久しぶりに歴史小説を読みました。前々から気になっていた、伊東潤氏の『城を噛ませた男』が文庫化したので、手に取ってみました。
表題を含め、戦国を舞台にした短篇5作品はどれも大変面白い題材で、登場人物が生き生きと表現されていました。下剋上で、生きるか死ぬか、そして、一つの行動が吉と出るか凶と出るかの状況下で、自分の持てる力を存分に発揮する姿は、それが死につながろうとも美しいものです。
私は、『鯨のくる城』に描かれていた、小田原・北条の水軍の一派である鯨漁師の軍団が素敵だと思いました。数で圧倒的優位に立つ豊臣水軍に対し、手も足も出ない北条方の中にあって、この鯨漁師が一泡喰らわしてくれます。知恵を磨き、鯨を味方に付けての大胆な行動は、読み手の胸をスッキリしてくれます。
2012年『国を蹴った男』で第34回吉川英治文学新人賞を、そして、昨年には『巨鯨の海』で第4回山田風太郎賞を受賞した伊東潤氏の、他の作品を読みましょう!
『城を噛ませた男』(伊東潤著、光文社文庫、本体価格660円)