東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

砂子(すなご)蒔き

2018-05-26 14:21:11 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 人形の彩色の進行中。作っている全ての人形とは限らず、一部なんですが、彩色した上に砂子(砂子)を蒔きます。ひとりでやるので結構慌てて行います。

というのも、乾いた面にただ蒔いても定着しませんから、つなぎを塗ってそれが乾かないうちに急いで蒔くので、筆でつなぎを塗って急いで粉筒に持ち替えて蒔くという秒刻みのスリル度がありますね。仮にニスとかラッカーとか粘りがあり乾きに時間のかかるものであれば落ち着いて蒔くことができるのですが、大方の昔の今戸焼の土人形では少数の例外を覗いてはニスは塗らない代わりに膠液を上塗りして照りを出したり、マットな地にも砂子を蒔いているので、昔の人はいったいどうやっていたのだろうか、知りたくてたまりません。人形の素材自体が素焼きでその上に胡粉で地塗りしているものなので絵具でもつなぎでも吸収するのが早いのです。繫ぎを塗ってそれが水溜まりのようにとどまっていてくれるうちに砂子を蒔かないと定着しません。

 以前はまがい金箔(真鍮箔)の「切りまわし」という切りくず片を買ってきて「箔筒」という太い竹筒の底にメッシュの張ってあるものへ入れ「たたき筆」でごりごりさせてメッシュを通した細かい箔片を貯めておいて使っていたのですが修行不足のためかふわふわしすぎて目的部分に命中させにくいと感じていました。古い産地の砂子には切り回で砂子をやっているところもあるのかもしれませんが、今戸の土人形の場合もう少し厚みのある砂子ではないかと考え、いろいろ探していてみつかったのが「梨地粉」と呼ばれる真鍮粉です。画像に映っているのが梨地粉です。知らないだけなのかわかりませんが、売っているところがわからない、、というか日本画材屋さんでは見たことがないです。また画像に映っている「粉筒」は漆屋さんで求めたものです。(漆食器で使う砂子は本金だけで真鍮は使わないそうです。)

 昔の土人形に使われている砂子は時代を経て酸化して茶色っぽく残っていることが多いので真鍮粉です。(御所人形とか嵯峨人形をはじめとする当時のお金持ち向けの人形には本金が使われているのもあると思いますが、、。)

 「犬」と「娘河童」に蒔いているところ。自画採り棒でもあればもっとよい画像が撮れるのだろうと思いますが、ないので臨場感のあるところを撮れません。

 ちなみに買ってプールしている真鍮粉はそのまま使えばキラキラしています。昔の人形たちは作りたてのものはキラキラピカピカしていて、それが「ハレ」的なありがたさ、高級感といった付加価値を持たせていたのだと思います。伝世の古い土人形は時間を経て今でこそピカピカがなくなって落ち着いた感じになっているのでしょう。

 自分で使う場合、出来立てであればピカピカが自然なことではあり、そのまま蒔いていたのですが、ちょっとけばけばしすぎると感じることがあって、使う前に燻してピカピカのトーンを意図的に落として蒔いています。画像の砂子が黒っぽく映っているのはそのためです。