事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「殺し屋 最後の仕事」 ローレンス・ブロック著 二見文庫

2011-10-26 | ミステリ

Lawrence_block_hit_and_run

殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) 殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
価格:¥ 920(税込)
発売日:2011-09-21

「あ、ついに出たのか」

朝刊の広告で確認。その日のうちに書店へ走る。ローレンス・ブロックの殺し屋シリーズ最新刊「殺し屋 最後の仕事」Hit and Run

ごひいきブロックは次々に自分のキャラの幕引きを考えているらしく、前作「殺しのパレードHit Paradeでは、次の作品が殺し屋ケラーの最終作になるんだろうなあ、という気配が。くわえて邦題が「最後の仕事」とくれば……か、哀しい。

解説や推薦文を伊坂幸太郎が書いていて、設定が「ゴールデンスランバー」に似ていることを喜んでいる。尊敬する作家が同じ土俵でどんな技を見せてくれるのか、というわけだ。

どこが共通しているかというと、どちらも主人公が罠にかけられ、暗殺犯に仕立て上げられてしまう次第。もっとも「ゴールデンスランバー」の主役は人のいい宅配便のドライバーであり、ケラーは本物の殺し屋であるという気の遠くなるような違いはあるのだが。

暗殺の報酬を切手収集につぎこんでいるケラーの、危地にありながら冷静に対処するプロらしさと、逆に危険でありながら故郷ニューヨークに必死で帰ろうとする愚かさの共存。あいかわらず素晴らしいキャラだ。

罠にかけたのは前作にも登場した「アルと呼んでくれ」Call Me Alなる男(ポール・サイモンですか?)。復讐戦となるゴルフ場での暗殺シーンの馬鹿馬鹿しさはシリーズでも屈指。

シリーズ最大の魅力は、元締めであるドットとケラーの掛け合い漫才。というか、ブロックがこのシリーズで獲得できたのは“絶対に寝ることのない男女の、機知に富んだ会話をいくら書いてもいい”状況。まあ、殺人者とその仲介業の女という、とてつもない形ではあるけれど。二人が寝ることはないが、裏切ることもないという信頼の物語。

にしても、これでお終いというのはいかにも寂しい。クリスティのように「カーテン」でポワロを、「スリーピング・マーダー」でミス・マープルを退場させたような行儀の良さはブロックには似合わない。あくまで静かに、アメリカのどこかでケラーは殺人をつづけていると思わせていてほしい。

ん?なんだよブロックはさっそく電子書籍のみとはいえケラーの新作を書いてるんじゃないかっ!うれしー。殺される方はたまったもんじゃないですけどね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする