喜多流は『卒都婆小町』で『卒塔婆小町』ではない。
「塔」ではなく「都」で、よく間違えられる。
さてその「卒塔婆」
どんなモノを想像されるだろうか?
お墓の周りに立て置かれているスキーの板のような卒塔婆を思い浮かべられるかもしれないが、あれではない。
能『卒都婆小町』での卒塔婆は人の身長を超える大きな木材の仏塔だ。
月岡芳年が描いた「卒都婆の月」(東京都立図書館提供)をご覧いただくとおわかり . . . 本文を読む
30年2月23日の東京新聞朝刊に「第101回 粟谷能の会」の記事が記載されました。
今回は父粟谷菊生の十三回忌追善と銘打っての公演です。
十三回忌ですから、丸十二年の月日が経ちました。
あっという間!
早いなあ〜
と、つくづく思います。
40代までに受けたアドバイスや、
先人たちの巧みな技やエピソードなど、そして技芸のコツなど、
当時はわからなかったことが、今はジンワリと身に染みて、
そう . . . 本文を読む
人は付き合ってみないと、
その人の事はわからない。
偉い方だなあ、
男気のある人だなあ、
あんな風になりたいなあ!
可愛いなあ、
美人だなあ、
僕の好みだ!
と思って近づき相手を知ると
ドキッと驚かされる事がある。
老 若 男 女 問わず。
近づいた為に、見えなくなるものもあるが、
見たくないものまでも、見えてくるのも事実。
まさに恋愛、結婚はそうだろう、
話が逸れた。
能『 . . . 本文を読む
先日「卒都婆問答」をお芝居風に紹介したが、小町婆さんは真言密教を学んだ高野山の僧侶達に
「差別観を取り去ればね、卒都婆も人間も共に仏の性質を備えている点では変わりないんだよ。 悪も善、煩悩も菩提、皆同じだよ」
と禅宗の教義を持ち出し論破し、自ら悟りの境地にいるかのように、そして
遂には、お調子に乗って戯れの歌を詠んでしまう。
♪ 極楽の うち ならばこそ悪しからめ
そとは 何かは苦しかるべ . . . 本文を読む
能は死者を扱う「夢幻能」と、生きている人間を取り上げる「現在能」に分けられる。
能『卒都婆小町』は「現在能」のジャンルで、お芝居に近い作風となっていて「夢幻能」に比べると幾分物語は、わかりやすいのではないだろうか?
それでも詞章は室町時代の古文であるから、現代の我々が聴いてすぐにその言葉の意味を理解するのは難しい。
『卒都婆小町』の見どころの一つに「卒都婆問答」がある。
老女の小町が高 . . . 本文を読む
『卒都婆小町』を勤めるにあたり、いろいろと勉強出来て面白い。
♪ 「身は浮き草を誘う水、
無きこそ悲しかりけれ」♪
もう誘ってくれる人もいないから、寂しいわ
と嘆く百歳の小町は物乞いをするまで落ちぶれている。
「でも私、昔はね。髪は綺麗で、しかも美声で身分も高くて」
と自慢するが、ドキっとするような言葉を吐いてしまう。
♪「今は民間、賤の女にさえ穢なまれ」♪
「なのに今は、身分の低い女 . . . 本文を読む
粟谷能の会の番組を整理していたら、平成24年10月の「第92回粟谷能の会」の番組が数部出て来た。番組には、父の写真がたくさん載っている。
粟谷菊生七回忌追善と銘打った公演だったが、今年は十三回忌追善。
亡くなって、もう12年も経ってしまった。
「月日の流れが早すぎませんか? 」
と自身に言葉を投げかけてしまう。
父は68歳で『卒都婆小町』を披いた。私は未熟ながらも62歳で披かせていただくが . . . 本文を読む
能『卒都婆小町』は囃子方が後座、地謡は地謡座と所定の位置に座ると、笛が日吉(ひしぎ)を吹き、出囃子の次第となり高野山から都に向かう二人の僧(ワキとワキ連)が登場し、次第、道行と謡い、阿倍野の松原に着くと脇座に座る。
すると、後見が黒色の葛桶(かずらおけ)を大小前(中央後方)に置く。
この葛桶を昔は立派な卒塔婆だったが、今は朽ち果てて倒れている卒塔婆、と想像してほしい。
登場する出囃子は習之 . . . 本文を読む
私は少々せっかちで、あまり気が長い方ではない。
3月4日 粟谷能の会の『卒都婆小町』の演能時間は、たぶん1時間50分位と長いが村瀬和子氏の書かれたあらすじが、とても短く上手くまとまっていたので、ここでご紹介しよう。
高野山の僧が、卒塔婆に腰を下ろす乞食の老婆を咎めると、老婆は
「仏も衆生(人間)も隔てなし!」
と僧を論破し揶揄します。
「小野小町の成れの果て」
と名乗る老女に深草少将の霊が憑き . . . 本文を読む
寒く小雨が降り、また夜分に降雪の心配もされましたが「粟谷能の会 能楽鑑賞講座」は2月1日(木)無事終了いたしました。
お足元が悪い中、お越し頂きました皆様には厚くお礼申し上げます。
今回は能夫がどのような経緯で『山姫』を復曲しようと思ったのか、どのような曲なのかを話し、私は『卒都婆小町』の老女小町をどのように演じようと思っているのか、などを女優の金子あいさんに進行役をお願いして、いつもの通り . . . 本文を読む