事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「終の住処(ついのすみか)」 磯﨑憲一郎著 新潮社

2009-08-24 | 本と雑誌

96b391e8 妻はそれきり11年、口を利かなかった――。
30を過ぎて結婚した男女の遠く隔たったままの歳月。ガルシア=マルケスを思わせる感覚で、日常の細部に宿る不可思議をあくまでリアルに描きだす。過ぎ去った時間の侵しがたい磐石さ。その恵み。人生とは、流れてゆく時間そのものなのだ――。小説にしかできない方法でこの世界をあるがままに肯定する、日本発の世界文学! 第141回芥川賞受賞作。

はてしなく女性に敗れ続ける男の物語。こう結論づけてはみもふたもないか。でも主人公の負けっぷりがそれはそれは見事なので、気持ちよく読みおえることができる。

三井物産(フラットに“ぶっさん”と言うだけで業界では通じる)の次長という勝ち組サラリーマンの頭の中の家庭像や女性像が、まさかこれほどまでにざらついたものだとは……と驚いてみせるのはマスコミぐらいだろう。みんな(少なくとも中年の男たちは)内心では「あるよなーこの感じ」と思っているのでは。

むしろわたしは、

・熱情とともに結婚し

・家族のあたたかい会話を楽しみ

・老後を配偶者と過ごすことに穏やかな楽しみを見つける

……輩の胸ぐらをつかんでこう問いつめたい。
「本気か。本気なのか?」と。

わたしが恐怖するのは、妻がそんな輩に同じセリフを吐いている場面だろうけれど。

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「未来講師めぐる」 (2008 テレビ朝日)

2009-08-24 | テレビ番組

Meguru お腹がいっぱいになると二十年後の未来が見えてしまう学習塾の講師……トンデモな設定だけれど、クドカンがやりたかったのは学園ドラマではないだろうか。

だから生徒や同僚の未来が予言によってほんの少し(どころではない場合もあり)変わっていく前半ははずんでいるのに、このままではめぐるは逮捕されてしまう“現実”をどう変えるかに主眼がうつった後半はちょっときついかも。まあ、その分は邪悪な叔父に扮した橋本じゅんの圧倒的な存在感がちゃんとうめてくれるわけだけど。

教室にもっていくツールがなぜか食べ物になっている不条理ギャグや、始終「おじいちゃーん!」(彼だけが同じ能力を持っている……はずだった)と叫んでいる深田恭子がおかしい。「亡国のイージス」でシリアスそのものの演技をみせた勝地涼が、意外なコメディアンぶりを見せてびっくり(特典映像にそれは顕著)。

おじいちゃん役の地井武男が、おなじみ「ちい散歩」をかますと、例外なくみんなから「徘徊」と言われてしまうネタには笑った。いかにもホリプロの先輩が後輩(フカキョン)の面倒みてます、って感じの榊原郁恵もいい。

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