の和菓子屋さんだが、その真ん前が有名な「〇〇女学園」で、丁度「文化祭」が盛大に開催されていて大賑わいだった。沢山の女学生たちの黄色い声とブラスが飛び交って、なかなか“かまびすしい”。
瀟洒なビルの3階にあるGさんのオーディオルームだが、「扉を閉めてしまえば大丈夫だと思いますが、もしやかましかったら申し訳ないです・・」とやや心配そうなGさんに対して、一同「少々の雑音なんか気になりませんよ~」。
このブログでもたびたび紹介しているように、低音域がジェンシェンの46センチ口径のウーファー(フィールド型)、中音域がウェスタンの555ドライバー+鉄製のストレートホーン、そしてツィーターという3ウェイ方式のシステム。駆動するアンプは出力1ワット前後の古典管シングル(モノ×2台)。
これまで5回ほど聴かせてもらっているのでもはや熟知している音である。これほどの大型システムなのにスッキリ爽やかな音が部屋の中をまるで“そよ風のように吹き抜けていく”のにはいつも驚かされる。
初めてこのシステムの音を聴かれるSさんも興味津々のご様子で熱心に聴き入っておられた。その場では特段のコメントをされなかったが、翌日次のようなメールが自分宛てに届いた。
「GさんのWEシステムは、私の中に持っていたアメリカンサウンドを代表するWEの概念を覆す、春風が吹き渡る様な爽やかで清々しい音でした。ある意味WEを聴いている事を忘れ去るような、私が大好きなブリティッシュサウンドが鳴っていました。あのシステムからあの音色を導き出せるのはGさんのお人柄でしょうか、素晴らしい事です。お蔭さまでWEの凄さを再認識する貴重な経験をさせて頂きました。」
完璧と言っていいほどの「ブリティッシュ・サウンド」党のSさんがこういうご感想を洩らされるのだから、お互いに登り道は違えども目指す頂上は一緒なのかもしれない。
ところで今回の訪問で厚かましくもGさんから次のCDを3枚お借りした。
ヒラリー・ハーンの「ヴァイオリン・ソナタ」(モーツァルト)となると、絶対に見逃す手はない(笑)。
「プレイズ・バッハ」の名演で一躍その名を馳せたハーンだが、このCDについてKさん曰く「たしかにテクニックは素晴らしいヴァイオリニストですが、芸格はまだまだだと思います。後半になってくるとどうも集中力が持続せずにダレてくる印象を受けました。その点、チョン・キョンファにはまだ及びませんね」
ハーンはまだ若くて“伸び代(しろ)”の多い演奏家だと思うが、モーツァルトを弾きこなせるようになると一人前だろう。
翌日、我が家の「AXIOM80」システムでじっくり鑑賞させてもらったが、ピアノ奏者とも息がピッタリで非常にいい演奏だと感心したものの、後半になるとむやみやたらにテンポが速くなってやや小うるさく感じる演奏になっている印象を受けた。
モーツァルトの演奏は簡単そうに見えて実は非常に手強い。もの凄い難曲をテクニックよろしく、きれいに弾きこなす演奏者が比較的簡易なモーツァルトの小曲ですぐに馬脚を現わす事例には事欠かない。
ハハ~ン!ハーンは集中力の持続性に難があるのかもしれない。往々にして見られる女性特有のクルクル変わる気分屋さんなのかな~(笑)。
いや、むしろご本人の集中力の欠如というよりもリスナーに対して長時間の鑑賞に耐えないもの、悪く言えば飽きをこさせるものがあるのかもしれない。おそらくこっちの方が正解だろう。
話は戻ってGさん宅で1時間半ほど聴かせていただいて、今度は一同揃ってSさん宅へ移動。今度はGさんがSさん宅の音を聴かれて、はたしてどういうご感想を洩らされるのだろうか、実に興味深い。
以下、続く。