本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

薬屋の夫婦

2021-02-20 08:54:22 | Weblog
 地方の大きな薬屋の跡取り娘さんが薬科大学を受験するため上京して予備校に通っていた。そのアパートにたまたま私の高校時代の友人が住んでいた。

 友人は大学3年生、その娘さんは一浪の19歳かな。詳しいいきさつは知らないが、「部屋に来て、寝ていた俺にバタッと倒れ込んだ」と友人は言った。

 その友人から私に頼みにきた。娘さんの志望校では受験の際「この大学を志望する理由」の作文を書くとか。それで、「お前、なんかうまい文章を作ってくれ」と言う。
 私は薬科大学なんぞに入る気があるわけないがとにかく作文を渡した。結果は受験失敗だったが、作文のせいではあるまい。

 何年後だったか、二人の結婚式によばれた。友人は薬屋に婿入りだ。
 その時、薬屋の同業者の挨拶が記憶に残った。

 薬には主薬、佐薬、賦形薬がある。主薬は効能第一のあるじである。佐薬は副作用を押さえて主薬を支えるものである。形薬は錠剤など薬を飲みやすい形にするものである。
 そんな説明だった。主薬は働き手の夫、佐薬はその夫が支障ないように支える妻、賦形薬は夫婦の仲立ちをする子供というわけだ。
 薬屋には最適な祝辞だ。

 長ったらしくなったが、昨日の薬の続きのつもりである。
 薬屋の二人は今も仲の良い夫婦でいる。プラセボ(偽薬)ではない。