カルテ番号 と・8（1）
遠山史郎はまた勤め先を辞めた。
これで５社になる。
卒業してすぐ就職した会社に３年いたが、その後は１年も持たない。
原因は会社の狡いところが許せないからだ。
上司に会社の対応の間違いを追求し、衝突し、変わらない体質に嫌気がさす。
そして、辞表をたたきつける。
いつも、同じパターンだ。
子供時分に父親から言われた。
「先祖は遠山金四郎という名奉行で、庶民の味方だった。
正義を重んじた立派な人だった。
だから、お前の名前もあやかって史郎と名付けたのだ」
今になると、祖先の話は疑問が多い。
多分、違うだろうと思っている。
だが、子供心に正義感強い男になる、と思ったのは事実だ。
そして、そのようにして生きてきた。
中学生の頃から、学校も社会も正義から外れた事が多いと気付く。
その度に、相手が教師でも大人でも指摘するが、聞き入れてはくれない。
やがて、衝突し、疎まられるようになった。
あいつはメンドウなヤツだ、と周りから言われるようになった。
それが解らない。
間違っているのは相手なのだ。
自分は正しい事を言っている。
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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