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西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

井上ひさし著『一週間』(新潮社)を読む

2010-09-22 | 生活描写と読書・観劇等の文化
井上ひさしさんの最後の長編小説『一週間』(新潮社)を一週間もかけずに2日で読んだ。まあ、精読ではなく「筋読み」ではあるが・・・。そのうちじっくり一週間かけて読んでみたい。

物語は、戦後のシベリア抑留の旧関東軍の「一兵卒」(その経歴―山形中学出身、東京外語、京都帝大経済学部(河上 肇に傾倒)出身―から、戦前の日本における「ボルシェビキ」運動を体験、スパイMの手引きで逮捕、転向、満洲へ)が、ソ連の極東赤軍(及びソ連そのもの)を向こうに回して、たまたま手に入った「レーニンの手紙」をネタに奮闘する話である。その「始まりから(一応の)終わり」までの1週間を描いている。

当時のソ連や旧関東軍(将校団)の理不尽―国際法無視、無知―を分かりやすく具体的に描いているし、現在も問題になっているチェチェン(民族独立)のことも「レーニンの手紙」に絡めて描いている。当時のソ連の極東赤軍、日本の旧関東軍の様子も分かって面白い。極東赤軍の女性陣、旧関東軍の将校団と兵士達の違いも分かる。

この小説が描き問題にしているのは決して過去の問題ではないのだ。自衛隊では国際法をきちんと教えているのだろうか。過去、東北弁で書いた長編『吉里吉里人』で「地方独立」を描いた井上さんの精神は最後まで底流に流れていたのだな、と思った。

もし、私が父母(父は旧関東軍主計将校)に付いて行ったら、一歩「間違える」と父も抑留の運命となり、今の私はなかったかもしれない。この本の情報から推測すると、戦後、遅くも1946年(昭和21年)末までに父母と妹は満洲から帰還していると確信した。(当時、私は金沢にいたが4,5歳で正確な「帰還日」不明)

1週間(2日でも良い)お暇な方には一読をお勧めする。

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