大河ドラマ好きには、特に“あの大河”を見ていた人にはたまらない映画です。
・岡田以蔵(佐藤健)はやっぱり人斬りをやっていて
・後藤象二郎(青木崇高)は喧嘩っ早い荒くれ者になっていて
・高杉晋作(伊勢谷裕介)と吉田東洋(田中泯)は幕府のスパイ
・暗殺者佐々木只三郎(中村達也)は刀鍛冶やってるし
・隠れキリシタンの芸妓(蒼井優)は毒を扱う医者になってる
となれば当然あの人も出てこなければならないわけで……そうきたかあ。
明治ものは当たらないことになっている。幕末大河の視聴率は低いのが通例だし。でもよく考えると戦国に負けないオールスターを用意できるはず。この映画でも
・いきなり川路利良(日本警察の父でございますよ)が剣心のもとを訪れ
・大久保利通のところへ来いと命じ
・新選組で最も強く、確かにのちに警察官になった齋藤一が斬りまくり
・事件の背景にあったのが徳川慶喜の大阪城脱出(笑)
面白い時代ですよね。もっと司馬遼太郎や山田風太郎の明治ものを映像化してほしいな。
この映画の特徴はなんといってもアクション。香港のワイヤーアクションを微妙に採りいれ、しかも剣と同時に体技で二段三段と連続して相手を撃つ。役者たちはたまらなかったろう。でも佐藤健と神木隆之介をはじめとしてみんなすばらしい動きだった。
最年長の田中泯にしてからがすごいのだ。まあ、あの人は舞踏の人であると同時に「たそがれ清兵衛」で真田広之ととんでもない斬り合いを演じて見せた人だからなあ。
あの大河では、やれ画面が汚いだのと難癖をつけられ、そのせいでもないだろうがNHKを辞めた大友啓史監督は、開き直ってコーンスターチぶちまけまくり。おれは撮りたいように撮るんだという喜びにあふれている。
あまりにアクションに淫してしまい、多少の動きでは退屈してしまうあたりは御愛敬。そんなものは最初から気にもしていないのだろう。
それにしても大ヒット。やたらに前の方の席で見るはめに。でもいいんだ、視界いっぱいに武井咲のうなじが……わたくし、これをひとりIMAX状態と呼んでおります(バカ)。
ワーナーとしては自社製作で唯一のヒット作だし、ジャニーズをひとりも使わずに興行的成功を得たことで自信を深めたはず。こりゃ、“最期”になるはずないな。
だいたい、大久保利通が宮沢和史で刀鍛冶が中村達也。これってTHE BOOMとブランキー・ジェット・シティの共演じゃないか。狂いっぷりもたいしたものだ。
「伝説の最期編」につづく。