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世界史とつなげて学べ 超日本史

2019-03-02 07:39:05 | 

 新聞を読んでも、世界の動静は自国だけでなく、自国の置かれた環境に左右されているのは納得できます。自国の歴史もおいても、当時の政権担当者の決断は同様の判断をしているはずです。しかしながら、学生時代の学んだ歴史は、受験用の学びであり、大人になってからの教養としての位置付けはありませんでした。本書を読んで、まさに知りたいことが書かれていました。

 例えば、戦国時代。大名たちがスペインやポルトガルからやって来たキリスト教の宣教師に布教を許した理由は、火縄銃、鉄砲の火薬の原料の硝石を輸入したかったから。逆に、宣教師たちの思惑は、キリスト教を布教することによって、日本を自国の植民地にすることであり、日本人を海外への売りさばく奴隷にすることでした。このことを知るだけでも、豊臣秀吉の伴天連追放令、徳川政権の鎖国の手腕は素晴らしいものでしょう。また、秀吉が朝鮮出兵したことは、彼の主君であった織田信長に宣教師が中国へ攻め込むことを提案していたらしい。中国を植民地にするために、日本の軍備を活用するという戦略だったことを、宣教師たちが自国への報告に書いていました。

 それでは、このようなことを我々は知らないのか?戦後の歴史教育での、キリシタン研究を担ったのが、「ラテン語の文献を読めるカトリック系の大学の研究者」であり、「彼ら自身の多くがクリスチャンであり、(中略)宣教師たちの苦難と殉教を称賛し、これを弾圧した秀吉や江戸幕府の圧政を糾弾する、という価値観に従って歴史を記述してきた」からでした。私自身も、そう学んできたし、記憶に留めています。歴史は片寄った価値観から学ぶと恐ろしいことになり、事実を事実のまま提示し、判断できる自分を育てないといけません。そのきっかけに、本書はなるでしょう。

『世界史とつなげて学べ 超日本史  日本人を覚醒させる教科書が教えない歴史』(茂木誠著、KADOKAWA、本体価格1,600円)

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