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2023-09-05 | アイヌ民族関連
赤旗2023年9月4日
 いまから100年前に1冊の本が世に出ました。「その昔この広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました」という序で始まる『アイヌ神謡集』です▼1923年8月に刊行された同書は、アイヌの間で伝承されてきた叙事詩、カムイユカラ13編を日本語訳付きで収録しています。戦後、岩波文庫として再刊され、このほど補訂新版が発行されました▼この本を残したのは、現在の北海道登別市に生まれたアイヌの女性、知里幸恵です。冒頭に置かれた叙事詩の「銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに」という美しいフレーズが、読む人を先住民族アイヌの世界観の中に引き込みます▼心臓が悪かった彼女は、タイプで打ち直された原稿の校正を終えた夜に、発作を起こし亡くなったといいます。19歳という短い生涯でした。『神謡集』の出版は彼女の死から1年後です▼明治以降、日本政府による強制移住や同化政策によって先住民族であるアイヌはそれまでの暮らしや文化を奪われました。「研究目的」として墓地から遺骨を持ち出すことまで行われました。その中で自らの民族の文化に誇りを持って『神謡集』を残した知里幸恵の思いは引き継がれ、アイヌ文化やアイヌ語を守ろうという努力が若い世代も含めて続いています▼いまもアイヌに対する差別と偏見はなくなっていません。国としての謝罪はいまだなく、しばしば政治家による差別発言も。先住民としてのアイヌの権利と尊厳を守る施策が求められています。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-09-04/2023090401_06_0.html
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