能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
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能『小塩』その6

2021-05-22 09:24:30 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
昨日『小塩』の申合せ(リハーサル)があり、その後に装束を用意しました、準備万端です。
『小塩』の主人公、在原業平は沢山の歌を詠んでいます。
15歳の時、奈良の春日野に鷹狩に行った時、気になる姉妹が目に入ると、すかさず和歌(ラブレター)を送ります。
 
♪「春日野の若紫の摺衣
忍ぶの乱れ、限り知られず」♪
(訳 春日野には紫草のみならず
あなたの匂い立つ若さが充ち満ちて私の心も、お二人の美しさ艶やかさに染まってしまい、この布の忍摺模様の様に、私の心は限りなく乱れ、野の草々ならば、やがて静まるものの、この布の模様は消えてはくれないのです)
 
なんて、オマセさんでしょう!
なんたる、おんなタラシ!
 
まあ、15歳でこんな歌を詠めるのが、「陰陽の神」と言われる所以なんでしょうね。
さて、この歌、能『小塩』では、後場のクセのはじめに出て来て、その後は
♪「陸奥の忍ぶもじずり誰故に 乱れ初めにし我ならなくに」♪
 
♪「唐衣きつつ馴れにし妻しあれば、遥々来ぬる 旅をしぞ思ふ」♪
 
♪「武蔵野は今日はな焼きそ 若草の妻も籠れり我もまた」♪
 
と、作者の金春禅竹は、まるでパッチワークのように和歌をペタペタ貼りつけ並べて戯曲しています。
こんなに貼っていいのですか?
やり過ぎでは?
と、ご覧になられた方々のご感想を今から楽しみにしております。
 
つづく

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