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謎解きはディナーのあとで 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2010-09-02 |
もんのすごいベストセラー。刊行して一年、いまだにランキングに入っている。版元(小学館)も著者自身(東川篤哉)もびっくりだろう。どちらもミステリ業界ではあまり注目されないでいたので、逆転ホームランという感じ。
図書館でお目にかかるにはだいぶ時間がかかりそう。でもこれだけ売れているのだから、なんとかなるんじゃないかと思っていたら(買えよオレもよ)、事務室の相方が買ってました。
「すごく面白かったです!」
ってことですぐに貸してもらいました。やはり学校事務職員は複数配置でなくっちゃ。
連作になっていて、主な登場人物は三人。
・お嬢様刑事の宝生麗子(お嬢様の名前と言えば麗子なのねやっぱり)。
・宝生家の執事の影山。
・麗子の上司で、事件を引っかき回す風祭。やっぱり富豪。
実はワトソン役の風祭のキャラ設定がおみごとで、常に真相を見誤って読者に事件の背景を解説してくれる。目撃者のガキとのやり取りには笑った。
守秘義務もへったくれもなく執事に事件のアウトラインを(いやいやだけど)話してしまう麗子に、
「この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか?」
とどSに解決してみせる影山の存在は、アシモフ「黒後家蜘蛛の会」シリーズの給仕ヘンリーを彷彿とさせる。まあ、ヘンリーの場合はゲストたちのプライドを傷つけたりはしないんだけど。
まもなくフジテレビがドラマ化するそう。
麗子→北川景子
風祭→椎名桔平はともかく、
影山→櫻井翔
には事務室のふたりとも「違うだろーっ!」と合意。オダギリジョーか向井理の役回りじゃないっすか。
あとづけの理屈のようだけれど、こんなミステリをみんなが待っている時代なんだと思う(装幀のすばらしさにも注目)。殺伐としていない、あとに何も残らない、消費財としてのミステリ。
「このミステリーがすごい!」の評者たちには無視され(20位以下のランクでした)、影山の推理にはわたしも首をかしげる部分もある。でも、たとえば赤川次郎を購読していた人たちを、近年のミステリ業界は小難しくなりすぎて逃してきたのでは?