主人公の神野キリは名前の通り、理容専門学校を卒業し、理容師になりました。その志望動機は、父と別れ、キリも捨てた、繁昌していた理容店を営む理容師の母への復讐、仕事で見返すことでした。卒業後に修行として勤めたバーバーチーは母が独立前に働いていた店。そこで一人前への道を歩むキリは理容師として、1人の仕事人としての気概を植えつけられます。
「自分の仕事に頭を下げる」「誇りを持っている仕事」「自分を知れ!」「お客さまが本来持っている輝きに磨きをかける」「いつも同じ気持ち、同じ仕事振りを心がける」
などを理解し、行動へ移すことで、母の力量を超える階段を昇っていきます。そして、理容師としての母の思いを知り、さらに大きく飛躍するキリの成長は人間の器の大きさを変えていきます。
『キリの理容室』(上野歩著、講談社文庫、本体価格770円、税込価格847円)