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能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
能の世界も個人の生活もご紹介しています!

いろいろな扇の形を紹介 

2013-05-29 08:58:12 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
5月も半ばを過ぎるとむし暑い日がある。そんな時、手軽に涼をとれるのが扇だ。
所謂、扇子(せんす)というもの。私の鞄には四季を通し、京都十松屋の末広「扇子」が一本入っている。これは涼をとれるためと、急に謡うことになった時のための二重備えだ。写真が愛用の一本


扇には「中啓(ちゅうけい」「鎮め扇(しずめおうぎ)」「扇子」の三種類ある。「扇子」はパタパタと扇いで風を送り涼をとるもので、これは能舞台では使用しない。

骨が見える上から撮影、左から中啓、鎮め扇、扇子

扇を寝かせて撮影

能役者が能の演能中に使用するものを「中啓(ちゅうけい)」といい、紙の形はアコーデオンように蛇腹になっている。親骨の上部が外側にややそっているため、たたんでも半ば開く(中啓はこの意)つくり。よく時代劇などでお公家さんが持っているタイプのものだ。


地謡や後見、囃子方など能の演能を手助けする者は左の腰に「鎮め扇(しずめおうぎ)」というものをさす。これは扇子とさほど変わらないが、先端が締まるように折られている。
子方の頃、出番前に「中啓」を持たされ、広げてはパタパタと扇いだりして遊んでいると、「中啓で扇いではいけない!」と先輩に叱られたものだ。最近、従兄弟の息子の僚太が中啓で遊んでいたので同じように注意したが、歴史は繰り返している。「鎮め扇でも同様」と言われる先人もいらしたが、真夏の稽古の後「いや~暑い、暑い」と鎮め扇でパタパタしている先輩を見かけることがある。まあそれはそれで、ご高齢ならば仕方が無いと見ぬふりをしている。

扇には「要(かなめ)」がある。要は扇の骨の端に穴をあけ、親骨と中側の仲骨とをとじ合わせるところで、ここが壊れると扇としての用をなさなくなる。最も重要な部分であるので「肝心要」の語源となっている。

扇の正しい持ち方はこの要が関係してくる。基本扇は右手で持つようになっていて、閉じていても、開いていても、右手の小指が要を押さえるのが正しい。
幼児は手が小さいのと握力がまだないので、小指で要を押さえられないため正しい扇の持ち方が出来ない。仕方が無いが青少年期になっても正しい持ち方が出来ないでいるのは、能楽師失格だ。

さて、私、能楽初心者の方に正しい扇の持ち方を指導しているが、要をうまく押さえられる人は少ない。
「小指をうまく要に当てて下さい! 小指で押さえるのがコツです! ですから落とし前つけたやくざの方にはこれは無理です。皆様は小指お持ちでしょうから、うまく使って下さい!」
と、こんなお話をさせていただきながら、能楽体験教室を行っている。
あ! そろそろ25年度体験教室の企画を練らねば・・・。

写真 粟谷明生
文責 粟谷明生


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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小指か・・・ (どうきゅうせい)
2013-05-29 09:21:35
これは発見。
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お返事 (粟谷明生)
2013-05-29 16:50:37
コメント有難うございます。
発見出来た? よかった。(笑)
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