毎日新聞 10月30日(水)11時48分配信
宮城県議会は30日、市町村教委が中学校の歴史・公民教科書を採択する際、神話や天皇、「日の丸や君が代」などの項目を点数評価して反映させるよう県教委に指導を求めた「新しい歴史教科書をつくる会」県支部の請願を賛成多数で採択した。拘束力はなく、県教委は内容を確認して対応を検討するとしているが、例示された項目が恣意(しい)的だとして、政治の教育への介入を懸念する声も高まりそうだ。【久木田照子】
◇「政治の教育介入」批判も
請願は2月、県支部が提出。県教委は「点数評価の例は聞いたことがない」とし、「他県などの状況を調べたうえで対応を検討する」としている。
請願書によると、歴史教科書の記述について、神話、天皇、元寇、韓国併合など12項目を例に挙げ、学習指導要領が目標とする「我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」を評価基準に採点し、点数で順位付けして優劣を示すよう求めた。
例えば、同県内で使用されている教科書を点数評価すれば、神武天皇の記述がないため採択の判断が変わるとしている。
公民教科書についても、宗教・家族、愛郷心と愛国心、日の丸と君が代など18項目で点数評価すべきだとした。
ただし「各段階評価の総合点をもって順位づけを行うように各市町村教委を指導する」として具体的な点数の付け方などについては明示していない。
「新しい歴史教科書をつくる会」宮城県支部は請願提出の理由について「現在は教科書を選ぶ根拠が明確に示されていない。自国を断罪する内容の教科書が選ばれる状態を是正したい」と説明する。
県議会文教・警察委員会はこの請願を今月21日に採択。30日の本会議では、自民系会派の賛成多数で採択した。
◇採点法あいまい
「新しい歴史教科書をつくる会」宮城県支部が独自に教科書採択の際の項目を挙げ、点数化した評価方法を提示した背景には、同会の教科書の採択が進まないことがある。
同会宮城県支部は「一歩踏み込んだ評価を提案した。同じ会社の教科書が選ばれ続けるのは問題」と請願理由を説明。具体的な事項を作って採択に当たることは「公正かつ適切な採択」につながると主張する。
ただし、どのような点数でどう評価するかなどの具体的な方法については記述がない。この請願に対し、市民団体や弁護士は反対を表明。「自由法曹団」同県支部は「請願の評価対象例は、『つくる会』が勧める教科書の点数が高くなるような項目を設定しており、特定の教科書を推薦するのに等しい」と指摘。請願の採択を「政治の教育への介入で、県議会の権限を逸脱する行為」(草場裕之支部長)と批判する。
宮城県教委は今回の請願に従う義務はないが、「点数化は聞いたことがない」と戸惑いを隠せない様子。県教委義務教育課は「重く受け止める。市町村教委に教科書採択の参考資料として、各社の特色を分かりやすい形で示していきたいが、点数化するかは今後検討する」と話している。
宮城県では、県教科用図書選定審議会の専門委員が、市町村教委向けの資料を作成。記述の分かりやすさなどを文章で示している。天皇についての記述など具体的な内容には踏み込んでいない。
また、東京都教委は4段階の星印で評価。歴史教科書では、日本の文化・伝統を扱っている箇所数などについて星の数を示した。ただし「星の数が多いから良い、悪いという意味ではない」とする。
つくる会が、教科書採択に県教委の指導強化を求めた請願は過去、岡山県議会などで採択され、宮城県議会でも2005年、公平な審査を求める請願が採択された。だが、つくる会と連携する自由社の教科書のシェア(12年度)は歴史、公民とも全国シェア0.1%。【久木田照子、山越峰一郎】
◇「つくる会」が例示した歴史・公民教科書の評価項目
<歴史>
(1)神話
(2)天皇
(3)大和朝廷
(4)古事記・日本書紀・万葉集
(5)元寇
(6)文禄・慶長の役
(7)幕末・明治維新
(8)日清・日露戦争
(9)韓国併合
(10)日中戦争
(11)大東亜戦争(太平洋戦争)
(12)占領統治時代
<公民>
(1)宗教・家族
(2)愛郷心と愛国心
(3)公共の精神
(4)国家論
(5)自衛隊
(6)公共財の捉え方
(7)日の丸と君が代
(8)領土問題と日本人拉致問題
(9)沖縄の米軍基地
(10)国際連合・核兵器問題
(11)日本の歴史と立憲主義
(12)大日本帝国憲法
(13)日本国憲法成立過程
(14)天皇
(15)平等主義と自由主義
(16)在日韓国・朝鮮人・アイヌ
(17)間接民主主義と直接民主主義
(18)市場経済と計画経済
http://mainichi.jp/feature/news/20131030dde041010005000c.html
宮城県議会は30日、市町村教委が中学校の歴史・公民教科書を採択する際、神話や天皇、「日の丸や君が代」などの項目を点数評価して反映させるよう県教委に指導を求めた「新しい歴史教科書をつくる会」県支部の請願を賛成多数で採択した。拘束力はなく、県教委は内容を確認して対応を検討するとしているが、例示された項目が恣意(しい)的だとして、政治の教育への介入を懸念する声も高まりそうだ。【久木田照子】
◇「政治の教育介入」批判も
請願は2月、県支部が提出。県教委は「点数評価の例は聞いたことがない」とし、「他県などの状況を調べたうえで対応を検討する」としている。
請願書によると、歴史教科書の記述について、神話、天皇、元寇、韓国併合など12項目を例に挙げ、学習指導要領が目標とする「我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」を評価基準に採点し、点数で順位付けして優劣を示すよう求めた。
例えば、同県内で使用されている教科書を点数評価すれば、神武天皇の記述がないため採択の判断が変わるとしている。
公民教科書についても、宗教・家族、愛郷心と愛国心、日の丸と君が代など18項目で点数評価すべきだとした。
ただし「各段階評価の総合点をもって順位づけを行うように各市町村教委を指導する」として具体的な点数の付け方などについては明示していない。
「新しい歴史教科書をつくる会」宮城県支部は請願提出の理由について「現在は教科書を選ぶ根拠が明確に示されていない。自国を断罪する内容の教科書が選ばれる状態を是正したい」と説明する。
県議会文教・警察委員会はこの請願を今月21日に採択。30日の本会議では、自民系会派の賛成多数で採択した。
◇採点法あいまい
「新しい歴史教科書をつくる会」宮城県支部が独自に教科書採択の際の項目を挙げ、点数化した評価方法を提示した背景には、同会の教科書の採択が進まないことがある。
同会宮城県支部は「一歩踏み込んだ評価を提案した。同じ会社の教科書が選ばれ続けるのは問題」と請願理由を説明。具体的な事項を作って採択に当たることは「公正かつ適切な採択」につながると主張する。
ただし、どのような点数でどう評価するかなどの具体的な方法については記述がない。この請願に対し、市民団体や弁護士は反対を表明。「自由法曹団」同県支部は「請願の評価対象例は、『つくる会』が勧める教科書の点数が高くなるような項目を設定しており、特定の教科書を推薦するのに等しい」と指摘。請願の採択を「政治の教育への介入で、県議会の権限を逸脱する行為」(草場裕之支部長)と批判する。
宮城県教委は今回の請願に従う義務はないが、「点数化は聞いたことがない」と戸惑いを隠せない様子。県教委義務教育課は「重く受け止める。市町村教委に教科書採択の参考資料として、各社の特色を分かりやすい形で示していきたいが、点数化するかは今後検討する」と話している。
宮城県では、県教科用図書選定審議会の専門委員が、市町村教委向けの資料を作成。記述の分かりやすさなどを文章で示している。天皇についての記述など具体的な内容には踏み込んでいない。
また、東京都教委は4段階の星印で評価。歴史教科書では、日本の文化・伝統を扱っている箇所数などについて星の数を示した。ただし「星の数が多いから良い、悪いという意味ではない」とする。
つくる会が、教科書採択に県教委の指導強化を求めた請願は過去、岡山県議会などで採択され、宮城県議会でも2005年、公平な審査を求める請願が採択された。だが、つくる会と連携する自由社の教科書のシェア(12年度)は歴史、公民とも全国シェア0.1%。【久木田照子、山越峰一郎】
◇「つくる会」が例示した歴史・公民教科書の評価項目
<歴史>
(1)神話
(2)天皇
(3)大和朝廷
(4)古事記・日本書紀・万葉集
(5)元寇
(6)文禄・慶長の役
(7)幕末・明治維新
(8)日清・日露戦争
(9)韓国併合
(10)日中戦争
(11)大東亜戦争(太平洋戦争)
(12)占領統治時代
<公民>
(1)宗教・家族
(2)愛郷心と愛国心
(3)公共の精神
(4)国家論
(5)自衛隊
(6)公共財の捉え方
(7)日の丸と君が代
(8)領土問題と日本人拉致問題
(9)沖縄の米軍基地
(10)国際連合・核兵器問題
(11)日本の歴史と立憲主義
(12)大日本帝国憲法
(13)日本国憲法成立過程
(14)天皇
(15)平等主義と自由主義
(16)在日韓国・朝鮮人・アイヌ
(17)間接民主主義と直接民主主義
(18)市場経済と計画経済
http://mainichi.jp/feature/news/20131030dde041010005000c.html