写真は、現在中野の稽古場「粟谷舞台」に掛かる喜多古能(湖遊)の掛け軸の書です。
「蓬莱山もよそならず、きみの恵みは有り難や」
と喜多流では『月宮殿』他流では『鶴亀』と呼ばれる能の初同(地謡の一番最初の部分)の一部が書かれています。
最後に文政十年 喜多湖遊
丁 亥 季 夏 八十六 歳 書 とあります。
これは、文政十年 喜多湖遊(古能=ヒサヨシの俳号)
丁は十干の一つです。
十干とは五行(木・火・土・金・水)にそれぞれ二つの要素を当てたものです。
木は 甲(こう)乙(おつ)
火は 丙(へい)丁(てい)
土は 戊(ぼ) 己(き)
金は 庚(こう)辛(しん)
水は 壬(じん)癸(き)
亥は干支です。
季は四季(春夏秋冬)をそれぞれ孟・仲・季の三つに分け、月を表します。
春の孟・仲・季を1月・2月・3月
夏の孟・仲・季を4月・5月・6月
秋の孟・仲・季を7月・8月・9月
冬の孟・仲・季を10月・11月・12月
という事で、季夏は6月を意味します。
「文政十年 丁の亥 六月、八十六歳の時、書きました!」
ということになります。
古能は喜多家九代宗家、通称健忘斎と言われた方で
「悪魔払」「寿福鈔」「面目利書」「仮面譜」など優れた著作を残された喜多流中興の祖です。
因みにその二年後、八十八歳で亡くなっています。
この本物がご覧になりたい方は、粟谷家で謡または仕舞を習われたらご覧になれます。
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粟谷明生