「ボクたちの交換日記」を観て来ました。
先に見た妹からは「やさしい映画だったよ」との感想が届き、今日見てああなるほどと納得しました。私はそれに現実の厳しさをプラスしたい。
この時期に観られてよかったなあ。
春は別れもあるけれど始まりもある。
桜の木の下で最後にやった二人のコントはまさにそう。房総スイマーズの最後であり、二人の新たな旅立ち。
ネタばれになってしまうけど、このシーンはコントを最後まで映さないんだよね。個人的解釈ですが、たぶんここで二人がいくら最高のコントをやろうと喝采をあびようとコンビの解散は覆すことはないから監督はあえてそうしたんだと思う。こういうところが好きだ。
正直、冒頭から中盤までのクルクル変わるシーンに目が付いていけなくてコントとか笑ったシーンもあったけど、最後まで見ていられるか心配になった。棒読み調の日記の文の繰り返しが辛かった。
ところが二人が【笑軍天下一決定戦】に参加を決めるあたりから物語にグングン引き込まれて行った。途中体がグッときたんだよね。あ、これやばいかも・・って思ったら次の瞬間涙が出てた。
それからはもう泣きっぱなし、ツィッターの感想で「泣いた」「号泣」の感想が多くていくらなんでもそんなに泣くほどか?って疑ってすいません。泣いた泣いた、観客の中で一番じゃないかってくらいダーダー涙流してた。
二人の周りは優しい。
恋人、同僚、仕事仲間、先輩に彼らは凄く恵まれている。
なのに彼らが目指す夢への道のりは、とてつもなく厳しくて険しい。そういう場面をこの映画は鋭く描いていない、目をそむけるような酷さもないしヘンにアクの強いテレビマンもいない。
淡々と時は進んでいきあっさりと夢の途中で落とされる。それがもう辛くてやりきれない。駆け出しの若手芸人が大泣きしたという気持ちも分かるよ。特に甲本を見てると辛いなんてもんじゃない。
自分にはお笑いの才能がないっていうのを相方から学ぶんだもんね(この言い方はヘンか)
準決勝で勝ててもあそこで台詞を忘れなくても甲本はその事実に気付いて去っていくんだろうなって考えてしまった。
印象的なのが引退した後勤めた居酒屋の飲み会で同僚と揉めるシーン
「面白くないから辞めたんでしょ」というセリフ
ここで甲本はブチ切れてたけど、認めたくない事実を付きつけられたからだよね。
自分でも薄々気付いていた事実
【才能がない】ということ、相方には【ある】ということ
誰もそれを言わなかった皆優しかったから、だけどその優しさが返って辛かった。
自分を傷つけないようにあえて言わなかったとしたらそれは本当に優しさなのか?
河野さんだけが言った「このままじゃ君も辛いだろ」でもそれは最後通告ではなかった。あの人は全部見抜いていてそれでも甲本に決定的な言葉はなかった、この映画であの人の存在がが一番優しくて惨酷だったかも知れない。田中の才能を見出した人であり甲本を見限った人だから。
居酒屋の先輩には罪はない。一般人に取っての認識なんて「芸人辞めた」=「売れなかったから」=「面白くなかったから」程度だもの。
ウッチャン自身は勝者なのに敗者に対し上からでもなく、感情移入もなく客観的に見て描いている。それは夢破れた人や迷っている人、挫折しそうな人からは絶対に出来ない目線。これがこの映画の主軸たる「お笑い芸人」の悲哀をストレートに付き付ける。
優しくて惨酷
だからこの映画は泣けたんだと思う。
斬新さはないし、主人公たちの恋人の献心さとか(特に久美は自己犠牲っぽい)ベタではあるけど業界のリアルな厳しさが描かれている良作だ。
時間があればもう一度見たいな。三軒茶屋の街並みとかホームを歩く人達がすごく日常っぽくてほっこりした。画面から伝わってくるんだよね、春だなって感じが。
また役者についてやら劇中のコントについても語りたいな。コントは長年のウンナンファンならツボに嵌る。(まんまとはまりました)