事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

極私的朝ドラ史PART30 ごちそうさん

2015-12-17 | テレビ番組

PART29「あまちゃん」はこちら

つづいては「ごちそうさん」。脚本は「JIN-仁-」「天皇の料理番」(TBS)などで、“大河ドラマよりも大河ドラマらしい”ドラマを構築し、実際に2017年の大河「おんな城主 直虎」(柴咲コウ主演)を書くことが決定している森下佳子。

学校事務職員としては、伝説の学校事務職員を描いた「お前の諭吉が泣いている」(テレ朝 東山紀之主演)でおなじみかも。

彼女の脚本は、とにかく泣かせる。この「ごちそうさん」でもその本領はいかんなく発揮された。その泣かせ方にはたしなみがあり、この朝ドラでも、小姑役のキムラ緑子を、単なる悪役でも“のちに改心して主人公を全面的に応援する”存在にもしなかったあたりがうまい。あのキムラがお茶の間に爆発的に受け入れられたのには、それにしても驚きましたけれども。

主演は杏と東出昌大のコンビ。現在ではトップスター(&夫婦)となっているこのふたり。でも、当時は「妖怪人間ベム」のベラと、「桐島、部活やめるってよ」の美男にしかすぎなかったので、このふたりはまさしく朝ドラで大きくなったのだ……って前から物理的に大きいですけど。

わたしはしかし、食べることが生きることだとする女の一代記に、はたして杏が適役だったかは微妙だと思った。あきれるほど多くの不幸が訪れる主人公には、やはり圧倒的な愛嬌がなければならないはずであり、杏の演技にはまだ硬さが残っていたように思う。

でも視聴率的には圧勝。「あまちゃん」でウイングを広げた視聴者を、王道のドラマでつなぎとめた功績はやはりすごい。

ちょいとダメダメな親父をやらせたら、もう近藤正臣(今期の役もいいですなあ)にかなう役者はいなくなったんだなと思わせてもくれた。東出の妹役で出ていた女優が、なんか雰囲気あるなあと思ったら、その高畑充希が来年の朝ドラの主演とか。なるほどなるほど。

PART31「花子とアン」につづく

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「帝都衛星軌道」 島田荘司著 講談社

2015-12-16 | ミステリ


三部からなる構成。山手線上を、トランシーバーを使ってある女性をコントロールする誘拐犯。その女性が消えるまでが第一部。第二部はひとりのホームレスの死と、その男がどのようにしてこすく金を稼いでいたかの追憶。第一部との関連はまだわからない。第三部にいたって、消えた女性がその後どうなったかのお話に見えて……

「火刑都市」などに連なる島田荘司の都市小説。なぜ誘拐犯は女性を山手線に乗せたか、そしてどのようにして無線連絡をしたかがミステリのキモ。

東京の地下鉄はなぜあんなに複雑怪奇な路線となっているか、がこの小説を書く動機だったのだろう。そう考えれば、第二部のラストで、ホームレスがある場所に向かうことと、無線トリックが相関しているのがわかる。

まあ、それにしたって大風呂敷の広げ過ぎだとは思いますが(笑)

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「このミステリーがすごい!2016年版」 宝島社

2015-12-15 | ミステリ

「このミステリーがすごい!2016年版」ついに発売。ベストテンを眺めて……今年も読んでません(笑)邦洋ともに10位までまったく読んでないってのは横着よね。予想できたので発売されてから一週間も買ってなかったのも初めて。

もっとも、今年のランキングは、去年とちがって(ごひいき作家が多いこともあって)とても納得できるものではあったのでめでたい。貧乏だからこれから図書館で手にとることにしましょうか。にしてもディーヴァーと米澤穂信はいつになったら読めるものだか。

もっとも、11位より下だとけっこう読んでます。

11位 「鳩の撃退法」佐藤正午

18位 「新しい十五匹のネズミのフライ」島田荘司

19位 「キャプテンサンダーボルト」阿部和重/伊坂幸太郎

ランク外

太宰治の辞書」北村薫

「陽気なギャングは三つ数えろ」伊坂幸太郎

機龍警察 火宅」月村了衛

とかね。「鳩の撃退法」のランクインは素直にうれしい。これまで入ってこなかったほうが不思議。「身の上話」はミステリの傑作だったのに。まあ、これで気合い入れて量産しそうにないあたりが佐藤の本領でしょうが。

にしても、このミスももう28年目か。あの薄いブックレットから、28年もずっとつきあっているわたしも偉い。これで新作ミステリをバリバリ買えるぐらいにお金持ちになっていればもっと偉いんでしょうが(T_T)

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極私的朝ドラ史PART29 あまちゃん

2015-12-14 | テレビ番組

PART28「梅ちゃん先生」はこちら

そして2013年前期はいよいよ「あまちゃん」だ。わたしは朝ドラに宮藤官九郎を起用するというNHKの決断に、立派だけれども視聴率的には惨敗するだろうと予想していた。

だってよく考えてくださいよ。開始前に聞こえてきたのは

・舞台は岩手県

・ローカルアイドルのお話

後半はAKBのような展開になる

……うちで朝ドラをもっとも熱心に見ている老父にうけるはずは絶対にないし(実際に、わけがわからん!と怒ってました)、宮藤の手練手管を朝ドラ視聴者層が受け容れるはずはないと。

ところが結果的にはご存知のような次第。視聴率だけでなく、一大ブームをまきおこすことになった。

いったいどうしてなんだろう。もちろん、収録後に木野花が述懐していたように「(宮藤の)脚本が届くたびにみんなで笑い合っていた」ぐらいの高レベルの脚本によることは確かだし、ヒロインの能年玲奈と橋本愛が魅力的だったことも影響しただろう。

皆川猿時、伊勢志摩吹越満など、あのNHKの、あの朝ドラに出るタイプでは絶対になかった役者たちもいい味を出していた(大河ドラマ「新選組!」における大倉孝二と八嶋智人のツーショット以来ですかね)。

しかしそれと同時に、15分間という長さが、実は宮藤官九郎にぴったりだったといえないだろうか。

宮藤の本質は、実はかなり重い。語り口が軽い(かつて「吾輩は主婦である」で斉藤由貴のコメディセンスを爆発させたように)ものだから見過ごされがちだけれど、陰鬱さがどうしてもにじみ出てくる。その陰鬱さこそが宮藤脚本作品が低視聴率に終わる最大の要素ではなかったか。

もちろん宮藤も、日本で最も保守的であろう朝ドラの視聴者を意識して時制の往復も控えたこともあっただろうが、話が暗くなる寸前に終わってしまう15分という枠こそが成功要因と読みました。

PART30「ごちそうさん」につづく

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「昭和プロ野球徹底観戦記」 山口瞳著 河出書房新社

2015-12-14 | スポーツ

報知新聞(断じて、スポーツ報知ではなく)などに寄せられた山口の野球エッセイ集。

時代的に巨人V9がはじまるちょっと前からしばらくの間、ということなので、わたしがプロ野球にのめりこむ直前ということになる。だからとても興味深い。

長池(阪急)、城之内(巨人)、三沢(中日)などがまだ若いころ……
山口の好みが、三原の魔術的采配にあることは一貫していて、ああ野球がほんとうに好きな人なんだなあと理解できる。

当時の順位予想も興味深くて、まさかひとつの球団が連続して9回も日本一になるなど、そのころ誰も想像もしていなかったあたり、なるほどなあとうなる。おそるべし当時の巨人。

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現代にっぽん新宗教百科PART2

2015-12-13 | 社会・経済

Ingrid Fujiko Hemming - La Campanella

PART1はこちら

のっけから信者の方々に怒られそうだが、数百の教団が紹介してあるこの大著を読んで新宗教の典型が浮かび上がる(一週間ぐらいかかりました。前にもご紹介したように、わたしの妻の従姉妹も実は教祖で、某有名文化人も信徒なんだけどこの本にはその宗教は載っていませんでした。残念)。

1.ある人物に壮絶な不幸が訪れる

2.不幸の果てに、その人物が神がかりの状態になる

3.神の声が聞こえ、あるいは何らかの方法によって病気を治すことができるようになる

4.噂が噂を呼び、支持者が次第に集まる

5.人物が教祖に祭り上げられる

6.教義が研究され、書物にまとめられる

7.教祖・幹部が不祥事を起こす。あるいは教祖が亡くなる

8.分派がはじまる(特に教祖の親族の間で壮絶な争いが起こる)

9.5に戻る

……というサイクル。あー怒らないでー。特に霊○会、創○学会、大○教などの歴史は壮絶です(巻末に戦後の宗教をめぐる事件史がまとめてあってこれがまたすごい)。

確かに新宗教は怖いし、わたしもあまり近づきたい対象ではない。しかし組織としてのありようが、いかにも日本らしくて興味深かったのは確かだ。金の流れ、世襲、罵倒……まさしく、政治そのものじゃないですか。

それに、職業や貧富、性別、くわえて人種を超えて、どんなことがあっても同じ神、同じ仏を信じているというのは究極の同志といえるのだろう。既存の宗教が失っているものを補完しているのは確かなのだし。

わたしは死ぬまで宗教に帰依することはないだろうが、そのことだけは、ちょっとうらやましいと思っているのでした。

本日の一曲は同じ「ラ・カンパネラ」でもここまで違うかフジコ・ヘミング版。

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「現代にっぽん新宗教百科」 島田裕巳著 柏書房

2015-12-12 | 社会・経済

ラ・カンパネラ ~パガニーニによる超絶技巧練習曲集 第3番 / 長富彩

日曜の朝、二人連れの女性が訪れてくる。「読んでくださいね」美麗なパンフレットを置いていく。「ものみの塔」と題されている。

駅前をヘルメットをかぶった白人の若者が自転車で疾走していく。例外なく紺色のスーツを着ている。モルモン教の布教に彼らは熱心だ。

ここ酒田にも幸福の科学、統一教会、立正佼成会、妙智會、創価学会、真光などの会館が豪奢に建っており、よくわからないけれどもそれなりの活動をしているようだ。

いったい人はどんな理由で宗教に走るのだろう。そしてわたしはなぜ新宗教に恐怖をおぼえるのだろう。

きわめつけはオウム真理教だった。これは確かだ。あの事件によってわたしたちの心に新宗教(いまは新興宗教とは呼ばないみたい)への恐怖心が決定的に宿った。

それまでにも、創価学会の折伏やエホバの証人による輸血拒否など、「わからないから怖い」「しつこいから怖い」という事例は数多あった。その恐怖をあの地下鉄サリン事件は象徴している。いまのお若い方など、宗教者が何を思ってか毒ガスを首都の地下鉄でふりまき、死者13人、負傷者6300人もの被害があったことなど信じられないのではないか。

それでも、新宗教はいまでも隆盛を誇っている。それはいったいなぜなのか、一端でも知りたくてこの本を熟読。宗教の本を読んでいるというだけで妻はびびっていましたが。

著者は島田裕巳。オウム真理教を擁護した過去のせいで大学を追われたあの人だ。宗教がらみのときは「朝まで生テレビ」(テレビ朝日)によく出演していた(わたし、麻原彰晃が出演した回も見ています)。

百科という形式をとっていることもあって、とにかく日本の新宗教を(信者数百名のも含めて)網羅してあり、教義の是非には立ち入っていない。もちろん信者が読めば激怒する部分もあるだろうが。以下次号

本日の一曲は、人間の指はここまで動くという衝撃の例。長富彩の「ラ・カンパネラ」



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「竹に紅虎」 下川博著 講談社

2015-12-11 | 本と雑誌

脚本家から作家に転身した下川博の「弩」につづく歴史もの。前作が武器としてのクロスボウのお話に見えて、実は柿渋などの経済の物語だったように、今作は焼き物づくりの変遷に姿を借りた、夫婦とはなにかという物語だった。

なにしろポルノ小説なのかと思うくらいに濡れ場が多い。主人公の昇蔵と妻の香丹はひたすらセックスばかりしているのだ。まるでそれが会話であるかのように。

わたしは焼き物の世界に昏いので、有田焼と伊万里焼と柿右衛門がどんなものなのかさっぱり。だから秀吉の朝鮮出兵を機に、焼き物職人が日本にやってきて、有田で磁器に適した土を見つけ……という展開はお勉強になった。

香丹は色絵師として景徳鎮に負けない作品をつくりあげようとする激しい女。亭主の昇蔵は、この女のために自分は根本から変えられると覚悟する。

この、昇蔵がいい感じなのだ。商家の放蕩息子だった彼が、語学の才があったために、鄭成功(歌舞伎の「国性爺合戦」の人ね)の清とのたたかいに加わり、成功が敗れたために帰国できなくなり、イスラム世界にまで流れていく。なんかもうえらいことになってます。

後半はユダヤ教、キリスト教、イスラム教の教義をそれぞれどうとらえるか、読者に挑戦するような気配すらある。このご時世だからこそ下川はこの部分を(バランスはくずれるにしろ)書きたかったのだろう。遠い異国で、彼は妻の傑出した作品に出合う。芸術の普遍性と、脆い心の対比。

もうひとつのテーマはおそらく血の混交だ。香丹たち焼き物職人たちは、出自が朝鮮であろうが日本であろうが問題にしていない。鄭成功が中国人と日本人のあいだにできた子であることは、そのテーマに沿っている。

そして世界の血の混交は必然であることを静かに語って長大な物語は終わる。セックスを前面に出すことは、だから必然だったとここに至ってようやく了解。好きですけどね、ポルノ小説も。

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岡田さんの復帰を言祝ぐ。

2015-12-09 | ニュース

YMO - Rydeen (Budokan 1980)

まさかこんな大騒ぎになるとは誰も予想していなかったはず。でも、SNSやYouTubeの出現と、(たとえば)Yahoo!のニュースにセレクトされることで世の中の趨勢が決まっていく時代になったことが背景にあるんでしょう。

おそらくこの“事件”について語ることはおおいに下品なのだろうけれど、なにしろ地元の人間だからちょっとだけ。

気象予報士、岡田みはるさんをうちのオヤジは大好き。

「ん。この子はいい。なにしろガタイがいい」

実際にはものすごくディープな庄内弁で語っております(笑)。にしたって女性を労働力で考えているような発言はどうなのお父さん。

実はわたしも好きです。清潔感があるし、なにしろ彼女が伝えると予報に信憑性がある(^_^;)

残念なことに(ほんとうに残念だと思っている)、いつもあの時間はNHKを見ているのに、その日は見逃してたんですよね。

そんな彼女があんなことになった理由にはあまり興味がない。問題は

・お堅いNHKにおける出来事だった

・正確さを求められる天気予報における出来事だった

しかし、テレビとはそもそもそういうものだったはず。上っ面なコメントばかりかますどこかのアナウンサーより、はるかに好ましい。

彼女にとってラッキーだったのは、脇に汗がにじもうが、つけまつげが取れようが、しれっとして笑っている先輩がNHKにいたこと。岡田さんの出現によって、本番中にいきなり泣くことも可になったとも言える。まあ、二番煎じのそしりは免れないだろうが。

今日の予報も岡田さんはきっちり終えた。この騒ぎがほんとうに教えてくれたのは、プロとして画面にいる彼ら彼女らも、実は精神的にかなりきつい状況にあるということだ。たまに破綻もしてくれなくては、官報NHKにチャンネルを合わせるのは昔気質の人たちだけになってしまう。

あ、しまった。あの会長がいるうちはNHKを擁護するのはやめようと思っていたのに……

本日の一曲は、チャリ通に最適、YMO「ライディーン」武道館ライブ。アッコちゃんも元気です。

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明細書を見ろ!2015年12月期末勤勉手当号PART2「マイナンバーその後」

2015-12-08 | 明細書を見ろ!(事務だより)

Apocalypse Now- Ride of the Valkyries

PART1「やっぱり今年は差額が出ないのか」はこちら

年末調整号「年末調整とマイナンバー」はこちら

さすがにもうお手元に届いたことと思います。どうやら県も収集の方針を固めたようで、まもなく県内各地で説明会を開催する予定。ネガティブな情報ばかりこの制度に関しては入ってきますが、民間は(禁止されていたはずの)通知カードのコピーを集めるなど、やみくもに突っ走っているみたい。

この制度の目的が、国民の行政手続きの利便性を考えて、でなんか全然なくて、とにかく課税のためなのは、まあ仕方のないところでしょう。

しかし進め方がいかにも拙速で、これからも混乱必至。よけいなお世話ですが、個人カードの発行を強制された形の市町村は怒っているのではと推測します。

もっと怒っているのは郵便局員でしょうか。およそ11月末までに全世帯に送付するなどありえない状況下、高市総務相(この人はいつも強気)はギリギリまでだいじょうぶだと強弁していました。

誤配がニュースになっていますけれども、この程度で済んだとは、日本の郵便局はやはり優秀なんだなとむしろ考えます。このごり押しは、なんらかのテストの意味もあったのではないかと邪推すら。

さて、ご自宅の冷蔵庫にマグネットでとめている(そんな人はいないとは思いますが)マイナンバー通知カード、くれぐれもなくさないでくださいね。まもなく、事務職員が県のシステムにナンバーを入力することになると思うので。

特に、別居している扶養親族がいる場合、「正月にそれ持って来い。」と言っておいてもらえると助かるかも。

本日の一曲は、最低にして最高の戦争映画「地獄の黙示録」から、かの有名な「ワルキューレの騎行」。

2015年12月号「正しいマイナンバーの集め方」につづく

コメント (2)
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