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地球紀行HAKUSAN:/最終回 地球と人間との相関関係=乾靖 /北陸

2010-03-27 | 日記
(毎日新聞 2010年3月26日 地方版)
 ◇環境保護は自然への恩返し
 「地球紀行HAKUSAN」では、白山の自然環境がいかに素晴らしく、かけがえのないものかということについて、私がトレッキングを続けている北欧ラップランドの自然環境との対比により話を進めてきた。第5話ではラップランドの先住民サーメのキャンプに飛び込み垣間見た生活ぶり、第6話ではスウェーデンの代表的童話「ニルスのふしぎな旅」から読み取れる人間の自然破壊と再生行為について、第7話では自然が人間に与えてくれる恵み、第8話では太陽が人間の生活パターンに与える影響力について--など地球的な視点でとらえた白山と私たちの関係について紹介してきた。
 私たちは近代文明社会の中で、自然から得られるものは対価も払わず、都合よく制御し摘み取ってきた。登山という行為一つにしても、未踏峰に登り、山を征服したと喜んできた。
 しかし今、これだけでは満足できない何かに心が引っ掛かっている人々も多いことだろう。その原因は、自然から人間へという一方向の流れによる閉塞(へいそく)的な感覚からくるものだろう。
 人間は人間を支配できるが、自然を支配することはできない。私たちは自然の中の一構成員であると考えるならば、そこに循環が成り立たなければ持続しない。つまり自然の中から多くの恵みや感動を受けた私たちは、常に自然への恩返しという行動をすることが必要だと思う。この考え方は、世界各地の先住民族の自然崇拝の考え方の中に息づき、何千年も継承されてきている。
 白山では、登山者が白山に対してできることとして、早い時期からさまざまな取り組みがなされてきた。30年くらい前まで、白山では登山者によるゴミが問題となっていた。ゴミ箱周辺にはゴミがあふれ、登山道脇にも平気で投棄されていた。そこで地元の方々が先頭に立って、全国に先駆けて、登山口などからゴミ箱を撤去し、「ゴミ持ち帰り運動」を展開した。時期を同じくして、地元学生らを中心に「白山サブレンジャー」と称して、登山者が集中する夏休みの期間に、登山道のゴミ拾いやトイレ清掃活動を続けてきた。
 近年では、行政機関と民間団体が協働して国立公園の管理を行える仕組みづくりを目指す団体として、「環白山保護利用管理協会」が設立され、これまでの取り組みを継承し活動の環を広げようとしている。例えば、多くの登山者や建設資材によって入り込んだ外来植物の除去作業を、一般参加者を募って実施したり、水のない尾根上の避難小屋に雨どいとタンクを取り付けて避難小屋の清掃用水を確保し、トイレを利用した登山者自身に清掃協力を呼びかけたりしている。
 これを受益者負担という言葉で耳にすることもあるが、この活動の根底にあるものは、前述した人間は自然の一構成員であるという精神に基づくものである。
 今後も同協会が、思いを寄せる多くの人々の窓口となり、さまざまな保全活動が広がっていくことが期待されている。
 地球環境の変動は自然が人間社会に教えてくれたことで、私たちはこれからも継続して行動を起こすことで、これに応えていかなければならないのではないだろうか。(連載は今回で終了します。ご愛読ありがとうございました)
http://mainichi.jp/area/toyama/hakusan/news/20100326ddlk17070681000c.html

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