事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

特定秘密。

2013-11-27 | 国際・政治

▼官僚は、議会が国政調査権で情報を得ようとするような<あらゆる企てに対して闘争する。充分に情報を与えられておらず、したがって無力な議会は、いうまでもなく官僚制にとっていっそう好都合である>(『権力と支配』講談社)
▼二十世紀初頭に書かれたウェーバーの官僚論が、眼前でまさに証明されていく思いだ。国政調査権を危うくする特定秘密保護法案を、与党は衆院で可決した
▼政党が自らの首を絞める愚を冒してまで、官の喜ぶ法を作る。吏党のなせる業だろう。
<中日新聞>

数の力におごった権力の暴走としかいいようがない。
民主主義や基本的人権に対する安倍政権の姿勢に、重大な疑問符がつく事態である。(略)ましてや、おとといの福島市での公聴会で意見を述べた7人全員から、反対の訴えを聞いたばかりではないか。
<朝日新聞>

あぜんとする強行劇だった。
衆院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案が採決された場に安倍晋三首相の姿はなかった。首相がいる場で強行する姿を国民に見せてはまずいと、退席後のタイミングを与党が選んだという。
与党すら胸を張れない衆院通過だったのではないか。採決前日、福島市で行った地方公聴会は、廃案や慎重審議を求める声ばかりだった。だが、福島第1原発事故の被災地の切実な声は届かなかった。
<毎日新聞>

日本にも他の先進国と同様の機密保全法制が必要だとの意思が、明確に示されたと言えよう。
<読売新聞>

国として安全保障の機密を守る法整備は欠かせない。その認識は維新も含め今後とも共有できるはずだ。知る権利や報道の自由が損なわれないかとの懸念を払拭するため、政府には参院審議でも丁寧な説明を求めたい。
<産経新聞>

……特定秘密保護法案の衆院通過についての各社の論調。もののみごとに分かれている。まことに、日本のマスコミは健康な状況にあるなあ、とはもちろん考えない。なぜ、保守とリベラルの差が、この法案への態度の違いにそのままつながるのかが不思議なのだ。

わたしは、およそ出来がいいとは言い難いこの法案に、どういう理屈をつけるとマスコミが賛成にまわれるのかが知りたくて、読売を中心に読んでみた。すると、やはり表現にかなり苦しんでいる様子が見える。

「特定秘密が大量になれば、政権交代や内閣改造などによって『行政機関の長』が代わっても、改めて秘密を指定したり、解除したりすることは、物理的にむずかしい。官僚が特定秘密を抱え込まない仕組みにすることが肝要だ。」

……ね?この法案の問題点は読売だってわかっているんですよ。公務員が秘密をもらさないようにするための法律をうたいながら、結局は公務員が秘密を大量に抱え込む方向に進むことは目に見えている。それこそが、官僚の狙いなのもわかっているのだ。

「法案を巡る最大の論点は、政府が恣意的に秘密指定を拡大し、都合の悪い情報を秘匿し続けるという懸念が拭えないことだった。」

……まったく、そのとおりでしょう。その懸念を払拭するために読売が使った論法は

「安倍首相が『国民の安全を守るため情報収集が極めて重要だ』と述べたのはもっともだ。」

として日本版NSC創設を応援するなど、政権の国家主義的主張を後押しすることだった。つまり、東アジア情勢に対応するためには、もっとはっきり言うと戦時に備えるためには今のままではだめでしょう?という主張。マスコミの国家観の違いこそが、この法案への姿勢の違いだったのだろう。

しかしわたしはこれは筋が違うと思う。官僚が情報を抱え込むことによって(抱え込むに決まってるじゃないですか)、国会だけではなく、官僚自体も劣化していくという主張の方に分はありそうに見える。

省庁間の縦割り意識はいっそう強くなり、都合の悪い部分は秘密にしておけるのだから緊張感も失せる。そして、情報をコントロールし得ると考える官僚の暴走が始まるのだ。

わたしは何よりも、“何を秘密とするか”にフリーハンドの余地があるということが、どれだけ巨大な権力となりうるかの想像力がない人間に、国会にいてほしくない。きのうの国会の様子を、きちんとおぼえておこう。まさかその瞬間に首相が議場にいないことまで、特定秘密にしたりはしないだろうな。

コメント (2)
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