事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

MFM 7冊目 「キネマ旬報」上旬号

2008-04-19 | 本と雑誌

6冊目フォーカス&フライデーはこちら。 

Kinejun (県教組酒田)支部長時代、文部官僚にして映画評論家でもある寺脇研を特集したときに「三十数年読み続けている雑誌」とふれたのがキネマ旬報。略してキネ旬。毎月5日と20日に発売。昔は月に3回出ていたので旬報の名があるようだ。

 わたしが初めてこの雑誌を買ったのは高校一年のとき。それまで「スクリーン」や、創刊したばかりの「ロードショー」などのファン雑誌の読者だったのだけれど、その内容にはもの足りなさを感じてもいたのだ。いや、なかには今考えても有益だったなあという連載もあった。双葉十三郎氏(もう90才を超しているはず)が今でも続けている「ぼくの採点表」は“名画だけが映画ではない”ことを教えてくれたし、字幕の神様・故高瀬鎮夫氏のセリフ解読はどんな英文法テキストよりもためになった。グラビアも(特にスクリーンは近代映画社らしく)エッチで結構でした(笑)。

 でも、わたしが知りたかったのは、ファン雑誌では片隅に追いやられている製作状況や興行成績の方だったのだ。思えばその頃から業界っぽいことが好きだったわけね。キネ旬はその意味でわたしには最高の雑誌だった。高校時代に通っていた書店の老主人に「あのぉ、ここでキネマ旬報っていう雑誌は買えますか?」おずおずとたずねると「もちろん。映画雑誌としては日本でいちばんですよ」諭すように教えてくれた。

田舎は都会よりも雑誌の発売日は一日遅れることが多い。これは今でもそうなのだが、当時はとにかく不確定で「今日は、キネ旬入りました?」何度もその書店を訪れては訊いていた。そのたびに老主人は申し訳なさそうに「まだなんですよ」とか細い声で答えた。

「春から東京に行くことになったんで、定期購読はこの号が最後ということでお願いします。」18才のわたしを、主人は静かに激励してくれた。その後まもなく、彼は病のために亡くなり、店は奥さんが切り盛りすることになった。今でもその店は、エロ本専門店に姿を変えて営業を続けている。

次回ももう一回「キネマ旬報」の特集を。下旬号ってことで。

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MFM 6冊目 「フォーカス&フライデー」

2008-04-19 | 本と雑誌

5冊目「話の特集」の特集はこちら。

Hitotoyo01 一本100万円以上する、全長65㎝、重さ7㎏もある600ミリのレンズを備え付け、シャッターチャンスを逃すまいと車の中でペットボトルに小便をし、ひたすら待ち続ける……全盛期には200万部という、マンガ雑誌をのぞけば史上最高の売り上げを誇った写真週刊誌フォーカス契約カメラマンの、これは日常。彼らが暴いた“現場”こそ、確かに時代そのものだった。

鑑定留置場内の片桐(逆噴射)機長、田中角栄法廷写真、日航機御巣鷹山墜落そして救出の瞬間、オウム真理教村井秀夫刺殺、砒素カレー林眞須美逮捕、神戸少年A顔写真……数々のヒットを飛ばすフォーカスに、違った切り口で講談社のフライデーは応戦する。読者投稿の採用である。

創刊当初は部数が伸びなかったフォーカスをいちやくメジャーにしたのは、皮肉なことに素人の持ち込み写真「高部知子のニャンニャン写真」だったのだが、フライデーはその路線を強力に推し進めたのだ。そして部数はフライデーがフォーカスを抜き去り、フォーカス休刊以降は、フライデーの独壇場となる。

写真週刊誌の功罪を考えるとき、マスコミというものの本質がこれほど露骨にあらわれたメディアも珍しいと思う。つまり、スクープこそが至上命題であり、そのためになら人権などというものを彼らは忖度したりはしない。社会悪を暴こうという崇高な目的は二義的なものとなり果て、スクープという、ひとつの手段に過ぎないものが自己目的化してしまっているのだ。

噂の真相」などのスキャンダル雑誌には寛容だったわたしは、しかし写真週刊誌を購入することなどなかった。このテの雑誌が“売れている”現状に、マスコミの退廃と、そして読者の退廃を嗅ぎつけていたからかも。あ、でも一号だけ買ったことがあったな。喫茶店で眺めていたフライデーに、昔つきあっていた女性にあまりにもそっくりなタレントのヌードが掲載されていたとき。ダメだー、オレがやっぱりいちばん読者として病んでいるー(T_T)

次回は「キネマ旬報

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MFM 5冊目 「話の特集」の特集

2008-04-19 | 本と雑誌

4冊目「週刊文春」はこちら。

Hanashi2sam 今回は正確に言うと“わたしのお気に入りの雑誌”シリーズとは言えない。わたしがどうしても好きになれなかった雑誌のお話。テキストは編集長矢崎泰久が書いた「『話の特集』と仲間たち」。

この雑誌には特に団塊の世代を中心にファンが多い。創刊は1965年12月。1995年に休刊するまで約三十年続いている。“サブカルチャー誌”としては驚くほど長命だったと言えるだろう。執筆陣は豪華絢爛。永六輔・植草甚一・小沢昭一・黒田征太郎・寺山修司・横尾忠則・長新太・篠山紀信・野坂昭如・小松左京・伊丹十三・吉行淳之介・五木寛之・筒井康隆、そして事実上アートディレクションをすべてとりしきった和田誠……

この雑誌によってメジャーになった人たちも多く、以降のサブカルの方向性に一定の影響を与えたことは間違いない。特にビジュアルは革新的で、当時のとんがった連中を次々にひっぱった和田誠はやはり慧眼の士だと思う。

でもわたしはどうしてもこの雑誌は好きになれなかった。すでに一種の権威になりおおせていた彼らの雑誌は“先輩たちが楽しそうにやっているクラブ”にしか見えなかったのだ。当時のわたしにとっては「ロッキングオン」や「シティロード」そして「ポパイ」の方がはるかに“エッジ”で“クール”(笑)に見えた。

それに、岡留安則の「『噂の真相』25年戦記」と併読したせいかもしれないが、矢崎の、なんというか俗物臭は当時から強く、雑誌に命をかけている岡留との差は歴然。やはり、団塊向けのクラブ雑誌の印象はぬぐえない。あの世代は、自分たちの世代のことしか頭に無いからなあ。

ん?好き放題言ったけれど、若い世代からは「ロッキングオン」?「シティロード」?ヘタレ新人類向けの懐メロ雑誌な、とか切り捨てられているんだろうか。ゆ、許さーん!

次回は「フォーカス&フライデー」を。

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MFM 4冊目 「週刊文春」

2008-04-19 | 本と雑誌

週刊新潮」篇はこちら。

Na04030020b  文春、といえば花田紀凱。名物編集長でならした彼を、テレビのコメンテイターとしてしか認識していない人も多いかも。とにかくイケイケの編集方針で、子飼いの記者たちは奴隷あつかい。タブーに果敢に挑戦し、そのうちの一つ、ユダヤ問題で足下をすくわれ、文春を去る結果となった。

 渡辺淳一の「失楽園」のモデルとしても知られる(花田自身がそう言っているんだから、そういうことにしといてあげましょう)彼は、その後凋落の一途をたどり、宿敵だったはずの朝日新聞社で創刊した女性誌(Uno!)は不発。角川に移籍するもまたまた失敗。「編集会議」の編集長もこの間辞めてしまった。これからどうするんだ花田(現在は「Will」で相変わらず朝日新聞批判やってます)。

 文春VS朝日の争いは、日本のマスコミにおける最も有名な天敵関係。しかしわたしはこれは「近親憎悪」に近いものだと考えている。その国を代表する新聞をクオリティペーパーと呼ぶが、良くも悪しくも日本のそれが朝日新聞であることに異論はないでしょう(部数一千万部を誇る読売は“クォンティティペーパー”ってことで)。男性週刊誌界におけるクォリティマガジンは文春だろうし、そのプライドと社風の“微妙な差”がお互いを罵り続けさせているんだと思う。だからこそ、花田の朝日への移籍は「あり」だったのだ。

 ただ、わたしはこの人の手腕にはちょっと懐疑的。それはすべて、週刊文春史上最高のコラムだった「萬流コピー塾」(糸井重里)を、糸井とそりが合わないとうち切った(違ったっけ?)ことによる。バブル前の爛熟する日本を代表する、最高のコラムだったのに。

次回は「話の特集」を。

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MFM 3冊目 「週刊新潮」

2008-04-19 | 本と雑誌

Shintyou01 MFMの2冊目「男性週刊誌」はこちら。

 男性週刊誌について、もう少しふれてみよう。この世界においてどうしても無視できない人間たちについて。まずは週刊新潮篇。
 男性誌のなかでも、きわだって読者の想定年齢が高いと思われる新潮の見出しはたとえばこうだ(2004年ネタなのでちょっと古くてごめん)。

●「1社3000万円出せ!」で民間企業を泣かせた「プロジェクトX展」
●永田町にバラまかれた「紅白歌合戦」入場券スキャンダル
●「スイカップ」を新聞広告から削る「朝日新聞」のお笑い言葉狩り
●国民栄誉賞なら「両親離婚」の危機という「谷亮子」
●報奨金5000万円に「カネ返せ!」の罵声が飛ぶ「野口みずき」所属会社
●塚田真希に「セクハラ発言」しちゃった「綜合警備保障」社長
●日本選手団「美人No.1」と言われる「意外な女性」
●サイン色紙「北島5000円」なのに「室伏15万円」!

……金・女・事件。そこまで本能に忠実に行くか。しかも他と比べても皮肉な度合いが突出していて、新聞や総合誌を後ろからけたぐりをかけて倒そうという嫌みなジジイぶり。正直だねえ。この路線を立ち上げ、底意地の悪さで他の追随を許さない金看板を作り上げたのが、実はたった一人の男だということをご存知だろうか。

 名を斎藤十一。すでに故人となっているが、太宰治、井伏鱒二、松本清張らを育て上げた敏腕編集者。新潮社の天皇として長年君臨し、増大する社員の食い扶持を稼ぐために「週刊新潮」を創刊。後の「FOCUS」もこの人の発想。このジジイの凄いところは、まず見出しを自分が考え、“それに合わせて”記事を書かせたあたりのセンスにある。だからプライバシーだの人権だのは二の次という伝統は今でも生きている。

いわば斎藤の個人誌だった新潮が、鈴木宗男問題などで単発のヒットは飛ばすものの、しかし総体としてふるわないのは、新潮社の経営が傾いている以上に彼の不在の故と言えるだろうか。高齢化社会こそ伸びるチャンスじゃないか。長生きしろよ、新潮。

……08年に新潮が飛ばしたヒットは、映画「靖国」問題だろうか。ほんっとによけいなことをしやがって(笑)

4冊目は週刊文春篇です。

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MFM 2冊目 「男性週刊誌」

2008-04-19 | 本と雑誌

Weeklyhoseki 1冊目「男性誌探訪」はこちら。

Mail01b  読んでました、「世界」!

……いたんだ。これは失礼。やっぱり現代にも総合雑誌を読み通す人は存在した。でもこうやって自分の読んでいた雑誌を正直に告白してくれる人ってめったにいませんでした。“愛読誌がその人間のすべてをあらわす”なーんてぶちあげた以上、こりゃ仕方ないかな

 ではMFM。最初は斎藤美奈子がジャンル別に語った男性誌を中心にとりあげていこう。まずは男性向け週刊誌。主要なところでは「週刊朝日」「Yomiuri Weekly」などの新聞社系。「週刊ポスト」(小学館)「週刊現代」(講談社)「週刊文春」(文藝春秋)などの出版社系がある。当初は新聞社系が先行し、後に出版社系が猛追。今はポストと現代、そして文春が発行部数トップを争い、新聞社系は目もあてられない状況になっている。これは一読すれば当然の結果だ。新聞社系の雑誌なんて、金融機関で時間をつぶすときでもないかぎり、もう誰も読まないんじゃないでしょうか(ファンの方失礼)。

 わたしは、出版社系の雑誌もよほどのネタが載らないかぎり読まないが、ニッポンのサラリーマンの本音が見えるという意味では最高のテキストだ。ポストがヘアヌードの掲載をやめるなど変化の基調は見えるけれど、蓄財とスキャンダルとヌード、この三大欲望が高度成長を支えたんだなあと理解できる。典型的だったのが今は休刊した週刊宝石の「処女当てクイズ」。こんな企画がなぜ問題にならなかったんでしょう(笑)。

 新幹線の座席やビジネスホテルが似合いそうなこれらの雑誌を、たとえば学校の教職員あたりがどれだけ読んでいるかはわからない。でもサラリーマンの一人として、居酒屋あたりで「読んだかあの現代の記事!」とか言って新入社員にからんだりしてみたかったなあ……ほらね、やっぱり雑誌は人間をあらわすでしょう?

3冊目は「週刊新潮」を。

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MFM 1冊目 「男性誌探訪」

2008-04-19 | 本と雑誌

Danseishitanboh 斎藤美奈子著 朝日新聞社刊 1,400円

 またぞろ血液型による性格診断がブームになっているようで苦々しい。あんなものをありがたがっているのは日本人だけだ。科学的に完全に否定されているし、たとえA型の性格だのO型(わたしです)の性格が存在したとしても、個体差の方がはるかに大きいわけだから、変な予断を与えて無用な軋轢を呼ぶだけなのに。

 その人の性格を知りたいのなら、血液型だの星座を調べるまでもない。こう訊けばいいのだ。

「あなた、雑誌はなに読んでます?」

 総合誌が一時の勢いを失い(「文藝春秋」や「世界」を“読み通す”人ってもういないと思う)、個人の好みが細分化され、小さく、そして深くなったマーケットに向けて雑誌は今も百花繚乱だ。だからその人の読んでいる雑誌を知れば、人となりの多くを概観することができるだろう。

「男性誌探訪」は、上野千鶴子や小倉千加子がめったにマスコミに登場しなくなって以降、フェミニズム方面でもっとも苛烈な論陣を張る斎藤美奈子が、世に言う男性誌の内情を探ったAERAの連載をまとめたもの。掲載誌の関係か、いつもの切れはないが。

斎藤は言う。
「かつて少女雑誌の『過激な性表現』が国会で問題になったことがあったけれども、じゃあ当時の少年雑誌はどうだったのよ、なぜそれが国会で問題にならなかったのさ、といまさらながらに思ったりする。特に男性誌の看板は出していなくても、作り手と読み手の間に『わたしは男、あなたも男』とする暗黙の了解が成立している雑誌は存在する。それらを広義の男性誌と仮定するなら、現在の文化の下での男性性について考える、なんらかの手がかりにはなるはずだ。」

……当たってる、と思う。そして、ことは男性誌に限らず、愛読誌を語ることは、きっとその人の人間性をも露わにする、という考えが空論ではないことがわかってもらえると思うのだ。さあ新企画「My Favorite Magazine」略してMFM、スタートだ。

次回は男性週刊誌篇

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潜水服は蝶の夢を見る

2008-04-19 | 洋画

Thedivingbellandthebutterfly  「えー、長いことお世話になりました。事務職員部長だったホリです。通算で3期やったことになるのかな?酒田の支部長だったのもプラスすると7、8年執行委員やったことになります。まあ酒田の人間がやるのは体力的にもきついんですけど、でも楽しみがないわけじゃなくて、クミアイから旅費をもらって、なんでオレはいま山形フォーラムにいるんだ?ってくらいあの映画館には通わせてもらいました。実はねー、今日も行ってきました(笑)。『潜水服は蝶の夢を見る』いやーいい映画でした。泣いた泣いた。みなさんもぜひ。

これからは一組合員として、交渉とか積極的に参加して協力したいと……なんでこんな柄にもなく殊勝なことを言うかというと、今月末に山形に新シネコンができると聞いているからですっ!よろしく。」

 この退任のあいさつは先日の歓送迎会のときのもの。マジで体調最悪だったので、「潜水服~」みたいなシリアスそうな作品は敬遠したかった。でも時間が合うのが他にない(T_T)。しょうがない、“芸術作品”を拝見させていただこうか……

 すばらしい映画だった。観てよかった。
一種の難病ものなんだけど、あふれるユーモアが悲愴感をぬぐいさり、同時に素直に泣かせてくれる。雑誌「ELLE」の編集長にして、その才能を誰からも認められ、自らもその才に疑いをもたない男。彼はしかし知覚と思考は正常であるにもかかわらず、身体を動かすことができない“閉じこめ症候群”に冒されてしまう。ただひとつ動かすことができるのは左のまぶただけだった……

何万回もの瞬きによって自伝を書き上げる描写がすばらしい。言語療法士、妻、筆記者という三人の美しい女性たちがアルファベットを読み上げる(指定の文字で彼は瞬きをする)……フランス語がこれだけ耳に心地いい言語だったかと驚嘆。

あふれる才能を瞬きだけで表現しなければならない男。そして息子の苦況を嘆く父親(マックス・フォン・シドーが至上の演技を見せる。ひげそりのシーンは必見)。いずれも、けっこういいかげんで女好きな、不完全でユーモアあふれる人間として描かれている。そして女たち!延々とアルファベットをつぶやき続ける彼女たちを、監督はこれも女好きな視線で描いており、好感が持てる(笑)。フランス映画はやはりオトナだ。最後の最後に病気になってしまうシーンをもってくるあたり、脚本もみごと。傑作。元妻役はなんとロマン・ポランスキーの奥さん。

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