先住民族関連ニュース

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共生社会:アイヌの方々の名誉と尊厳を保持

2019-03-10 | アイヌ民族関連
ブロゴス 2019年03月09日 19:11菅義偉
先月「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。
アイヌ政策は内閣官房長官の所掌であり、アイヌ政策推進会議の座長も務めています。
アイヌの方々が民族としての名誉と尊厳を保持し、これを次世代に継承していくことは、多様な価値観が共生し活力ある共生社会を実現するために重要です。
北海道白老町で現在整備を進めている「民族共生象徴空間」(愛称:ウポポイ=大勢で歌うこと)は、このようなアイヌ政策のコンセプトを体現する扇の要ともいうべきものです。
アイヌ文化の復興等のナショナルセンターとして、アイヌ文化の素晴らしさを体験し、民族共生の理念に共感していただくため、できるだけ多くの方々に訪れていただきたいと思っています。
6年前にアイヌ政策推進会議を初めて北海道で開き、当初の予定を前倒ししてオリンピック・パラリンピックに先立って一般公開することを決めました。
アイヌ文化の素晴らしさを海外の皆様にも見ていただき、世界に発信する良い機会にするため、2020年4月の一般公開を目指しています。
今回提出した法案は、未来志向のアイヌ政策となるよう、アイヌの皆様や地元の方々の要望を伺いながら取りまとめたものです。
法案では、官房長官を本部長とする「アイヌ政策推進本部」を内閣に設置し、総合的なアイヌ政策を着実に推進することになっています。
新たな交付金制度を創設し、従来の福祉施策や文化振興に加えて、地域振興、産業振興、観光振興を含む多岐にわたる施策を今まで以上に総合的に進めていくこととなります。
アイヌの皆さんに寄り添いながら、アイヌの皆さんが抱えている課題の解決に向けた取組を着実に実施していきたいと思っています。
アイヌの方々の誇りが尊重される社会の実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。
https://blogos.com/article/363004/

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マオリとアイヌの交流アピールへ NZの実業家・スミスさん、日本で大型壁画芸術祭を計画

2019-03-10 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2019.03.09

(左から)苫小牧市内などを案内した佐々木さん、道内で芸術祭を計画中のスミスさん、映像作家の柳田さん
 ニュージーランドの先住民族マオリの実業家、ジャー・スミスさん(36)が5日から9日まで千歳市や苫小牧市に滞在し、道内で開催を計画する「大型壁画芸術祭」の会場選定に向けた視察を行った。芸術祭は「マオリとアイヌをつなぐ内容」とし、2020年夏ごろにも実現したい考え。具体的な候補地絞り込みはこれからだが、スミスさんは「苫小牧は白老や(平取町)二風谷などアイヌゆかりの土地に近く、交流しやすいと感じた。最も有力な候補地の一つ」と話す。
 スミスさんは、苫小牧市と姉妹都市の盟約を結ぶニュージーランド・ネーピア市近郊などで毎年、ビルなどの高層建築物をキャンバスにマオリの伝統的な模様や芸術的センスを生かした巨大壁画を描く芸術祭を開催している。
 北海道の先住民族であるアイヌとの芸術を介した交流を模索するスミスさんは5日、神奈川県厚木市在住の映像作家柳田好太郎さん(29)と共に、ニュージーランドから国際線で新千歳空港に到着。札幌などを訪れたスミスさんらは共通のマオリの知人を介して6日、マオリと長年親交があるアイヌ文化継承グループ、苫小牧うぽぽの会長佐々木義春さん(66)と会い、白老町や平取町二風谷のアイヌ関係施設、苫小牧市内のビルなど高層建築も視察した。
 スミスさんは「マオリとアイヌの伝統的な文様に彩られたインパクトある芸術作品を街中の人や観光客に見てもらい、先住民族同士の国際的な交流をアピールしたい」と意気込む。
 視察や開催準備の様子を記録している柳田さんは「アイヌ、マオリその他のアーティスト計10人による国際的な芸術祭になると思う。市役所などを訪れて協力をお願いしている最中」と言う。
 マオリと長年交流がある佐々木さんは「いつ訪ねても親切で、温かく迎えてくれるマオリを、今度は私たちが同じように迎える番」と強調。「苫小牧で大きな芸術祭が実現することを友人として願っている」と語った。
 スミスさんらは10月下旬ごろにも来苫する予定だ。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/10687

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バービー誕生60年、さまざまな職業で活躍する人形登場

2019-03-10 | 先住民族関連
AFPBB News3/9(土) 12:06配信
【3月9日 AFP】着せ替え人形「バービー(Barbie)」誕生60周年に合わせ、キャリアウーマンやロールモデルとなる女性を模した一連の人形が、発売元の米玩具大手マテル(Mattel)から発表された。時代に合わせ、女の子たちにインスピレーションを与えることが目的。
 マテルは8日、シンガポールで開いた記念イベントで、宇宙飛行士やサッカー選手、ニュースキャスターといった職業で活躍するバービー人形を発表。また、女子テニス世界ランキング1位の大坂なおみ(Naomi Osaka)選手、米女優のヤラ・シャヒディ(Yara Shahidi)さん、そしてニュージーランドの先住民マオリ(Maori)として初のバービーとなるスポーツ記者のメロディー・ロビンソン(Melodie Robinson)さんらを模した人形もお披露目された。
 マテル東南アジア支社のマーケティング責任者クリス・チャン(Chris Chan)氏は「バービーは長年にわたり、女の子たちには選択肢があり、どんなキャリアでも達成できることを示すロールモデルとなってきた」と語っている。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190309-00010003-afpbbnewsv-int

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川崎、差別禁止の学習会 「実効性ある条例必要」

2019-03-10 | アイヌ民族関連
北海道新聞 03/09 18:05 更新
 差別を禁止する条例の制定を目指す川崎市を後押ししようと、市民団体「ヘイトスピーチを許さない かわさき市民ネットワーク」が9日、市内で学習会を開いた。精神科医の香山リカさんが講演し「被害は今も生まれている。実効性のある条例や法制度が必要だ」と訴えた。
 香山さんはアイヌ民族差別への抗議活動の経験を振り返り、「街頭やネットで差別発言を繰り返すのはまっとうな神経とは思えない。真剣に主張しているのではなく、娯楽として楽しんでいるように見える」と指摘。「ヘイトスピーチ対策法に罰則規定を設けるなど、根絶には法改正と行政の取り組みが必要だ」と強調した。
 あらゆる差別を網羅的に禁止する条例が昨年末に可決された東京都国立市から上村和子市議も参加。条例について報告し、「川崎で被害を受ける在日コリアンが安心できる条例を」と話した。
 ヘイトを巡るトラブルが続く川崎市では、市が11日の市議会で条例骨子案を示す予定。2019年度内の成立を目指す。学習会には約200人が参加した。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/284622

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第17部 札幌・文化を担う(2) 本、言葉の魅力 地方から

2019-03-10 | アイヌ民族関連
北海道新聞 03/09 05:00
 深刻な出版不況が続く中、地方の小規模出版社で奮闘する2人の若手出版人がいる。札幌の出版社「寿郎(じゅろう)社」の社員、下郷沙季さん(28)と文平由美さん(24)。学生アルバイトとして同社で働き始め、そのまま社員となった2人は「多くの人が手に取ってくれる本を作りたい」と意気込んでいる。
 寿郎社は土肥寿郎社長(54)が2000年に設立した。社長と社員2人の小所帯だが、ノンフィクションを中心に社会問題に切り込んだ書籍も多く、全国的に注目されている。
■未来語る会合も
 愛知県半田市出身の下郷さんは地元の高校を卒業後、北大に入学。北大大学院に進んだ15年、知人から紹介され、同社に勤め始めた。当時は土肥社長しかおらず、編集や校正、営業など多くの仕事を任された。
 学生のアルバイト問題に取り組む「学生ユニオン」やホームレス支援団体といった社会的弱者に目を向ける活動に携わってきた。「理不尽なことに納得がいかない」という性格で、初めて自分で企画した本も、大学などで教官が理由もなく学生の論文を通さないなどの嫌がらせを扱った書籍「アカデミック・ハラスメントの解決」だった。
 休学を挟んでいるため、実は現役の大学院生でもある。今春修了の予定だ。「出版界も東京が中心。情報や人的つながりなど地方からも発信、受信できる出版社にしたい」
 文平さんは長野県須坂市出身。14年、北大に入学し札幌に移り住んだ。3年の夏から寿郎社でアルバイトを始め、大学卒業後の昨春から社員として働く。
 「もともと、そんなに本が好きだったわけではない」と素直に打ち明けるが、仕事をするうち、その魅力に引き込まれた。現在は主に営業で書店回りを担当、本が売れない現状を肌で感じている。
 「やっぱり本は本屋で売れるのが大切」との思いから、昨夏、道内の書店員やライター、編集者を集めた会合「本の会」を企画。情報収集や人脈づくりの場としてこれまでに3回開催し、書店、出版の未来を語り合ってきた。「寿郎社は売れなさそうだけど良質な本をつくる会社。だからこそ、良い本の面白さや魅力を多くの人に伝えたい」

 寿郎社の最新刊は、計良智子著「フチの伝えるこころ」(2700円)。アイヌ民族の伝統的生活文化を紹介した名著を、英訳版を加え24年ぶりに再刊した。そのほか、書籍情報などは寿郎社のホームページ(HP)https://www.ju-rousha.com/で確認できる。
■歌人で稼ぐ生活
 <再会を祈っているよななかまど踏んで雪道赤く染めてた> 地方都市に住む文学者、芸術家、特に若手作家の多くは、その道だけで生計を立てるのは難しく、教諭や講師など本職を別に持ちながら活動する。そんな中、歌人山田航さん(35)は、札幌に住みながら全国区で活躍する“プロの歌人”だ。
 札幌で生まれ育ち、京都の立命館大へ進学。卒業後、金沢で会社勤めをしたが、多忙のため体調を崩し、1年ほどで退職し、札幌に戻った。札幌出身の歌人穂村弘さんが好きだったこともあり、「つらい気持ちをはき出したかった」と、短歌を始めた。会員制交流サイト(SNS)やブログで作品を発表したり、歌人集団「かばん」に参加したり。「図書館にある短歌の本を『あ行』から順番に読んだこともある」と振り返る。
 当初はアルバイトしながらの創作活動だった。2009年に歌人の登竜門、角川短歌賞と現代短歌評論賞を受賞して注目される。12年、第1歌集「さよならバグ・チルドレン」で北海道新聞短歌賞を受賞。翌年から道新地域面の連載「モノローグ紀行」が始まったのを機にバイトをやめ、“歌人”“物書き”で稼ぐ生活となった。
 全国的に知られる存在となったが、それでも札幌にこだわる。「人が多い大都市は、かえって一つの文芸に固まってしまう。地方のほうが分野を超えた文芸活動ができる」と断言する。新聞連載のほか、雑誌の寄稿、選者、短歌教室の講師。さらには札幌の歴史を紹介するムック本の編集人を務めたり、俳句グループに参加したりと、活動の幅はさらに広がる。「例えば刑務所などで文芸に接する機会の少ない人にも短歌を教えてみたい。言葉による表現は幅広い。その魅力を広く伝えていく」と前を見据える。
(久才秀樹)

 山田航さんが選者を務める「野性歌壇」(角川書店「小説 野性時代」)の応募締め切りは毎月末日。もう一人の選者は旭川の歌人加藤千恵さん。3月のテーマは「お笑いコンビ(トリオも可)の名前」が含まれた歌で、31日が締め切り。詳しくは野性歌壇、https://post.kadokawa.jp/yaseijidai/tankahaiku/へ。
 山田さんの活動を紹介するオフィシャルHPは、https://yamadawataru.jimdo.com/
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/284300

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フランス人アイヌ研究者に聞く「日本という謎の国に来たら、そこに別の謎の民族がいた」

2019-03-10 | アイヌ民族関連
COURRiER 3/9(土) 21:08配信
漫画『ゴールデンカムイ』などの影響で日本国内でもふたたび関心が高まっているアイヌ民族とその文化。そのアイヌに魅せられたフランス人民族学者がいる。どのようにしてアイヌと出会ったのか。フランス人から見たアイヌの魅力とはなにか。
博士論文「日本におけるアイヌの社会文化的変容」で、第35回(2018年度)「渋沢・クローデル賞」のフランス側受賞者となったリュシアン=ロラン・クレルク氏に、2019年1月18日、日仏会館にて聞いた。
アイヌに出会うまでの細道
──どのような経緯でアイヌに関心を持ったのですか?
まず日本に関心を持ち、それからアイヌに関心を持ちました。
日本に興味を持ったのは、父方の祖母の影響です。映画好きの祖母が三船敏郎のファンだったんです。それでフランスのテレビで黒澤明の作品が放送されるときは祖母と一緒に見ていました。
『羅生門』を見たときの衝撃はいまでも覚えています。突然、私の目の前に日本という不思議な国の景色が広がりました。
人生で初めて見た日本人がおそらく三船敏郎だったのだと思います。いい役者ですよね。ハンサムだし、野獣みたいなところもあります。『羅生門』の三船を見て、まだ幼かった私はおっかなくて震えあがりました。
それから12歳になった頃、日本というお寺が多い神秘的な国があると友人に話していたら、その友人が中学校の図書館から三島由紀夫の本を借りてきて私に貸してくれました。
それが『金閣寺』でした。一気にこの小説の世界に引き込まれました。私にとっては人生初の文学的衝撃のひとつでした。吃音の僧侶の溝口と、美への病的な執着の物語を一心不乱に読みました。自分が崇めているものを破壊しようとするのはなぜなのか。どうして完璧な美を求める心が破壊の欲望に変わるのか。
いつか京都に行って再建された金閣寺を見たいと思いました。だから22歳のとき、初めて日本を旅行したときも旅の目当ては金閣寺だったんです。3ヵ月、京都に滞在し、お寺や神社を巡ったあとは毎夕、鴨川のほとりで時間を過ごしました。そこで素晴らしい人に何人も出会ったんですが、その一人が写真家の林川淳で、日本のミュージシャンをたくさん教えてもらいました。
アイヌと北海道に関心を持ったのは、そのあとです。民族学の学生だったとき、スコットランド出身の詩人ケネス・ホワイトが書いた『野の白鳥』(未邦訳)という素晴らしい本を読みました。その本ではチェーホフの『サハリン島』を引用しながらアイヌが描写されていました。
まるで「開けゴマ!」と言って扉が開いたかのようでした。かつて日本から極東ロシアに及ぶ広い領域に、戦士とシャーマンからなる特別な民族が暮らしていたと知って驚きました。
日本という謎の国にやってきたら、そこに別の謎の民族がいて、「国家なき社会」のモデルもあるというのですから、若い学生の私にはびっくりでした。私のその後の人生の方向性がその発見で決まりました。
前述のケネス・ホワイトの『野の白鳥』は、俳人の芭蕉の精神とともに北海道に旅する内容です。北海道とその住民が見事に描かれています。旅の目標は「世界の最果ての細道」にたどりつくことなのですが、同時にシベリアから越冬のために来た白鳥を見たいという期待の念もあります。
ホワイトは、「地理」と「詩」を結びつけた「ジオポエティック」という概念を提唱しています。この本はそのジオポエティックの実践であり、「はかなくもかけがえのないものへのオマージュ」となっています。
思想は実人生から切り離せず、実世界に根ざしていない理論は理論ではないと強調されています。周り道をしたり、別の道を探したりして、彼方の地に入り込んでいくことを読者に誘います。
──クレルクさんはフランス南西部のボルドーのご出身だそうですね。
私の一族はアルジェリアがフランス領だった頃、アルジェリアに暮らしていたフランス人です。引き揚げでフランス本土に戻ったので、私自身はボルドーで生まれ、青年期までずっとボルドーで過ごしました。
父はアラビア語がしゃべれました。若い頃、ベルベル人の友人たちとサハラ砂漠やムザブの谷を旅したそうです。その話を子供の私にしてくれ、私は夢中になりました。冒険や西洋以外のアートへの憧れが生まれました。
子供のとき、夏休みに何度かスペインに行きました。先祖のルーツの一部がスペインにあることも関係していましたが、とにかく母がスペインに行ってリフレッシュすることが好きだったのです。
毎回、ボルドーからバスク地方を抜けてフランスとスペインの国境を越えるんですが、それはボルドーとはまったく異なる世界に入っていく経験でした。こうした子供時代の経験が、私の心に他者を理解したい気持ちを植え付けたのではないかと思っています。
もっとも私が育ったボルドーは、いまはもうないのかもしれません。かつては「眠れる森の美女」とも呼ばれていたボルドーですが、数年前から大規模な建設ラッシュが続いています。
2018年12月、久しぶりにボルドーに帰ったのですが、「黄色のベスト運動」に紛れ込んで乱暴をはたらく人たちのせいで、あのサント・カトリーヌ通りが都市ゲリラ戦と階級闘争の舞台と化していました。
少年時代の友人もみなボルドーを離れてしまっています。もしかすると私が知っているボルドーは、もはや私と幼なじみの記憶にしか残っていないのかもしれませんね。
アイヌとフランス人は似ているか
──アイヌモシリ(アイヌ語で「人間の静かなる大地」の意)に住まれたとのことですが、どのくらいの期間、どういう形で住まれたのですか。それは「参与観察」の一環ですか?
もう14年になります。2005年からずっと暮らしています。2007年までは日本政府から奨学金をもらっていました。それ以前にも2度訪れたことがありました。友人の小鹿信平が営むゲストハウス「サッポロインNADA」に滞在しました。
参与観察といって間違いはないですね。自分の研究対象に選んだ社会で暮らすために、その社会で働かねばなりませんでしたから。
最初は北海道大学の学生でしたが、その後は小樽の大学で非常勤講師をしたり、いろいろなアルバイトをしたりしました。焼酎バーで働いたり、DJもしたりしました。そうやって経験を積み、人と出会い、フィールドワークをしていきました。
──クレルクさんが言う「アイヌモシリ」とは北海道のことですか?
もともとは北海道だけでなく本州東北地方の一部や樺太や千島列島にも及んでいましたが、現代では北海道ですね。さきほどのケネス・ホワイトの話でいえば「アイヌモシリ」もジオポエティックな概念です。マオリ族がニュージーランドを「アオテアロア」と言うのと似ています。
──フィールドワークをしてみて意外な発見はありましたか?
正直に告白すると、アイヌ文化の研究を始めたときは無知同然でした。ですからすべてが発見でした。藤村久和先生に連れられて初めてカムイノミに参列しました。この儀式を通してアイヌの精神生活の複雑さを知って驚き、祈りの力強さに心を打たれました。
その後、自分の足でアイヌの人たちと会うようになりました。幸運なことに出会った人たちがみないい人でした。たぶんカムイのおかげですね。アイヌの方々に歓迎されたことにも感動しました。気前よく、そして忍耐強く私に接してくれました。
民族学者にとって難しいのは、研究対象の社会の邪魔をせずに、その社会の文化を研究しなければならないところです。自分がさほどアイヌの人たちの邪魔にならなかったことを願っています。
──アイヌとフランス人には似ているところがありますか?
アイヌ系日本人とフランス人のエスプリには共通点が多いです。自由を好むところや、周囲に同調したがらないところとかも似ています。隣の家でやっていることは、自分の家では絶対にやらないとか。
異議を唱えたり、議論を好んだりするところも似ています。アイヌ語に「チャランケ」という言葉がありますよね。「談判」や「討論」のことです。
私は長く日本で暮らしているので、久しぶりにフランスに戻って、あの議論が白熱する光景に接すると、やっぱりフランス人って議論好きだなと再発見するんです。
長所にもなれば、短所にもなる特徴だと思います。いずれにせよフランス人とアイヌは、あまり苦労せずにお互いを理解できます。
フランス人作家ではル・クレジオがアイヌの文化と詩に早い段階から関心を寄せてきました。知里幸恵の『アイヌ神謡集』のフランス語訳を名門出版社の「ガリマール」から出版させることに尽力したのもル・クレジオでした。きっかけは、作家の津島佑子がメキシコでの国際会議で行ったカムイユーカラについての発表をル・クレジオが聞いたことでした。ル・クレジオは、たしか2006年だったと思いますが、知里幸恵の墓も訪れました。
2008年にノーベル文学賞を受賞してまもなく北大に来てアイヌを支援する会議に参加しています。
──アイヌに関して誤解されがちなことがあるとしたら、それは何でしょうか?
一部の人が「アイヌ民族なんて、いまはもういない」と言っていることです。これは完全に間違った認識です。深く憂慮しています。どんな民族も変化や進化をしていくのが常です。人類全体にとって変化し進化していくことが生存のための必要なプロセスですからね。
たしかにアイヌ文化は、ほかの先住民の文化と同じで、早い段階で外部からの影響を受けました。しかし、同じことは日本文化にも言えるのです。日本語にある外来語の数を思えば、それは明らかです。
「宗教儀式に参列したり、古式舞踊を踊ったりしなければ、その人はアイヌではない」という理屈は成り立ちません。無宗教の和人が、お盆のときに盆踊りを踊らないからといって、その人が日本人でなくなるわけではありませんよね。
『ゴールデンカムイ』人気について
──漫画『ゴールデンカムイ』が人気を博していることについてはどう考えていますか?
作者の野田サトルさんやこの作品をフランス語に訳した翻訳家のセバスチャン・リュドマンさんの努力が報われて嬉しく思います。
歴史と虚構が上手に混ぜられた、エンターテインメント性にあふれる上質の冒険物語ですよね。ユーモアとホラーがたっぷりで、叙事詩的なものも感じますし、アイヌ文化もしっかり調べて描かれています。はたして杉元さんとアシㇼパさんが、あの途方もない財宝を手に入れられるのか。
『ゴールデンカムイ』は「手塚治虫文化賞」を受賞していますが、フランス語版も「小西財団漫画翻訳賞」を受賞しているんです。
フランス人読者のなかにはアイヌモシリについてもっと知りたいと感じている人が多いはずです。いままで日本を旅するフランス人というと、関東や関西、沖縄に行く場合が多かったんです。北海道にはあまり来ていなかったんですが、この漫画がきっかけでそれが変わることを期待しています。
──アイヌ文化を描いた漫画はほかにどんなものがありますか?
焼酎バーで働いていたときに知り合った友人に、漫画評論を手がける精神科医の阿部幸弘さんがいて、いろいろ教えてもらいました。
お奨めしたいのは『ハルコロ』ですね。手塚治虫の弟子でもある石坂啓が、著名ジャーナリストの本多勝一の本を原作にして描いた漫画です。ハルコロ(アイヌ語で「おなかいっぱい食べられる」の意)という名のアイヌの少女の日常をみずみずしく描いています。日本の漫画で先住民の女性が主人公になっているのは、もしかするとこの作品だけかもしれませんね。
1457年のコシャマインの戦いまでの15世紀のアイヌの習俗や衣服、神話の描写が見事です。本多勝一が書いたもとの小説バージョンもなかなかのものです。もともとはアイヌの運命を描く三部作の第一作にする構想もあったようです。
監修者が萱野茂だということが漫画『ハルコロ』の特筆すべき点です。萱野は、この漫画を、教科書の著者やアイヌの文化や歴史に関心を持つ作家が参照する作品にしたかったようです。少女の日々の暮らしの苦楽を通して描かれるアイヌの伝統的な暮らしには魅力と深みが感じられます。この水準に達している漫画はあまりないと思います。
それから安彦良和の『王道の狗』もあります。日清戦争を描いた漫画ですが、明治期にアイヌが直面した苦境も描かれています。アイヌを直接描いているわけではありませんが、物語のそこここにアイヌが顔を出します。
安彦良和は歴史漫画の作家として知られていますが、北海道の遠軽の出身です。アイヌが搾取や敵視されていた状況を描き、反軍国主義を訴える見事な作品になっています。
漫画の主人公の加納周助は、自由民権運動で政府と対立し、北海道の監獄に送られた身ですが、1889年に脱走に成功し、ニシテという名のアイヌに助けられて、アイヌの姿になって身を隠します。加納はそのときニシテの同胞や一族の置かれた窮状に接します。
物語はその後、展開していき、植民地獲得を狙う日本や、この時代の東アジアの激動する社会の物語が語られていきます。
手塚治虫の『シュマリ』という作品もあります。手塚の名作の多くがそうであるように、『シュマリ』も複数の物語を読みとれるタイプの漫画です。北海道を舞台にした血沸き肉躍る冒険物語としても読めますし、壮大な歴史を背景に描かれた悲恋の物語としても読めます。一度読んだら忘れられない日本人やアイヌのキャラクターが登場します。
主人公のシュマリ(アイヌ語で「狐」の意)は、社会との縁をたちきった冒険家の男です。アメリカの西部劇に出てくる正義のヒーローを思わせます。アメリカの文化に魅了されていた手塚治虫は、西部劇における物語の叙述を絶賛していました。だから日本を舞台にして、それを再現しようとしたのだと思います。
アイヌが関係しない漫画では勝又進や比嘉慂の作品が好きです。どちらとも翻訳家のミヤコ・スロコンブによって見事なフランス語になって刊行されています。あと、三宅乱丈も大好きですね。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190309-00000007-courrier-soci

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