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辛辣なやりとりを重ねながら、それでも桑野と夏美は関係を深めていく。なにしろ、桑野は毎回ちがった症状をかかえて夏美に診断してもらうのである(笑)。
偏屈で、空気が読めず、皮肉な口調でしか対応できないこの男が、しかし結局は誰からも愛されるようになるのには理由がある。第4話「休日を一人ですごして悪いか!!」で、尾崎脚本はネタばらしをやっているのだ。
桑野と夏美は、偶然にもはとバスで隣り合わせになり(ひとりで予約すると、そういう可能性が高いという理屈は用意してあります)、彼らはなんと葛飾柴又に向かい、桑野は寅さん映画をすべて見ていると得意げに話すのだ。
あ、そうかと気づいた。桑野のモデルは車寅次郎じゃないか!
寅さんと桑野の共通点は、女性に愛されながらも結ばれないこと以上に、独身者として享楽的な生活を送っているように見えながら、実はかなりストイックであることだろう。そのやせ我慢がとんちんかんであるだけ、客は共感できるのだと思う。
夏美は、桑野の所業に毎回あきれながら、その本質が善なるものであることに気づき、あるセリフを桑野に“投げつける”。ここはいいシーンでした。恋愛はキャッチボールだったのね。もう現役じゃないから忘れちゃったけど。
にしても、このコメディに夏川結衣をキャスティングした関西テレビはすごいと思う。彼女がコメディエンヌとしてこれだけの才能を持っているとどうしてわかったのだろう。あ、めちゃめちゃ酒飲みだというから、飲んじゃったら面白い人なのかな。
わたしにとって夏川は「夜がまた来る」で石井隆の永遠のヒロイン、土屋名美をハードなファックシーンの連続でこなしたガッツのある女優であり、テレビ「点と線」で、詳しくは言えないけれど「すみましたぁ」という衝撃のセリフをラストでかます怖い人だったのだが……