現在はどうなっているか知らないけれど(今年も採用自体がないみたいだし)、山形県の市町村立小中学校事務職員の採用試験には、謎々かパズルのような問題が含まれていた気がする。この試験を突破してきているわけだから、我々にはパズラーとしての素養があるのかもしれない。
「パズラー」はミステリの世界では「本格」と呼ばれる分野を指しています。意味なく殺人現場が密室であったり、犯行時刻に容疑者が他所で思いっきり派手な行動をとっていたりする、あの愛すべきジャンルのこと。
日本においては、横溝正史や鮎川哲也に代表される本格派は「人間が描かれていない」という至極真っ当であるが故になんともつまらない理屈で松本清張をトップにした社会派に殲滅させられた経緯があるのですが(外国ではとっくの昔に消え去っていた)、この絶滅したパズラーを「新本格」として復活させ、現在の隆盛に導いたのは、善くも悪しくも全てこの「占星術殺人事件」によるものです。これはもう文句の出ようがない。
とにかくこの作品には
・奇抜なトリック(ちょっと凄すぎて説明できない)
・魅力的な名探偵(御手洗潔⇒みたらいきよし。すんげぇ生意気)
・説得力のない動機(もう忘れた)
……の新本格三点セット(勝手に名付けた。あたっているはずだ)が既に揃っており、特にこのトリックときたらとてつもありません。
現在はスタンスを変えている島田ですが(これはこれで面白い。徹底した日本人憎悪を基調にしたエッセイも必読)、このデビュー作と「異邦の騎士」「北の夕鶴2/3の殺人」の三作だけは、絶対に読んで損はしません。さあなぞなぞに挑戦だっ!