事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「嘆きのピエタ」??? (2012 韓国)

2013-11-05 | 映画

Img01 上映スケジュール表を見て、こりゃあ見逃せない作品なんじゃないかというのは、なんとなく匂いでわかる。もちろんそれ以前にネットや雑誌などで評判が頭のどこかに刷り込まれているだけかもしれないけれど、なんか、ピンとくる。映画ファンあるある。一種の経験則だろう。

「嘆きのピエタ」にもピンときた。鶴岡まちなかキネマのスケジュール表をチェックし、必見だよなと思っていた……のに、なんだかんだで上映最終日にようやくすべりこむ。だって日本シリーズは待ってくれないもの

場内にはけっこうお客さんが入っていて、この人たちもピンと来たのかしら。おお、港座上映会にいつも来てくれるお兄ちゃんもいるぞ。さすが鼻が利くなあ。まあ、ちょっと調べたら去年のヴェネチア映画祭金獅子賞受賞作だったので、知らないわたしの方がどうかしていたのだが。

……三十年間、天涯孤独で親の愛を知らない借金取り立て屋。彼のやり方は残忍で、滞納者を“死ぬとめんどくさいから労災に見せかけて障がい者にする”というもの。韓国の裏町で、工具や機械を使った凄惨な“取り立て”が行われる。そこへあらわれたひとりの女。彼女は取り立て屋につきまとい、自分が母だと告げる……

監督のキム・ギドクはサスペンスの盛り上げがうまい。臓物や羽をむしられた鶏、首を切られるウナギといった小道具で画面を血塗らせておき、最後のどんでん返しまで観客の緊張を途切れさせない。伏線もきちんと用意されているので、むしろお行儀がいい映画だとすら。

しかし俳優たちの演技がそれを裏切っていく。石橋蓮司を若くしたような取り立て屋(イ・ジョンジン)のクールさもいいが、“母”を演じたチョ・ミンスが圧倒的。暴走する母性と、一瞬だけ“女”になる表情の凄み。

みずからの過去に最低の形で向き合うことになる、一種の「舞踏会の手帖」パターン。それなのにラストで救われたような気がするあたりがキム・ギドクの才能か。傑作。わたしの勘もまだ捨てたもんじゃない。

コメント (1)
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