事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

史劇を愉しむ~第12章「栄光への脱出」Exodus

2010-06-29 | 国際・政治

Exodus01 第11章~「グリーン・ゾーン」はこちら

 1947年、キプロス島にはイギリス軍によってユダヤ人たちが収容されていた。彼らは祖国イスラエルへの帰還を目指すものの、イギリスがアラブ諸国を刺激させないため、そのような措置に至ったのだった。

 別の件で現地を訪れていたアメリカ人女性キティ(エヴァ・マリー・セイント)は、そんなユダヤ人の現状に心を痛め、彼らの援助を買って出ることに。一方、アリ(ポール・ニューマン)をリーダーとするユダヤ人地下組織が島に潜入、収容されている同胞たちを貨物船エクソダス号で脱出させる計画を実行していた。

 そして、世論を味方につけ脱出に成功したユダヤ人たちは、晴れてイスラエルの地に到着。パレスチナに入植し、束の間、平穏な日々を過ごすのだが…。

 監督オットー・プレミンジャー、脚本ダルトン・トランボ(変名で「ローマの休日」も書いてます)、主演ポール・ニューマンというユダヤ人トリオ(ポールは両親のどちらかが確かユダヤ人)で描くイスラエル建国のお話。吹奏楽をやっていた人ならアーネスト・ゴールドのテーマ曲を聴いたことがあるはず。原題は「エクソダス」。まもなく特集する「十戒」で描かれた出エジプトの現代版というわけだ。3時間半の大長編。

 イスラエルの建国と、その後のアラブとの軋轢を考えると、「アラビアのロレンス」でも描かれたように、当時のイギリスの政策がいかに優柔不断で二枚舌、三枚舌だったか。パレスチナの民もいい迷惑だったはず。

 逆に、流浪の果てに約束の地を手に入れようとするユダヤ人の気持ちもわかる。この映画でも、アラブとの平和的共存を求め、アラブの側もみんながユダヤ人と敵対しようとしていたわけではないことが描かれてはいる。初期のイスラエルが共産主義的であることにも驚かされた(キブツの実態について、わたしはほとんど知らなかったのだ)。なんでも、勉強です。

しかし、ハンストなどで世界の同情を集めたエクソダス号の物語は確かに盛りあがるが、現在のイスラエルが、ガザへの補給船を襲撃している現状を考えると、今度はパレスチナの側からの「栄光への脱出」が描かれなければならないのではないかとすら……

第13章「風とライオン」につづく

コメント
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