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北海道新聞 2025年5月11日 10:53(5月12日 0:00更新)
祭壇に安置された2頭のクマ。その前で儀礼用の冠をかぶったアイヌ民族の男性3人が礼拝に臨んでいる。背後には大勢の見物客がいて、前のめりでのぞき込んでいる。
1912年(大正元年)、現在の渡島管内長万部町で行われた「熊祭観覧会」を伝える写真絵はがきの一こまだ。
明治以降、こうしたアイヌ民族の「伝統的」な姿を収めた絵はがきが多数流通した。先ごろ発刊された「写真が語るアイヌの近代」(大坂拓著、新泉社)は撮影の経緯や当時の状況を読み解いている。
明治政府はアイヌ民族の土地や言葉、文化を奪う同化政策を進めた。同書は「滅びゆく民族」とする言説が広まったと指摘する。
一方、「消滅の瀬戸際」の文化に対する和人の関心は高まった。「アイヌ風俗」などの名を付した絵はがきが売り出されると観光みやげ品として、さらに学術研究用の資料として珍重されたという。
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