あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

風は山から吹いている

2024-07-29 15:39:40 | 

 高校時代、インターハイに出場した筑波岳は大学ではスポーツクライミングを避け、ひょんなきっかけで登山部に入ることになりました。部長の梓川穂高と二人だけの登山部は、岳の登山手習いの部活動となります。鍋割山の山小屋でお昼ご飯を食べていると、スマホに高校時代のコーチ宝田謙介から着信がありましたが、無言のままでした。翌朝、宝田謙介が中央アルプスの宝剣岳で滑落死したという知らせを受け、事故か自殺なのか岳は真相を知りたいと思いました。それは、クライミング競技を大学ではしないきっかけの宝田コーチとの最後の会話があったからです。その後は、ミステリーのように物語は進みます。

 登山初心者の岳は山に登ることで、素敵な気持ちを抱きます。「険しい道を何時間もかけて登って、日常から離れることで自分にこびりついている余計なものを引きはがしていくのが登山だ。」「山は(中略)人を洗う場所なのだ」

 宝田コーチも山でさまざまなモヤモヤが洗われて死出の旅へと向かったのでしょう。

『風は山から吹いている』(額賀澪著、二見文庫、本体価格780円、税込価格858円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする