Vol.34「仮面の男」はこちら。
今回はコロンボ休暇中のお話。奥さんといっしょにメキシコに行き、例によってプジョーをぼんやり運転していたコロンボが事故を起こしたことから地元警察に協力することになる。休暇なのにいつものレインコートを着ているのがすでに笑える。
どうも異国っぽくないなあと感じられるのは、主要な登場人物たちが英語で会話するからだし、ロサンゼルス自体がもとはメキシコ領で、最初からスパニッシュな雰囲気があるからかも。
でもなにしろ出てくるキャラクター名がルイスとかミゲルとかマリアとか……そして犯人の名はモントーヤですよ!カートのやんちゃ小僧の名前がこんなところにも(F1ドライバーのモントーヤはコロンビア人)。
そのモントーヤは国民的英雄である元闘牛士。闘牛について、アメリカ人であるコロンボが懐疑的なところを見せると……
「リング上で男ふたりが意識を失うまで殴り合うのはどうなんです?」
なるほど。誇り高き闘牛士の理論武装。
この回は、上のやりとりに見られるように、闘牛という一種の蛮習がどれだけスペイン系にとってだいじなものかがキー。原題A Matter of Honor(誇りの問題)はそれをさしている。
モントーヤ(リカルド・モンタルバン)は長年の盟友である相棒を麻酔銃で撃ち、ある方法で殺害する。凶器はなんと牛!闘牛において牛は赤い色に反応するのではなく、“動き”にいらつくだけだという事実がコロンボを解決に導く。
「(解剖で)検出されるほどの薬だったらかえってめんくらってましたよ」
というセリフはミステリとしてもなかなか。闘牛士のケープには、本来あるべきものがなかったのである。
謎なのは動機であり、特殊な動機だからこそ犯人は友人を殺し、権限のない外国でもコロンボが事件を解決できたわけだ。監督は職人テッド・ポスト。
「歌声の消えた海」事件(アカプルコへの船が舞台)が評判になったせいで、コロンボがメキシコで有名人だという設定が泣かせます。吹替は庄司永建(新庄出身)、新克利、雨森雅司(バカボンパパ!)。
Vol.36「魔術師の幻想」につづく。