あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

ゆびさきの宇宙 福島智・盲ろうを生きて

2022-11-14 16:14:30 | 

 森林読書会という名の読書会で今月末に取り上げる本が本書。私は2009年に単行本で読みましたが、再読しました。この本を課題図書にすることにしてから、福島智の半生を描いた『桜色の風が吹く』の上映を知り、その後、著者の生井久美子さんから映画についての情報のお電話を頂戴し、読書会にも参加してもらえることになりました。選書してからすごいスピード感でご縁のつながりが導かれています。

 著者の生井さんは朝日新聞の記者として、2005年に障害者自立支援法案について福島智先生にインタビューしてから、福島先生の半生を書きました。9歳で全盲、18歳で盲ろうとなり、暗黒かつ無音の宇宙で苦悩するも、「自分には『使命』があると考えて『生きる』ことにする」と決断し、「この苦渋の日々が俺の人生の中で何か意義がある時間であり、俺の未来を光らせるための土台として、神があえて与えたもうものであること」を信じました。多くの人の支援を受けて大学入学から大学研究員になり、日本のヘレン・ケラーの存在「福島智」になり、盲ろう者の支援、また、障害学の地平を切り開いていきました。

 母親が開発した指点字で他者と会話ができるようになった中で、人間として一番重要な要素を他人との「コミュニケーション」と位置づけ、姿も声も知り得ない相手の「魂の接触」「その人の存在との接触」を大切であると述べています。他者の存在を分け隔てなく認め、生きる者同士の交流を輝くものにするという人間観は本当に素晴らしい。われわれ健常者からは伺い知れない世界を提示してくれます。

 読書会までに映画も観に行きたいですね。

『ゆびさきの宇宙 福島智・盲ろうを生きて』(生井久美子著、岩波現代文庫、本体価格1,100円、税込価格1,210円)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする